表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終末世界の開拓記  作者: なづきち
第四章:熱砂の蹂躙された眠り

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

147/515

創造神の像と帰還石

「うーん……」


 わたしは創造神の像の前にて帰還石を手の平でもてあそび、何とか改良が出来ないものかと頭を悩ませていた。

 帰還石の作成には距離の制限がある。そのせいで拠点うちに気軽に帰れないのが難点の一つなのだ。なお、使えばパっと帰れる時点で便利だと言う意見は横に置いておくものとする。

 特別に記録しておきたい場所を除いて毎回創造神像を撤去しているけれど、それは創造神像が破壊されるペナルティを避けるためにやっているのであって、撤去したからと言ってまたすぐ近くに像を建てて帰還石を――とはいかない。実験の結果、大体五日くらいはその地点で作れないことが判明している。

 このことから、創造神の像はただの目印であって、実際には大地にマーキングか何かされているのではないかと予想している。

 そのマーキングのようなものを剥がす、もしくはマーキングの範囲を狭くする、とか出来れば距離制限がなくなるのでは、と考えているけど……どうすればいいのかさっぱりわからずお手上げ状態だ。


 とは言え、地味に改良出来たところもある。

 今まではわたしが帰還石を作ってから、帰還石を使わせたい人の魔力を篭めた魔石を組み合わせていたけれど、今では魔力が篭められた魔石をそのまま帰還石にすることが出来るようになった。一手間削減は地味だけれども嬉しい。

 以前この方法で試したけど出来なかったから、わたしのスキルレベルが上がったからか、皆のスキルレベルが上がったからか、そんなところかな? ……ウルはまだ魔石に魔力を篭められないので作れないままだけれども。力が大きすぎるのも困るものなんだね。制御を頑張ってほしいところである。

 でもスキルレベルと言えば、旅先以外では毎日祈ってるフリッカが未だに帰還石を作れないから、神子限定アイテムなんだろうなぁ。


「こんにちは、リオン。精が出ますね」

「……っと、創造神様? こんにちは」


 あれこれと考えている隙に創造神がやって来ていたようだ。今回は降臨エフェクトがなかったのでちょっとビックリしてしまった。

 でも丁度いいや、せっかくだから本にんに聞いてみようっと。


「創造神様、帰還石の作成制限を取っ払う方法ってないです? 特に距離」


 わたしの唐突な質問に、創造神は苦笑を浮かべた。


「本来なら像は祈りをまとめてわたくしに届きやすくする役目と、私が降りる目印であって、そのような使い方をするものではないのですけれどもね」

「ご、ごめんなさい?」


 わたしが帰還石作成のためだけに建てた像にポツンと創造神が降臨した光景を想像してしまい、シュールさに笑う前に少しだけ申し訳ない気持ちになった。

 でもそれはそれ、これはこれ。

 便利過ぎて使わずにはいられない代物なのだ。何かあったらすぐに帰れると言う保証は心の余裕に繋がるし、不安定な旅暮らしをするより拠点でどっしりと構えたい。


「ふふ、責めてはいませんよ。リオンにとって良いようにしてください。……とは言え、距離の撤廃は難しいです」


 創造神の説明によると、わたしの予想通り目印が大地に刻まれて、その目印同士が近すぎると混線してしまう……と言うような話らしい。

 じゃあその目印の範囲を狭くする、取り除くのは出来ないのかに対しては、前者は目印としての強度が足りなくなり、後者は大地に悪影響を及ぼすかもしれないとのこと。

 うーん……後者は無理として前者なら……。


「創造神様の目印にはならなくても、わたしの帰還石の目印になれば解決する……?」

「そう……ですね」


 どう実現させるかまでは思いつかないけどポロっと呟いたアイデアに、創造神は曖昧な答えを返した。

 いやまぁ、うん、元々祈りを捧げるための像なのに、創造神に感知出来ない像を作るなんて矛盾してるよね。いっそ別の像の形に出来ないかな……?


「それにしても、過去の神子は誰もこの問題を解決してくれなかったんですね。今は住人が少ないのかもですけど、村と村の距離が近かったらスッと移動出来なくて不便じゃないです?」

「そもそもリオン以外は作れませんからね」

「…………はい?」


 わたし以外に、作れない?

 神子限定どころじゃなく……わたし限定……?


 想定外の事態に呆然と創造神を見つめていると、創造神は「あっ」と小さく口を開き、目を逸らした。

 ……わたしが知ったら不都合な事情!?


「い、いえ、そうではありませんよ?」


 わたしが考えていることを察したのか創造神は否定しているけど、だったら何故オロオロとしているんですかねぇ……。

 ジト目に変えて『どういうことですかね?』と目で訴えると、諦めたように溜息を吐きながら答えてくれた。


「リオンの体は私が用意したものであり……私の力の影響が大きいのでリオンには作成出来るのです」


 ふむん……?

 理屈はわかるけれども……微妙にズレてる気がする回答だなぁ。他に何か口ごもる理由がありそうだ。

 ……まぁ追及はやめておこう。わたしが帰還石を作成、使用することでそれこそ不都合が起こるようなら警告をしてくれるだろう。それがないのならば問題はないと言うことだ。


「……あぁ、私の用事を忘れるところでした。リオン、貴女がこれから目指す先に神子が居ます」

「えっ」


 あからさまな話題変更であったけど、内容が内容だけに聞き逃せないものだった。


「大きなオアシスのある、アイロと言う名の村です。その地に住む神子には近いうちリオンが訪れるかもしれませんと伝えておきましたので、もしもの時は協力をしてくださいね」

「わ、わかりました。……えっと、その村はどの辺りにありますか?」


 創造神は位置関係を思い出しているのか、少し上方に視線を向けてから。


「リオンがつい先日建てた像からそのまま東へ十日から十二日くらいでしょうか。ヒトの子の足だともっとズレはあるかもしれませんが……」


 確かに、空から現れる創造神からすると、徒歩だと何日掛かるかは計算しにくいのかもしれない。

 像からどの方向にどれくらいなのかはわかるようなので、迷った時はまた聞けばいいかな。


 そうして創造神は去って行った。

 逃げた……のではなく、単に忙しいだけだろうね。そんな中でもちょこちょこ様子を見に来てくれるのだから、感謝をしないと。

 ……と言うか、わたしの予定外な質問で手間を取らせてゴメンナサイ。



 その日の残りは、ウルに「休まないのか……?」と呆れたような視線と声を投げられながらもモノ作りにいそしむのだった。

 いやだって、せっかく鉱石を手に入れたのだから、アイテムを作るのは今度にするとしてもせめて精錬してインゴットにはしておきたいし? 食料とかの消耗品の補充は必須ですし?


「それに何よりジズーの羽根ですよ! 貴重な超高級素材! 現在のわたしのスキルレベルだと全然扱えないのがホント悔しいのでさっさとスキルレベル上げたい!」

「……そうか」


 わたしの力説にウルはいつも通り遠い目をするのかと思えば、今日はどことなくソワソワしている。何だろう?


「その……リオンは、我の鱗が欲しかったりするのか?」

「え? いっぱい持ってるよ?」

「……なん、だと……?」


 ……あっ、口が滑った。

 まるで先ほどわたしが創造神に向けたように胡乱げにウルがわたしを見て来るので、白状せざるをえなかった。


「えっと……たまに落ちてるから……つい……」

「……」


 実はゼファーの鱗と同じように、ウルの鱗も落ちているのだ。これもまだ扱えないけれど、貴重な素材なので拾ってしまうのは神子わたしの性なのである……。

 わたしからすれば素材なのだけれども……自分の鱗を素材扱いされては気分が良くないだろうし、本人からすれば抜け毛を拾い集められているようなものなのかもしれない。

 うん、すっごい気持ち悪いね! ごめんなさい!!


「……しょ、処分した方がいい……?」

「……いや、そのまま持ってても構わぬ」


 恐る恐るお伺いを立てて見れば、特に蔑んだような、気持ち悪がられるような目で見られることもなく、ホッとした。


「……我の鱗を使うのはよいが……変なモノは作ってくれるなよ……?」

「……き、肝に銘じておきます」


 それでも多少なりとも失望させてしまったのか、意気消沈した声で釘を刺されてしまうのであった。

 ……今夜はウルの好物を作ってフォローしておこう……。



 xxxxx



■ウルの鱗

 本来の力は失われているが、それでもなお硬く、いかなる物にも貫けぬ鎧であり、いかなる物をも砕く武器である。

 物理、魔法共に非常に高い耐性を持ち、扱うには困難を極める。


(情報が欠落しているが、リオンがその事実に気付くことはない)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ