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終末世界の開拓記  作者: なづきち
章間一

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34/515

順調に増えているようです?・上

 グロッソ村(レグルスたちの村の名前ね)の住人を呼び戻すべく、レグルスとリーゼに安心安全旅セット――住民まとめて連れてこれるよう大量の寝袋、聖水、食料、LPポーション、毒消しを始めとする状態異常治療薬を何種類か――を持たせて送り出した。

 他の村に助けを求めるという話だったけれども、片方はあのクアラ村、もう片方は何とわたしの拠点から北西の方角に大体一日くらいの距離にあったらしい。レグルスとリーゼはちょっと逸れてわたしの拠点に辿り着いたということかな。


 後になってその村に訪れてみたけれど、人間ヒューマン獣人ビーストが半々くらいで構成されている村で……割と平和だった。いや良いことなんだけども。

 あ、でも、助けを求めに来たグロッソ村の住人たちの言葉に右往左往して、レグルスたちが迎えに行った時には助けに行く準備が全然整ってなかったらしいので、危機感が薄れすぎるのもそれはそれで問題かもしれない。……うーん、どうしたものかな。

 この村に異変がなかったのは、大河からかなり離れていると言うのがポイントだったみたい。ほとんどのモンスターは日の光に弱くて、日の出てる間に移動なんぞしようものなら衰弱して地に還るからね。二日間生存してグロッソ村を攻めて来るような状況は稀だ。

 ……モンスターの発生と消滅もゲーム時代と同じなのかなぁ。そのうち検証しておかないと痛い目を見そうだ。

 ともあれ、そこまで困ってなさそうだったので、創造神像を少し大きく作り直して、いつもの自動聖水以下略を設置して、壊れている所を直して、何かあったらウチかレグルスの所に行ってくださいと伝言して、帰還石を作成して帰ってきた。



 いつものモノ作りやら何やらで日を重ねて、そろそろ様子を見に行くかな、と久々にグロッソ村を訪れたら。


「みこさまー?」

「おくすり作ってくれたヒト? いたいのなおったよ!」

「おうちありがとう!」

「ツノのヒト、とってもすごいんだってねー!」


 ……なんということでしょう。

 そこは……パラダイスになっていたのでした。


 そう言えば、リーゼはあの時言っていた「子どもと戦えない人が逃がされました」と。

 つまり、呼び戻された住人の大半は子どもだと言うことで。

 現に今も、十人くらいの幼児を含む子どもたちがわたしとウルの周りに集まっている。なお、ちょっと離れて見ている人も何人か居る。


 考えてもみてください。

 獣人とは、獣の特徴を備えたヒトのことです。

 彼らには皆一様に、ケモミミや尻尾が生えているのです……! しかも、ちっさいのです!

 子猫や子犬に囲まれてる所を想像してみれば、これがどんなに癒される光景かわかってくれることでしょう……!

 人型に近い子も可愛いけど、獣に近い子は二足歩行の動物って感じですからね……その毛をモフモフしたくてたまらない!


「ははっ、神子さまはモテモテだなー」

「ウルさんもお久しぶり」


 トリップ寸前だったわたしの意識をレグルスとリーゼが引き留めてくれた。危ない危ない……。

 そして「オレたちは神子サマとお話ししないとだから、おまえらちょっと他の場所で遊んで来い」とレグルスが子どもたちを散らしていく。……あああああバイバイモフモフ……。

 などとわたしが内心嘆いている横で、ウルが額の汗を拭うような仕草をしていた。


「た、助かったのだ……」

「……ウルって子ども苦手なの?」


 クアラ村の時も挙動が固かった記憶があるんだけども。

 わたしの質問にウルは少しばかり虚ろな目をして答えてくれた。


「うむ……何と言うか……その……ふとした折に怪我させてしまいそうでな……」

「あー……」


 実はわたしもたまにLPが削られてるからね……子ども相手だと大きな怪我に繋がりそうかもしれない。


「怪我……ねぇ……おいレグルスよぅ、本当にこんな細っこい小娘があのキマイラを倒したのか?」


 どこか棘のあるセリフが聞こえて、わたしはやっとレグルスたちの後ろに三人の大人が居ることに気付いた。

 セリフを放った人は……何だろう、猪かな……大きな牙を持ち、蹄の足をしている中年男性だ。腕は骨折したのか包帯を巻いて布で吊っている。あれ、ポーション使わなかったのかな?

 残りはちょっと線が細い猫獣人っぽい妙齢の女性と、杖を突いた同じく猫獣人っぽい老齢の男性だ。『っぽい』が付くのは判別し辛いからです……。


「ボーアのおっちゃん、そりゃ失礼だって。ウルの姐さんはマジで強ぇんだからさ!」

「はっ……どうだか……」

「まぁまぁ……」


 揉めてる、と言う程でもないけれども、そのボーアと言う人を皆で宥めている。……トラブルが発生しそうな空気だなぁ。

 わたしは何やらぐだぐだし始めた人たちを横目に、引いた位置でおろおろしているリーゼに声を掛けた。


「あー、リーゼ。わたしたちに話があるんじゃ?」

「……そうだった。村の大人で、えっと、手が離せない人も居るから全員じゃないけど、改めてリオンさんにお礼を言おうと思って」

「……あれで?」

「…………あれで」


 お礼を言う態度じゃない人をそろっと指差したら、リーゼが小さくなった。いやうん、きみを責めているわけじゃないからね、気にしないでね。


「もう! レグルスにぃもお母さんもお爺ちゃんもボーアさんも、何しに来たのよ!」

「ヒェッ」

「あら……ごめんなさいね」


 ついに怒ったリーゼの言葉に、わたしは思わず目を丸くした。ちなみに、変な声を上げたのはレグルスである。

 しかしお母さん若く見えるね……あと二人は猫じゃなく獅子獣人ってことになるのかな。よく見たらリーゼに似てなくもない。

 ほけーっと見てたら、そのお母さんと目が合って、お祖父さんに手を貸しつつこちらに歩み出てきた。


「神子様、ウル様、初めまして。リーゼの母、レグルスの叔母のライザと申します。こちらは父のライオット、後ろに居るのは先程もレグルスが言っていましたがボーアです」

「あ、どうも初めまして」


 挨拶してくれたのでペコリとお辞儀をする。ウルもとりあえず同じ動作をしていた。


「この度はキマイラを討伐していただき、また、死にゆくかと思われた村をここまで整えてくださり、ありがとうございました」

「神子様には感謝の念に堪えませぬ……」


 二人が深く頭を下げたことで、斜め後ろで気に食わなさそうにしている人が視界に入ったが、とりあえず見なかったフリをする。


「いえ、わたしは出来ることをやったまでです。顔を上げて――」


 明らかに自分より年上の人にそう畏まられるとムズムズして仕方ない。

 それでも二人は長いこと頭を下げ続けていたが、レグルスの「リオンが困ってるぞー」の声でやっと上げてくれた。ナイスアシスト。


「ところでライザさんは何かご病気ですか?」


 ここに残ってるということは『戦えない大人』と言うことだったのだろう。

 ライオットさんは歩くのにも支障を来しているみたいだし、ボーア……さんも、恐らく腕の怪我が原因だろう。

 一方ライザさんは身体的に何かあると言うわけではないが、ちょっと顔色が悪かったし聞いてみた。


「病気と申しますか……戦いの一番最初に、瘴気に侵されてしまいまして……」


 ライザさんが右袖を捲ると包帯が姿を見せるのだが……白いはずのそれが赤黒く染まってしまっていた。うわぁ……これは痛そう……。

 LPポーションでLPは回復するけれど、瘴気ダメージはまた別の処置をしないと長いこと継続するからね……。


「リオンにもらったポーションとか聖水とか使ってみたんだけど、あんまり治らなくてなぁ」


 レグルスが頭を掻きながら追加説明を添える。

 聖水もスキルレベルと素材の問題でそこまで質が良くないからねぇ。残念ながら瘴気にはそんなに効かないと思う。のだけれども。

 だったら……と提案しようとした所――


「はっ、そんなどこの誰とも知れない怪しい小娘の薬なんて効くわきゃねーだろ」


 再度の棘……いや、明らかに悪意のある言葉が投げ付けられた。

またも長くなってしまったので、微妙な位置ですがここで切ります……。下は明日になります。

ただのケモミミパラダイスの予定だったのにどうしてこうなった。

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