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終末世界の開拓記  作者: なづきち
第六章:死海の傲慢なる災禍

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探索は続き、そして

「念願の、鉱石探知機を、手に入れたぞ!」


 てってれーと頭の中で効果音を鳴らしつつ、出来上がったばかりのそれ――手のひらサイズの箱を頭上に掲げる。いやぁ、長かった……。思わず涙がこみ上げてきそうである。

 この前のアイテムボックスの話でふと気付いたけれど、どうやらアイテムボックスはゲーム時代より遥かに枠が増えてるみたいだ。ひたすら冥界で収集したアイテムを放り込んでいたらいつの間にか種類が軽く百を超えていたのだ。これまでインナーボックスに入れ替えていた苦労は一体なんだったのだろう。それにまさか、満タンで泣く泣くアイテムを捨てることにならないよう、こまめに拠点うちの倉庫に預けていたのが仇になるとは……所持したままだったらかなり短縮出来たのに!

 ……と言うか、今までもきっちり数えてたわけじゃないから、枠を超えてたのにずっと気付いてなかったのかもしれないな……。QAクイックアクセスボックスと入れ替えなくても直接アイテムを取り出せることには気付いていたのに、何故枠数が増えている可能性を考えなかったのか。マヌケ具合に泣きたくなる。


「お疲れ様、リオン。これで大きく前進したな」

「グァ」


 アイティが労いの言葉をかけてくれて、アルバもそれっぽい動作をしてくれる。ありがとう。でもわたしのマヌケがなければ苦労も減っただろうに、ごめんよう。


「……そもそもそこまで容量が大きいこと自体が規格外で想定外だろう。謝る必要はない」

「え? 神子なら皆これくらい持てるんじゃないの?」

「違う……はずだ。全員と顔を合わせたわけではないから断言は出来ないが」


 そう言えば、わたしのアイテム量にカミルさんが頬を引きつらせていたこともあったっけ。カミルさんはそこまで所持することが出来ないからだったのかな。

 枠が増えた理由は単に現実アステリアだからではなく、この身が創造神お手製の神造人間ドールで加護たっぷりだからなのが濃厚? まぁそうでもないとわたしより先輩神子で全体的にレベルが高いカミルさんが驚く原因にはならないか。


「過ぎたことを嘆いても仕方ない。今は前向きに行動を、具体的には早速鉱石探知機を起動!」


 鉱石探知機にMPまりょくを流すと同時に、鉱石探知機の上に仮想ウインドウが展開された。この辺りはゲームと同じか。

 見た目はシンプル、自分を中心とした画面に現在の進行方向が矢印で表示され、指定した鉱石アイテムが探知範囲内にあるとその位置に光点が表示されるようになっている。現在は初起動で何も指定していないので光点は一つもない。なお、光点表示中は常にMPが消費され、MPがなくなると当然ながら使用出来なくなる。


「まずはテストで鉄を探知……っと」


 スッとMPが減る感覚。鉱石探知機は便利だけど、MP消費が馬鹿にならない。だから鉄程度のメジャーかつ手に入りやすい鉱石に使うことはほとんどない。

 鉱石探知機に不具合はなく、指定した途端に周囲に想像より多くの光点が浮かび上がった。こんなに取り逃していたとは……!


「……全部回収に行く余裕はないぞ?」

「わ、わかってる、よ?」


 ウズウズしていたところを見破られたのかアイティに釘を刺される。いくらなんでも目的を後回しにしない理性くらいはありますよ……? あ、肩をすくめられた。そんなにわたしの考えってわかりやすいですかね……。

 まぁうん、一度現世に戻って、余裕が出来たらまた冥界に来てあれこれ掘りに来ることにしよう。皆が一緒なら寂しくも怖くない。いやその前に現世の探索からかな?


「……気を取り直して、ディメンションストーンを探知……うぐ」


 指定し直すと更にMPが吸い取られ、まだまだ余裕はあるけど一気に減ったことで少し頭がくらくらした。レア鉱石ほどMP消費量が大きくなるのだ。

 鉄に比べて光点の量はガクっと減った。画面内に数個しかないレアさだけど、あてもなく広大で危険な冥界を探索することとは比べるまでもない楽さだ。疲労感を抜きにしても思わず頬がニヤけてくる。


「えっと……まずはこの位置から行こうか。次はこっち。この少し離れたのは後でウェルシュに頼むとして――」

「……リオン」

「ん?」


 アイティが固い声でわたしを呼ぶ。その目は鋭く、手は剣の柄を握っていた。

 ……あ、もしかして。


「……ひょっとしてこれ、魔力が放出されていたり……?」

「そのようだ。……客が来ているぞ」


 なるほど、仕組みとしてはわたしの魔力をソナーのように放出して検知していると見るべきだろう。

 しかしここで一つ思い出すべき話があります。


 ――魔力を発する物はやめておけ。感知するモンスターも居る。


 つまり……鉱石探知機を使用すればするほどモンスターとエンカウントする確率が上がるわけでありまして。


「……お、お手数お掛けします」

「不可抗力だから気にしなくていい。が、使用回数は極力減らした方が良さそうだな」


 うぅ、ディメンションストーンを探すついでに、経路にある鉱石くらいは採掘して行こうと思っていたのに……こんちくしょう!

 わたしはやりきれない怒りを集まってきたモンスターたちにぶつけるのだった。



 鉱石探知機は使用するたびにモンスターをおびき寄せる一種のモンスターホイホイであったが、開き直ってわたしの戦闘訓練として扱われるようになった。……素材も集まるし一石二鳥だね……? いや元の鉱石発見を入れると三鳥か。

 アイティの加護はわたしの戦闘能力とは直接的には関係しないけれど、傷や疲労の回復が早くなったことで訓練は少しずつハードになっていった。……ワァイ。


「疲れていても、毎日欠かさずモノ作りをするリオンは割と体力があるんだな?」

「寝る前のモノ作りは日課だし別腹なので!」

「……そうか」


 ここで『体力が残っているならもっと訓練を増やすか』とならないのがなんだかんだで甘い女神様だね。まぁ創造の力がアイティの回復にもなるからだろうけど。アイティはじわじわと回復していてもまだ本調子ではない。地神や水神に比べて回復が遅いなぁと思ったけど「冥界では回復リソースが魔石とリオンの創造しかないからな」と言われては頑張らざるをえないのである。別腹も事実だけどね。


「クァー」

「ん? お腹空いた? ……違うか」


 アルバも努力を続けており、体は最早干物とは言えない、やや痩せ気味の子ドラゴンと言うくらいになった。付け加えると、錆混じりの声もだんだん治ってきた。もうすっかり怖いドラゴンではなくなっている。そしてわたしの聖域にも慣れてきて、一部ではあるけどモンスターも相手取ることが出来るようになったのだ。成長が著しくて嬉しいよ。


「……っと?」


 本日のねぐらである洞穴の外側からギャアギャアとモンスターたちの悲鳴が聞こえてくる。モンスター同士で争っている……いや、これはウェルシュに襲われているんだな。あれ以来律儀に素材集めをしてくれているからね。

 その証拠に、しばらくすると当(にん)の羽ばたき音が聞こえてくるのだった。出入口に設置した石を収納して顔を出す。


『ここに居たか』

「お帰りー」


 手を振ってお出迎え。アイティは一瞥するだけだけど、アルバは少し体の位置をズラしてわたしを挟む対極の位置へと移動する。……未だにウェルシュには苦手意識があるみたい。初手で殺害予告されればトラウマにもなるか。アルバの気持ちも考えず勝手に仲間に引き入れて申し訳ない気持ちを内心で抱えつつ、メリットが大きすぎて今更切り離すことも出来ず。せめて頭をポンポンと撫でてやる。

 ウェルシュはそんなアルバにフンと鼻息を鳴らす。でもわたしは知っているのだ。アルバの努力をウェルシュが認めつつあることを。険しい目つきが少しずつ和らいでいることを。こっそりと生暖かい視線を送るわたしであった。

 が、次の一言で、そんなことのんきなことを考えている場合ではなくなった。


『とらんすぽーたーとやらを発見したぞ』

「………………えっ」

QAボックスの仕様違いについても完全に描写忘れてました、すみません_(´ཀ`」 ∠)_

なお、QAボックスの存在意義がなくなってますが、そもそもブロック化同様リオンが創造した枠扱い的な…

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― 新着の感想 ―
[一言] >枠が増えた理由は単に現実(アステリア)だからではなく、この身が創造神お手製の神造人間(ドール)で加護たっぷりだからなのが濃厚?  なるほど。 つまり……  その点ドールってすげぇよな、…
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