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終末世界の開拓記  作者: なづきち
第四章:熱砂の蹂躙された眠り

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ダンジョン攻略

「――シッ」

「ふんっ!」


 ア゛ア゛ア゛ア゛アアアァッ!!?


 ギュア!?

 ゲェギャギャッ!


 不意打ちで放ったわたしの矢はニュートドラゴンへと命中した。ただ、位置が悪く急所が狙えなかったのもあってさすがに一撃で倒すことは出来ず、痛みにのたうち回る姿が飛び火した聖火で照らされているものの生きてはいる。……ひょっとしたらニュートドラゴンの水属性で効果が弱まっているのかもしれないな。

 ウルの投げた大量の聖水も効果が抜群で、モンスターハウスは一転して阿鼻叫喚の混乱の坩堝へと陥った。


「ウル、退くよ!」

「わかっておる」


 初手奇襲から逃れたモンスターたちがわたしたちに気付き、雄叫びをあげながら追いかけてくる。ここまでは計算通りだ。

 しかし強化モンスターたちは計算以上に足が速く、わたしが追い付かれそうになってしまう。


「させるものかっ」


 わたしの背に魔の手を伸ばそうとしたゴブリンに対し、寸でのところでウルが蹴り飛ばしてくれた。その一匹だけじゃなく後続のモンスターたちを巻き込むようにしてくれたため、いくらかの猶予が出来る。

 ありがとう! と口に出す余裕がなかったので心の中で礼を述べながら、ひたすら目的地まで走り続けた。


「リオン、もうちょっとだ、頑張れ!」


 レグルスの声援を受けながら、何とか無事に石ブロック通路を駆け抜けた。すぐさまウルも続き、モンスターも追いすがってきたところでリーゼが槍で頭を突き刺す。

 しかし瘴気に侵されたモンスターはその程度では死にはしない。頭を失ってなお動き続けるモンスターにリーゼは驚愕で固まってしまっていた。すかさずレグルスがフォローに入ったので事なきを得る。

 抜けたところの多いレグルスであるが、着実に学んで行っているようだ。おねーさんなんだか嬉しいよ。


「リーゼ、やつらは相当タフだから魔石を狙えるなら狙って!」

「う、うん……!」


 注意を促し、全力疾走で乱れた呼吸を整えるよう深呼吸をしながら状況を再確認する。

 正面陸路は問題なさそうだ。通路を狭くした甲斐があり、ゴブリンたちは一度に二匹しか入ってこれない。聖水を塗布したレグルスとリーゼの槍で対応出来ている。たまに上からワームが鞭のように身をしならせて襲い掛かってくるけどそこはわたしが弓で撃ち落とし、しぶとくも地べたでビタンビタンしてるところをリーゼがトドメを刺す。

 水路から案の定アーチャーフィッシュがやって来ていたが、網に気付かず突進して絡まって動けないうちにフリッカが魔法で同様に打ち上げては、これもわたしが撃ち抜いていく。しかし強化されてるだけあって網が早くも破れそうだな。再設置、っと。

 後方からもいくらかモンスターが迫って来ていたが、そちらは瘴気が薄いモンスターばかりでウルの素手で難なく砕かれていた。

 うん、順調順調。

 

 フゥ、と一息吐いたわたしの隙でも狙ったのか、ただの偶然なのか。


 ウ゛ブォア゛アアアッ!


 狭い通路の向こうでその巨体ゆえに通れないでいたニュートドラゴンが、仲間(?)モンスターを巻き添えにする形で、高圧洗浄機のような勢いで毒液を吐き出した。


「うがっ!?」

「きゃあああっ!」

「レグルス! リーゼ!」


 真正面でモンスターたちと戦っていた二人がモロに食らってしまう。

 モンスターが盾のような状態になり威力は減衰していたが、いくら毒対策をしていたところであの勢いではダメージは大きいだろう。耐えきれずに倒れ込む。

 その上、瘴気モンスターたちは腕がもげようと胴体に穴が開こうと魔石さえ無事なら動けてしまう。何匹かは魔石を穿たれて絶命しているようだが動けるモノも多く、邪魔な障害が動きを止めたのを好機とばかりに追撃を掛けようとしてくる。


「ウインドウォール!」


 間一髪、フリッカが発動させた風の壁で弾き返すことに成功した。

 わたしはその間にLPライフポイントポーションと解毒ポーションを投げ、空いた穴を埋めるように弓から槍に持ち替えて二人を守るように立ち塞がる。

 その刹那、苛立ちで再度毒線を吐き出そうとしたニュートドラゴンが視界に入った。


「わかってれば当たるか、っての!」


 ゴブリンたちを圧し潰すように石ブロックを多数出現させ即席の盾とした。ただの石とは言えかなりの厚みがあったので、石壁の反対側を大きく削る音がしたものの貫通するには至らなかった。

 そうしてわたしが防いでいる内にウルが二人を後方へ引き摺って行く音が耳に入る。


「ウル、二人の容態は?」

「すぐには動けなさそうだが問題ないだろうて」


 良かった。一安心と言ったところかな。

 後ろ手に追加のLPポーションを投げ渡し、石壁を越えようとするモンスターたちを突き刺していく。

 うひぃ、ニュートドラゴンはまだ諦めてないのか、ガリガリ音がまた聞こえたよ。石を追加しておこう。

 ただそれはモンスターたちを巻き込む諸刃の刃であるので、ニュートドラゴン以外のモンスターがほぼ居ない状態になりつつあった。

 しかし悠長にはしていられない、あいつが何か思考の埒外のことをやらかす前に倒してしまおう。


「フリッカ、セイクリッドアースランスの詠唱を始めて。発動と同時に石を収納するから」

「わかりました。聖なる光よ――」


 セイクリッドアースランスは名前の通り土属性と聖属性が付与された槍を打ち出す魔法だ。水属性なら土属性は弱点属性になるので聖火よりは効果が出ることを期待している。

 それにしてもフリッカも成長が著しいな。会ったばかりの頃は聖火の魔法一回でMPメンタルポイントがゼロになって昏倒していたと言うのに、今では連発とは行かないまでも数回なら使用に耐えることが出来るし、意識を失うことも早々になくなった。

 わたしが酷使したんだろうって? はいそうですゴメンナサイ。

 おっと、余計なことを考えている間に詠唱が完了しそうだ。タイミングを合わせないと。


「――邪なる力を貫く鋼のごとき槍と成れ。セイクリッドアースランス!」


 ゴア゛ア゛ア゛ア゛アアアアアッ!!


 キラキラと聖属性の燐光を帯びた槍が射出され、見事ニュートドラゴンの上半身に風穴を空けた!

 よし! と快哉を上げようとした寸前、ウルの警告が走る。


「まだあやつは生きておるぞ!」

「くっ……魔石は下半身にあるのか……!」


 それでも頭がなければ毒液は吐き出せないので脅威度は激減しているはずだ。わたしは魔石の位置を探りトドメを刺すべくニュートドラゴンへ駆け出した。


「リオン!」


 が、辿り着く前に、ウルの制止と同時にゾクリと背筋に悪寒が走り、即座に足を止めて後ろに跳ぶ。


 ブルアアアアッ!


 小さなニュートドラゴン――おそらくボス化してなかった個体か――が上から毒液を吐き出して来た。

 あっぶな、あのまま走ってたら当たってた……!

 幸いにして槍が届く範囲だったので刺し倒し、上方をサッと見回して他に伏兵が居なさそうなのを確認してから再びニュートドラゴンへ向かい、体液と共に撒き散らされる毒液に気を付け……いや少し掛かったけど毒耐性で打ち消されつつ、不格好ではあったけど聖火の矢を手で直接魔石に刺して今度こそ絶命させた。


 ガーディアンたちさえ居なくなってしまえば後は簡単だった。

 一応警戒しつつも核に歩み寄り、聖石による聖域化と聖水を振り掛けるだけで浄化は完了する。

 ……はぁ、ゼピュロス戦みたいにすんごい痛い思いをしながらの浄化チャレンジにならなくて良かったよ。ここは地下だから雷も届かないだろうしね。


 核の浄化と共に瘴気の発生は収まり、このダンジョンの攻略は終了となるのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] >ブルアアアアッ! >小さなニュートドラゴン――おそらくボス化してなかった個体か――が上から毒液を吐き出して来た。 !!? 小さなニュートドラゴンは若本の御大だった説!!
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