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終末世界の開拓記  作者: なづきち
第五章:炎山の弄られた揺り籠

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三人目の神子の現状

 その後も他の素材で試してみるもウルの力に耐える武器は出来ず、夕方になりお開きとなった。なお、ゼファーの鱗は出していない。少々思うところもあり、後日自分で加工チャレンジしてみることにしたからだ。

 また宴会が開かれそうになったけど、ドワーフさんたちにお礼のお酒を作りつつも丁重に辞退をして貸してもらった部屋に引っ込む。わたしもフリッカも別にお酒好きでも何でもないのだ。たとえ二日酔いにならなくても連日飲まされるのは辛い。ウルなんて酔っぱらうと寝てしまうので更に辛いだろうし。

 あ、ウルへのお詫びの美味しい食べ物も忘れてないよ。喜んで食べてくれて良かった。大人数での食事が嫌いと言うわけでもないけど、気心の知れた相手だけで食べる食事は落ち着くね。

 食事中にフリッカに今日の様子を聞いてみたら色々ためになったそうだ。わたしの知らない技術もあるかもしれないし、今度ゆっくり何を教わったか聞こう。

 丸一日の鍛冶でさすがに疲れていたので就寝する。


 翌日になり、「数日外に出ますね。約束もありますし、ちゃんと帰ってくるので心配しないでください」と伝え、細かいことを聞かれる前に帰還石を使用して拠点うちに帰る。カモフラージュとして祭壇のあったテラスからウルの手を借りて無理矢理外に出たので、帰って来た時にあそこに出現しても驚かれるぐらいで怪しまれはしないだろう。多分。きっと。

 予定より長く拠点を開けてしまったなぁ。え? わたしがモノ作りに夢中になったせいだって? アッハイ。ともあれ拠点の皆の様子と、あと水神の体調はどうなったかな。


「っと。ただいま戻りました」


 拠点の祭壇に出現すると、当の水神(プラス地神)が居た。この場所が拠点内で一番清浄だし、癒すにはもってこいだからね。

 帰還時に軽く光が発生するのであちらもとっくに察知していたのだろう、特に驚くでもなく軽く挨拶をしてくる。


「よう、お帰り」

「皆元気そうね、良かったわぁ」

「少し帰りが遅くなって申し訳ありません。すい……ネフティー姉さんのお体の調子はどうですか?」

「んー……良くはなってるけど、まだまだねぇ」


 ふむん、だとしたらまだ加護はもらえそうにないか。残念。現状のスキルで装備を整えて進むしかないか。


「ところで地神様、ネフティー姉さん、神子について聞きたいことがあるのですが……創造神様とコンタクトを取る方法ってありますかね……?」

「あん? プロメーティアにか?」

「今なら呼べば来るんじゃない?」

「えっ」


 お祈りしたところで降臨してくれるとは限らないし、大半は来ないのだが……。まさかねぇと思いながらお祈りをすると、創造神の像に空から光が降り注ぎ、本当に創造神が姿を現わすのだった。

 マジか。いやありがたいけど。単に神様同士だと何となく状況がわかるんだろうね。

 軽く挨拶をした後に、創造神の方から話を切り出される。


「神子リオン、どうかしましたか?」

「えぇと、その……現時点で神子ってわたしを含めて三人居るんですよね?」

「はい、その通りです」

「では、わたしがまだ会っていない三人目って何処に居るのでしょうか?」


 バーグベルグ村において昨年発生した偽(多分)神子事件。あれが本当に偽物だったかどうか確かめておかなければ座りが悪い。

 ……本物の神子だったらどうしよう、と緊張しつつ答えを待つと、ある意味衝撃的な答えが返ってきた。


「……三人目はここからずっと南、海を越えた地に居ます」

「え? 南の、海の向こうって……もしかして」


 わたしは思い出す。南の海沿いにあるクアラ村のことを。

 水平線の先に、何があったのかを。


「廃棄、大陸に……?」


 昼間ですら瘴気が大量に発生し、何の対策もなければあっという間に蝕まれてしまう死の大地。

 あんな危険な場所に、三人目が居る、だって……?


「仮想世界の方ではそのような呼称でしたか。わたくしの力が及ばずあのような状況になってしまっていますが、決して廃棄したわけではないのですよ」

「え? ご、ごめんなさい」


 創造神に苦笑と共に言われ、思わず謝る。廃棄……見捨てた土地などと言われては気分は良くないだろう。

 まぁ呼び方はどうあれ、危険な地に神子が滞在していることには変わりはない。


「わたしも急いで助けに行った方がよいのでしょうか……?」

「……いえ、リオンはこのまま残る神の封印の捜索を続けてください。それが間接的に彼女の助けにもなります」


 行かなくていいと言われて内心でこっそりホッとする。申し出はしたものの、常時瘴気塗れの地で滞在出来る気がしないからね……。初めて知った時から比べればスキルレベルも上がって装備やアイテムも充実したけれど、それでもまだ全然足りる気がしないのだ。

 しかし。


「彼女……三人目は女性ですか?」

「えぇ。……彼女はその、少し……いえ、かなり気が強いので、リオンと波長が合うかどうかは何とも言えませんが……」


 ひぇっ!?

 カミルさんは終始穏やかでやりやすかったけれど、そうじゃないってことか……うぅ、会うのが怖くなってきたな。まだずっと先になるけども。

 ま、まぁともかく、三人目はバーグベルグ村の事件には関係ないことがわかった。


「現在の神子は三人ですが……わたしがここに来るまでは当然二人だったわけですよね。二人に減ったのは何時のことでしょうか?」


 過去に亡くなった、もしくは力を返上したか取り上げられた神子が居るかもしれない。その可能性も潰しておきたかった。


「? 神子が減ったのは確か……三年近く前のことです」

「その神子さんは力を返上したのですか? お亡くなりになったのですか?」

「……残念ながらモンスターの戦いで命を落としてしまいました」

「……そうですか」


 亡くなったと言うことは……力を返上or取り上げられた神子が、実はまだ力が使えた!と言う線も消えた、と。つまり、バーグベルグ村の事件は偽神子確定ってことでいいかな。……死んだフリってことはさすがにないよね? 創造神が神子の存在を感知出来ないなんてことはないはず。


「変わった質問をするのですね。何かありましたか?」

「はい。実は――」


 当たり前のことであるが、創造神がわたしの質問の意図に疑問を持ち尋ねてきた。なのでわたしはバーグベルグ村で何が起こったのか説明をしていく。話が進むにつれて、創造神の顔はどんどんと暗くなっていった。


「神子の偽物が……私の力が至らないばかりに……」

「創造神様の責任ではないのでは?」


 実際に神子の力が使えなくとも名乗るだけなら誰でも出来るのだ。全盛期なら口にするのも制限出来るほどの力があったわけでもないだろう。創造神はそのような性質の神ではない。

 だから勝手に詐称したその人物が悪いのであって、そんなところまで創造神の責任を問うていたらキリがないと思うのだけれども。


「いえ、そもそもの原因は神子の数が少ないからです。その村にも神子が存在していれば、そのような怪しげな人物に引っ掛かることもなかったでしょう」

「……」


 一理ある、気はする。

 それでもわたしがこのような状況で踏ん張っている創造神を責める気にはなれないのは、わたしがこのひとの神子だからだろうか?

 ……まぁ、実際に被害にあったヒトたちからすれば、主神がもっとしっかりしていれば……と言う気持ちの一つや二つ抱くことも仕方ないので、そういった責めを非難することも出来ないのだが。

 うん、このひとのためにも、わたしが頑張らないとな。


「あぁ……もう戻らないといけませんね。そのキマイラの件、私も気になりますのでよろしくお願いします」

「あ、はい。お忙しいところありがとうございました。その件はお任せください」


 最後に挨拶だけして慌ただしく創造神は去って行く。

 ……三人目の神子のことをもうちょっと聞きたかったけど……しばらく会うことはないし、次の機会でいいか。

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