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終末世界の開拓記  作者: なづきち
章間四

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219/515

水神と創造神の再会

「ネフティー……よくぞご無事で……あぁいえ全然無事ではないですね……本当に、本当に申し訳ないです……!」

「メーちゃん……怒ってないからもう泣かないでほしいのだけど」

「でも、まさかアイロ村の地下に封印されていただなんて……! あそこには神子が居るから偶に様子を見ていたのですが……」

「……メーちゃんが地下だとポンコツになるのは今更だし……?」

「うっ」


 あ、トドメ刺した。


 さて、何が起こっているかと言うと。

 いつもの通り朝からアイテム作成(おいのり)をしていたら創造神が降臨したので、今回のアイロ村での顛末を報告したのだ。

 しかし、神様同士で報告をしているかと思えばしていなかったらしく、水神が解放されたことを今初めて知ってビックリされて、わたしもビックリして。

 早速水神が呼び出されて(どことなくダルそうにしていたのはひょっとして体調のせいだけではなかったのだろうか)。再会に喜んだのも束の間、瘴気による汚染の跡がまだたくさん残っているのでその惨状に泣きだして。更に、封印場所のことを聞いて自分の目の節穴っぷりに謝罪がエンドレス。

 で、水神は本当に怒ってはいないようだけど、繰り返される謝罪に呆れてぼそりと漏らした一言で創造神がノックアウトされて、「orz」の姿勢になりましたとさ。


「だから言わなかったのに……」

「ご、ごめんなさい?」


 この事態を引き起こしたわたしに水神がジト目を向けてきた。いやその、こんなことになるなんて想像出来ませんから……事前に根回ししてほしかったですよぅ。

 なお、一緒に居たウルとフリッカは一連の悲劇(コント?)に対して一言も発することなく、何も見なかったフリをしている。眉尻が下がっているのは仕方がない。


「プロメーティア、立て。さすがにそのみっともない姿勢をいつまでも信徒に見せるんじゃないよ」

「……そうですね……失礼しました」


 地神に注意されて涙を拭う所作をしながら創造神が身を起こす。いつもの如く実体がないので膝が汚れていたりはしなかった。

 ……創造神の実体って何処に居るんだろう? 一度くらい見てみたいけれど……超忙しい身だろうから無理か。


「ともかく、リッちゃんのおかげで少しずつ良くなってるから本当に心配する必要はないのよ?」

「あら珍しい……と言うより初めてですね。ネフティーが神子を愛称で呼ぶなんて」


 水神のわたしに対する呼称に創造神が目を瞬いたけど、わたしも目を丸くした。……え? 初めてなの?

 水神も水神で何故か首を傾げている。


「リッちゃんは新しい妹なのでしょう?」

「…………それは、そう、ですね…………?」


 創造神が視線を逸らした。……ですよね、謎理論にわたしも「???」って感じでしたからね。

 いくらわたしの出自が特殊だとしても、神子が六神と同列だなんて烏滸がましい。わたしとしては是非とも辞めさせてほしいところだけど、この様子だと期待は出来なさそうだ。このひとたちの力関係は本当にどうなっているのやら。

 それにしても……初めてかぁ。嬉しいような複雑なような。


「あぁ、神子と言えば。水神さm……ネフティー姉さん」

「何かしらぁ?」


 わたしが言い直したのは笑顔で圧を受けたからだ。速攻で屈する弱い子です。

 コホンと咳払いをして仕切り直す。


「アイロ村の神子に対して、怒りとかあります……?」


 水神は先ほど創造神に対して怒ってないと言っていた。腹芸するようなタイプにも見えないのでそれは事実だろう。そもそも主神に嘘を付いてたりしたら問題じゃないかな。

 しかし、創造神が地下に弱いのは周知としても、神子はそうではない。装備さえ用意すればいくらでも侵入出来るのだ。

 創造神以上に自由に行動出来る神子が、就任してから三十年以上ずっと水神の封印に気付くことがなかったのは……怠慢の誹りを受けても仕方のないことだ。

 わたしの問いに水神は顎に手を当ててしばし思考してから、問いで返してくる。


「リッちゃんはどう思う?」

「えぇ……と……」


 わたしはわたしの知り得る限りのアイロ村とカミルさんの情報を説明していく。たった数日のことなので正確ではないところもあるだろうけれど、わたしの感想を聞かれたのでわたしの考えでつらつらと述べていった。

 カミルさん自身は至って善人であるし、信頼する家族に組織ぐるみで隠蔽されていたのだから、情状酌量の余地はあるのではないか、と。


「……だからリッちゃんは、許すべきだと?」


 うっ、水神の声のトーンが低くなった。これは下手なことを言うとわたしにまで飛び火しそうだ。

 とは言え嘘とかおべっかを使ったところで更に印象は悪くなりそうだ。もう正直にぶっちゃけるしかない。


「個人的には、許してもらわないと困る、です」

「……困る? どうして?」

「だって、ただでさえ大変なこのご時世、神子を減らされたらわたしの負担が増えるじゃないですか。わたしは千人の村人なんて面倒見れませんよ」


 かと言って放置するわけにもいかない。カミルさんが村人のために色々レクチャーしていたので途端に暮らしが破綻することはないと思うけれども、いきなり神子の力を失っては大なり小なりトラブルが発生するはずだ。それのフォローを考えるだにげんなりとしそうになるので出来ればやりたくない。

 そしてわたしのこと以上に大事なのが。


「何より、創造神様の負担が増えるのは看過出来ません。彼自身は有害でも無能でもないので、続けてもらうべきです」


 むしろ罪滅ぼしとしてなおさら神子として従事させるべきでは、と締めくくる。

 わたしが一歩も引かず正面からキッパリと答えたことで水神は。

 ……何故か、笑いだすのだった。


「うふ、うふふふふふ。そう、そうね」


 嘲りでもない、からかいでもない、楽しそうな笑い声。

 怒られなくてホッとはしたけれども、笑われる理由もよくわからないんだよ……?


「いいわ、新しい妹のお願いだもの。困らせるのは本意ではないし、その者には私からは何もしないことにしましょう。……まぁ実際のところ、会ったこともないアイロ村の神子の処分なんて頭になかったのだけれども」

「え、でもさっき、めっちゃ怒ってましたよね……?」

「あれはリッちゃん向けよ。あそこで恐れて手のひらを返していたらアイロ村の神子はその程度だと思うだけだし、リッちゃんはその程度の思いで弁護をしようとしていたんだな、って。後はリッちゃんの頬を抓るくらいはしたかもね?」


 こわっ!? 危うくわたしのせいでカミルさんが余計な罰を受けそうになってた上にわたしの値踏みがされていた……!?

 でもそうだよね、何だか妙に気に入られているけれど、信用は一朝一夕に築けるものではない。神子としての言動を常日頃から求められているのだと、心に刻んでおかなければならない。現在の信用度では、ワンミスで切り捨てられることもあるのだ。


「怖がらなくていいのよ? わたしの威圧にも負けず、隠すことなく正直すぎるくらいに正直に発言したのはいっそ清々しかったし、第一にメーちゃんのためと言ってくれて嬉しかったのだから」

「そうですね。わたくしもリオンには感謝しかありません」


 頬をひくつかせていたわたしの頭に、水神と創造神が手を載せてきた。また頭撫でですか! 別にいいんだけど!


「ネフティーが罰を下す気がないのでしたらわたくしとしても特にすることはありません。神子カミルには近いうちに話をしておきましょう」

「思いつめて辞められても困りますしね。なる早でお願いします。……あ、そうだ」


 ふともう一件思い出し、腕を組んで傍観していた地神の方へ尋ねる。


「地神様はいずれアイロ村に帰るのですか?」

「は? 帰るって……何の話だい」

「あちらの方が地神様の領域でしょう? 治めるために移動するのかな……と」

「……あー……」


 地神は気まずげに視線を逸らした。まだ地域の汚染状態が酷くて移動出来ない、とかかな? わたしにはそこまでとは……あ、いや、地下の池の浄化が全く終わってないか。

 わたしが理由に検討を付けていると、水神が笑顔で割り込んでくる。直前のこともあったので内心ビクッとしたのは内緒だ。


「私の体のこともあるから、今レーちゃんが居なくなるのは困るわぁ」

「そ、そうだな。まだネフティーは治療途中だしな」


 なるほど確かに水神のことは同じ神である地神に診てもらうのが一番良いだろう。

 と、納得していたのだけれども……続けてぶち壊しになる言葉が続けられる。


「と言うのは建前で、レーちゃん的にはリッちゃんの作る美味しいお酒が飲めなくなるのがもっと困ることよねぇ」

「おいネフティー!?」


 酷い理由であったが、地神の慌て具合からして真実なのかもしれない。

 ……このアル中め!!


「……わたしとしては、先日アルハラがあったばかりなので、とっとと追い出すべきでしょうか?」

「リオン!?」

「あらリッちゃん。確かに飲ませすぎてしまったけれども、私たちとしては気晴らしをさせたかったつもりだったのよ? 泣くくらいだったから鬱憤が溜まっていたのかな、って」

「……」


 泣いたことの誤解がこんなところにまで! わたしが全ての元凶だったの!?


「リオン、あまり乗せられるな。同意が取れてない時点で褒められたものではないのだからな」

「……そうだね」


 ずっと黙って聞いていたウルであったが、黙っていられなかったのか小さく口を挟んできたことでわたしは正気に戻る。ふぅ、危うく流されるところだった。

 フリッカからも妙な気配が漏れているし、この話にはケリをつけてしまおう。


「ともかく! 今後無理矢理飲ませるのは禁止! やったら二度とお酒は作りませんからね!」

「わかったよ」

「はぁい」


 二柱ふたりとも素直に頷いてくれて助かった。まぁ頷かなかったらお酒を作らないつもりだったけどね!

 そして。


「……楽しそうなことをしていたのですね」


 創造神の羨むような呟きを耳にしてしまい、複雑な思いを抱くのだった。

 ……うん、強制はともかくとして、創造神もいつか参加出来るように頑張ろう。

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