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終末世界の開拓記  作者: なづきち
章間五

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281/515

冬の準備と拠点の拡張

 季節は冬。すっかり寒くなった今日この頃。

 わたしがこの世界(アステリア)にやって来たのが春なので、もうすぐ一年が経とうとしている。もう一年と言うべきか、まだ一年と言うべきか。過ごしてきた時間が濃密すぎてどうにも時間感覚が狂っている。

 たった一年弱で神様たちのうち半分が解放出来たのは途轍もなく運が良いことなのだろう。自分でもあまり実感がなくて頬をつねりそうになる。

 この調子で残り半分の神様もサクっと解放出来れば良いのだけれども、そんな上手く行くはずがない。だから長期戦に耐えうるよう、着実に足場を固めていかないとな。


 冬を越す準備はたいして時間が掛からなかった。基本的に必要なのは食料と燃料と防寒で、食料はいつも腐りそうなほどにストックしているし(と言うか実際に腐らせていて、その場合は肥料にしているので全くの無駄ではない)、燃料も素材集めが趣味なわたしのことなので改めて集めるまでもなく大量に保管されている。

 残るは防寒だけど、衣服に関しては普段から裁縫スキルでたくさん作ってきているので、羊さんから毛を拝借して、他にもモンスターの羽毛とか使用して、ちょちょいと作るだけで済んだ。家屋の防寒は窓を二重にしたり、外壁にエンチャントをかけたりした。隙間風の入るような穴は元々ない。後は暖房としてストーブやこたつ、カイロを作ったりした……のだけれども。


「いやぁ、このこたつっていうのはぬくぬくしていいねぇ……」


 こたつの魔力に真っ先に風神が魅入られて丸くなっていた。ちょっと? 風の神様?

 フィンとイージャ、ルーグくんは子どもらしく寒くても平気なようだ。現に今も外で元気に走り回っている。お守りとしてウルとゼファーが居るので心配はいらない。ウルは鱗持ちとして寒さに弱いかな?と思ったけど、こちらも平気なようだ。さすが鉄壁。レグルスとリーゼは「寒さに耐えるのも修業だ!」とか脳筋思考で半袖で居る。こちらが寒くなるのでやめてほしいという感想は心の中にしまっておく。

 ということで、主にこたつを使用しているのはわたしとフリッカ、ウェルグスさんハーヴィさん夫婦と、意外にも神様ズとなった。ドワーフ夫婦には彼らの家にもこたつを設置したのでそちらでゆっくりしていることが多いのだけれども、神様ズは神様ハウスにも設置したにも関わらず、わたしたちの宿泊棟のくつろぎルーム(住人が増えたので広くしておいた)で温まっていることが多い。なんでだ。


「リッちゃんの作る果物が美味しいからよぉ」

「あ、はい……?」


 様式美とばかりにこたつの上に積んでおいたみかんを食べながら水神が説明する。……いやいや、果物は差し上げているので神様ズの家でも食べられますよね?


「……諦めるんだな。こいつらに合理的な理由を説明させようなんて無駄さね」

「……あ、はい……」


 付き合いとして一緒に居る地神が首を横に振る。いやまぁ駄目ってことはないんですけど……さすがに神様と一緒のこたつに入るのは畏れ多いのか、フリッカが肩身を狭そうにしている。そんな状態でもここに居るあたり、彼女も(良くも悪くも)神様に慣れたんだろうね。

 ……ファンタジーなヒトたちがこたつを囲む。改めて考えるとものすごくシュールな光景だ。まぁ深くは気にしないでおこう。時は戻らないし、今更なのである。


「それでリオン、拠点ここの拡張は順調なのかい?」

「……ぼちぼちと進んでいますよ」


 こたつの天板に頬を乗せ、威厳もへったくれもないとろけた姿勢で風神が問いかけてくるので、わたしはみかんの皮を剥きながら答える。「リッちゃんも私たちの扱いがぞんざいになったわよねぇ」と水神の呟きが耳に入ったけど気にしない。楽しそうな声音なので怒っているわけではないし、そもそもきちんと対応してほしければまずこたつから出てください。


 この冬、わたしは新規の場所に行かずに拠点の拡張に努めることにした。残りの神様の行方、せめて手掛かりくらいは掴むべきかと思わないでもないのだけども、前述の通り足場固めを優先することにした。どのみち、火神が封印されていそうな水神の領域は北の方なのでめちゃくちゃ寒いらしい。流氷が漂うレベルで、下手に冬に行くと凍死する危険性がある。水神の加護で水中呼吸アイテムが作れるようになっても、保温に関しては火神の分野なのだ。……おのれ、火神の捜索に火神の加護が欲しいだなんてなんたる理不尽。

 光神が封印されていそうな地は水神の領域よりもっと寒いので却下。闇神が封印されていそうな空は風神の加護を得てジェットブーツかスカイウイングを作れるようにならないと始まらないし、空は空で寒いはず。つまり、この時期はどこも探索に向かず、拠点を充実させる方が建設的なのである。あ、わたしの戦闘訓練も付け加えておく。


 具体的に何をしているのかと言うと、田んぼや畑、牧場や果樹園などの食料生産設備を拡張しているだけだ。あと保管用の倉庫とか。アイテム生産設備はこの前ドワーフ夫婦が来た時に増やしたばかりなので今は拡張する必要はない。グレードアップは必要だけど、これは可能になり次第行っている。

 食料は冬は不足しがちになる――うちは大量にあるからそれ以外の話ね。だからこれまで訪れたことのある村に提供しているのだ。ただ差し上げるだけじゃなく対価としてモノ作りや余裕のある素材を要求しているから、住人たちをただ甘やかしているわけではない。「……食べ物に困らないだけで十分に救われますよ?」とはフリッカ談。アルネス村は森に囲まれて自然の恵みに溢れているとは言え、冬場はちょいちょい厳しいことになるらしい。ちゃんとアルネス村にも食料は提供しておいた。……アルネス村に行くたびにウィーガさんに「フリッカとはどうなっておりますかな?」と聞かれるので困る。「問題ありませんよ」と笑ってかわすけど、心の中ではヘタレでごめんなさいと謝っている。


 そして単純に拠点を拡張することによって神子わたしの影響下にある土地が増え、神様の行動可能範囲が増えるのだ。これはわたしが拠点と認識している区域――具体的には防護柵と堀で囲っている部分――だけではなく、その周辺にも広がっている。今は微々たるものだけれども、いずれはグロッソ村やクアラ村までわたしの力が及ぶようにはしたいところである。

 神様の行動可能範囲が増えることは単に神様たちの窮屈さを解消させるだけではない。地神であれば土や鉱物、水神であれば水、風神は……漠然としているけれども空気とでも言えばいいのだろうか、それらの質が良くなるのである。特に地神に関しては【地神の土壌】で土が良くなるだけでなく、なんと地中に鉱物が生成されるようになるらしい。つい最近知ってビックリだ。これは拝んでおかなければ。え? だったらもっとお酒寄越せって? 【水神の水珠】を使用して質を上げてるんだから量を増やすのは勘弁してください。

 なお、このシリーズの風神のアイテムは【風神の息吹】と言って、触れたモノの質をちょっと良くするらしい。これはこれでなかなか良さげだ。鍛冶にも使えそうだし、風神には早く体を治してもらいたいものである。


「……リオンのその目、なんかゾクゾクするものがあるね……」

「…………」


 風神のアヤシイセリフに、わたしは無言で目を逸らすしかなかった。駄目だこのヒト、早くなんとかしないと。


「でもリオン様、拡張して手は回るのでしょうか?」

「……ん、回ることは回るよ。そのための自動化だし」


 話題を逸らすようなフリッカの質問に、わたしはなんとか気を取り直す。

 ウェルグスさんハーヴィさんにわたしの作るアイテムの一般化を頼んではいるけれど、この拠点に関しては全力でわたしの作成メイキングスキルに頼っている。なので、規模の割りには人手は必要としない。

 とはいえ、定期的にヒトの目による確認は必要だ。プログラムじゃないんだから、予期せぬ不具合が起こらないとも限らない。え? プログラムでもあるって? それはさておき、確認も今のところは大丈夫だ。

 でもいずれは、主にわたしが居ない間に取り仕切ってくれるサブ管理人とか欲しいなぁとは思わないでもない。一番信頼出来るのはフリッカだけど、この子はわたしと一緒に出掛けるからね……。フィンはまだ小さいから成人したヒト……ドワーフ夫婦はモノ作りはともかく管理には向かないんだよね。

 他に条件に当てはまるヒトが見つかればいいんだけども……この辺りもおいおい考えないとな。

作者自身、作中の時の流れに対して展開を進めるのが早かったなぁと思わないでもないです_(´ཀ`」 ∠)_

……ま、まぁ、ゲームで体験していて実質人生二週目&ボーナス(転移アイテムとウル)ありってことで……。

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[一言] >風神のアヤシイセリフに、わたしは無言で目を逸らすしかなかった。駄目だこの神、早くなんとかしないと。 フリッカ「駄目だこのヒト(リオン様)、早くなんとか子供を作らないと」(妖しい瞳)  …
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