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終末世界の開拓記  作者: なづきち
第六章:死海の傲慢なる災禍

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時は緩やかに流れる

 更に時は流れ、冬が終わり、春になり、初夏へと季節は移る。

 この間、特にこれと言った大きな出来事トラブルは発生しなかった。ちょっとウルさん、『リオンが大人しくしているからだの』って顔しないで。わたしだってトラブルを引き寄せようと思って引き寄せているわけじゃないんだからね……! あっちが勝手に寄ってくるんだから……!

 とは言えイベントすら全くなかったわけではない。年明けには新年のお祝いをして、春の始めにはフリッカの誕生日祝い、半ばにはウルの誕生日祝いを行った。新年は皆で協力して盛大に行い、誕生日はどちらも皆に食材を用意してもらってからわたしが腕によりをかけてご馳走を、そしてプレゼントを用意して大変喜ばれた。……フリッカの時はその後も色々あったのだけどそれはさておき。


 その他にやっていたことと言えば、基本的には拠点の拡張――神子わたしの影響力を強めることが第一で、後は各村を定期的に訪問したり、近場だけれどもまだ行ったことのない地域を探索してみたり、と地道なあれこれだ。

 影響力はわたしが拠点に力を入れるのをサボっていた……と言うほどではないのだけれど、ゲーム時代に比べて手を掛けていなかったのは確かだ。いやまぁあの頃は余裕があったからね……。ゲーム内時間でいくら経っても世界が滅ぶことはないし……村が消えることはあったけど。まぁ理由はどうあれあまり広がっておらず、未だに最寄り村であるクアラ村にすら届いていないのが現状だ。うぅ、情けない。


 でもクアラ村の方もモノ作りの勢いは強くなっている。わたしが水神の知識を得たことで船作りと海産物について改めてお願いをしたからだ。自分たちのためにもなることであるし、皆快く引き受けてくれた。

 ただ難点があって、南の方に行き過ぎると廃棄大陸の影響を受けてしまうので足を伸ばすことが出来ない。あちらは未だ手つかずだ。……なので、三人目の神子とはまだ会ったことがない。創造神曰く、状況は良くなっていないけれど悪くなっているわけでもないので、ひとまずこのままで良いらしい。むしろ三人目の話をする時に気まずそうに目を逸らすので、あまりわたしと会わせたくない――相当に相性が悪いのかもしれない。やだ怖い。


 おっと、拠点の変化の重要事項があった。地神のおかげで地下に鉱脈が出来つつあるのだ。わたしもウェルグスさんも大喜びでモノ作りの合間にちまちま掘り進めている。しかも、掘っても時間経過で復活する、ゲームによくある設定と同じ感じになりつつある。いやぁ、ありがたやありがたや。

 鍛冶繋がりで思い出したけど、ドラゴニウムとウルの鱗の加工は未だに出来ていない。おのれぇ。

 水神のおかげで水質も各段に良くなっているし、ついこの前やっと風神の加護も完全版になって念願のアイテム作りが出来るようになった……かと思いきや、素材が足りてなかったりする。ふえぇ……。ゼファーに乗ってすぐにでも探しに行きたいところだけど、一人での遠出は許可されてないからね……。

 ゼファーは少し大きくなったけど、まだ子ども二人乗せるのが精一杯で、わたしとウルもしくはフリッカを乗せることはムリだ。早く大きくなっておくれ。

 ……水神と言えば、イージャの部位欠損回復アイテムの開発も芳しくない。不甲斐ない神子でごめんよぅ。

 アステリオスは今日も果樹園でのんびりしている。彼はゴーレムゆえ睡眠は必要としないはずなんだけど、寝てるところを割と目撃するのよね。不思議。偶にルーグくんもセットになっている。


 グロッソ村も着々と力を取り戻しつつある。人手と言う最大の力は簡単には補充されないけれども、悲劇に直面したことで個々が危機感を持ち、向上心がグンと伸びたからだ。訓練にモノ作りに、一生懸命になってくれてわたしは嬉しいよ。ちょっとフリッカさん、『リオン様は本当に子どもに弱いですね』って顔しないで。確かに小さい子は可愛く思えるし、加えてモフモフの魅力は……ん゛ん゛っ、何でもないです。ないったらないです。いやあのホントにごめんなさい、そこはちょっと……!

 ……え、えぇと……なんだっけ。そうそう、グロッソ村はレグルスとリーゼの先導の元、バートル村との交流が始まってるよ。わたしが複数回使用出来る帰還魔石を作ったことで以前より移動もしやすくなったしね。作成は超面倒だけど作り甲斐があるってものよ。


 ……バートル村と言えば、風神のせいで大変だった。案の定、風神の解放を知った村人さんたちが我も我もと押し寄せてこようとしたのだ。風神が鶴の一声で止めてくれなければどうなっていたことか。……まぁ原因も風神だけれども、さすがに責任を求めるのは違うからねぇ。それはそれとして、めちゃくちゃ崇められていることに風神が得意気になっててちょっとウザ――こほん。

 臨時会議の結果として、駐在大使よろしくバートル村のヒトが数人ずつ一定期間ごとに交代で滞在することになった。彼らは風神が拝めて、わたしは人手が増えてWin-Winである……と言っておこう。バートル村側で次の人員を決めるために壮絶な争いが行われていることには決して首を突っ込まないぞ。


 アルネス村のことも少し語っておこうか。

 この村にはわたしとウルしか足を踏み入れていない。フリッカもフィンも、あれ以来一度も里帰りをしていない。実態はどうあれ、二人は罰としてわたしのところに来たと言う経緯もあるけれども……それ以前に「連れて来るな」と言われている。

 ただそれは悪意ではなく、善意からのものだった。わたしだって訪問を重ねることでアルネス村で信用を得ている。逆に信用度が高くなってきたからこそ、フリッカが訪れた日には神子わたしとの縁の強化を求めて余計なことを仕出かすヒトが居るかもしれないとかなんとか。……うぅん、業が深い。

 行くたびにザギさんとウィーガさんには二人の近況報告をしているので、内心で寂しい思いはしていても不安にはなっていないそうだ。ちゃんと面倒を見るし手放す気もないので安心してください。

 アルネス村は以前の出来事も踏まえて、薬草やら浄化やらのことに特に力を入れている。村の御神木もすっかりと元気を取り戻したようだ。……そう言えば、世界樹ってどこにあるんだろう?


 次は砂漠方面について。ここはわたし自身ではあまり探索出来ておらず、もっぱらアイロ村――ランガさんに頼っているような状態だ。彼には頭が上がらなくなりつつあるけれど、彼も彼で未だにわたしへの恩義で張り切ってくれている。恩の返しあいになりそうな予感がしてきた。

 でも持ちつ持たれつと言う言葉が一番当てはまるのは神子であるカミルさんとかな。彼とは技術面でよく交流をしている。

 カミルさんと水神風神との顔合わせは荒れることなく無事に済み、ウェルグスさんハーヴィさんも紹介済だ。アイロ村での知識も仕入れて、逆にわたしとドワーフ夫婦の知識もアイロ村に提供して、あれこれと開発が進んでいる。色々とやったけど、大きなところではゴーレム車の試作品が出来上がったことかな。砂漠カスタムのゴーレムそりもあるよ。ランガさんも最初はウルぞりを思い出しておっかなびっくりだったけどすっかり慣れたようだ。今では試用を兼ねつつ元気に駆け回っている。

 そして、名も無き……もといリオーネ村、この村もだんだんとアイロ村と関係は太くなってきているようだ。良かった。

 え? わたしへの信仰度? なにもない、ないんだよ。いいね?


 バーグベルグ村とはあんまり改善していない。悪化もしてないけれどもね。……まぁこれはわたしの足が遠のきがちだからと言うのもある。積極的になれば関係改善も進むかもしれないけれど……キマイラ騒動を解決して以降はトラブルもなく彼ら自身生活が困窮しているわけでもないので、最低限の御用聞きだけしているような状態だ。

 あ、ヘリオスにはちょくちょく会いに行っているし、温泉にだって入っているよ。……偶にフリッカと二人で来てはいちゃいちゃしてることもある。ヘリオスは大変空気が読める竜で二人きりの時はあまり近付いてこない。いやなんか恥ずかしい……お手数お掛けしてます……。

 ヘリオスの記憶を元にバーグベルグ村以外にもいくつか村を発見して、そちらとはちまちまと交流をしている。バーグベルグ村とてヘリオスの件がなければ同じような状態になってたかもだけど……たらればを話しても仕方ないし、ヘリオスに責任を押し付ける気だってないし、これも彼らの選択だと言える。頭が固いと言われようと、譲れないラインはあるのだ。


 まぁ大体このような感じの、常に何かしているけれど平穏な日々を送っていた。



 ……しかしこれは、嵐の前の静けさでしかなかった。

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