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終末世界の開拓記  作者: なづきち
休暇中

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スライム素材で得たモノ

 クイーンスライム、それは名前の通りスライムの女王だ。女王蜂のスライム版と思ってもらえればよい。

 つまり、あのクイーンスライムは……どんどん子ども(スライム)を生むのだ。

 まさに今現在直面している。あの周囲のスライムは最初から居たのではない。……今、生まれているのだ。生まれ続けているのだ。

 これはヤバイ、とわたしはみんなに指示を出す。


「……そ、総員! 手段を問わないからとにかく殲滅!!」

「わかったのだ」

「りょ、了解!」

「キュ!」

「フィンも火魔法使っていいから! わたしが責任もって消す!」

「わ、わかったよぅ……!」


 スライムはフレイムスライムを除いて火魔法が弱点である。しかし火は森で使うと大変なことになるから事前に禁止を言い渡していたのだけれども、さすがにそれどころではなくなった。

 何が何でも殲滅スピードを速くせねば、こちらが飲み込まれてしまう!

 逃げればいいのでは、って? あんなモノ放置してたら、近くにあるアルネス村がどうなるかわからないからね。

 ……だから、倒さなければいけない。

 まぁどうしても危なくなったらわたしとウル以外は避難してもらうけれども。



「リオンさん、いくら何でも多すぎます!」

「……我もさすがにこれは少々骨であるな……」


 倒しても倒してもどんどこスライムは沸いてくるし、では元凶であるクイーンスライムを叩こうと思ってもスライムたちが邪魔をして上手く行かない。

 ゲーム時代のクイーンスライムは十体の分け身を作成し、その分け身を先に倒さねば本体の超々防御力が減らないと言う性質を持っていた。念の為ウルに火矢を投げてもらったけど、刺さっただけで溶けてしまったのでアステリアでも同じなのだろう。

 しかし、分け身を先に叩こうと思っても大量のスライムに混ざっててわかりにくいのだ。わたしがゲームで遭遇した時はもう災害みたいなものだから周囲に被害が出るのは仕方ないと割り切って、後退しながら魔法矢なりスクロールなり範囲攻撃で分け身ごとスライムたちを殲滅していた。

 現実で被害を甚大にするわけにも行かず範囲攻撃するのは最終手段として、地道にスライムを倒していっているものの、増殖が早くてなかなか分け身が倒せないでいる。ついうんざりとして「……どうしてこうなった」と呟いてしまったのは仕方のないことだ、と思いたいのだけれども、それは吐いてはいけない弱音だった。思い詰めさせるようなことを言ってはいけなかった。


「……私の、せいでしょうか……」


 鉄火場となってしまったこの状況にフリッカが震える声で零す。彼女も魔法を撃ってくれてはいるけれども精彩を欠き、本来の威力が出てないようにも見えた。

 ……マギスライムにあれだけ集られたのだ。クイーンスライムも自分がこの場に居るせいで現れたのではないか、と連想してしまったようだ。

 でも。


「それは違う」


 わたしは痺れてきた指で矢を放ちながら即座に否定する。

 「ですが」と言い募ろうとしたフリッカのセリフにあえてかぶせる。その先は言わせない。


「あんなモンスターが現れるなんて、神子わたしと創造神様の管理責任だ。きみのせいであるはずがない」


 わたしの知らないところでモンスターが暴れたとしても、わたしにはどうしようもないのはわかってる。わかってるけれども、フリッカを黙らせるために言う。そのためなら創造神だって巻き込ませてもらう。

 フリッカの思いも寄らぬことでモンスターが生まれたとしても、どうしようもないし、責任を取らせる気などない、と。

 ……背負うなと言ったのはフリッカ自身だ。それでも背負おうとするなら、わたしはそれを容赦なく奪う。


「それに万が一きみが切っ掛けなのだとしても、適性を増やさせたのはわたしだからね。結局はわたしの責任に繋がるんだよ」


 だから責任取って倒しますよ、っと。……へっぽこ神子だからみんなの力を借りることになるけどもね。

 あまり重い雰囲気にさせたくないので、最後はおどけるように肩を竦めながら言った。

 それが功を奏したのかはわからないけれど、フリッカは少しだけ肩の力が抜けたようだ。目を瞑り深呼吸をしてから、フレンドリファイアにならないよう位置を考えながら熱線ヒートレイの魔法を使用してスライムを倒し始めた。射程が短いのが難点だけど火属性の貫通魔法なので、まとめて倒すことが出来るやつだ。


「当たりさえすれば倒せるのですけれども、探すのが大変ですね……。どうにかして見渡しやすく出来れば良いのですが」

「……あ、それだ」

「?」


 ……うぬぅ、わたしもどうやら焦りから思考が鈍っていたらしい。フリッカの言葉にクイーンスライムの倒し方を今になって思いつく。まぁゲーム時代は力技が出来たからね……と誰に聞かせるでもない言い訳を頭に浮かべた。


「みんな、一度わたしの後ろまで下がって!」

「む?」


 少しでもスライムの数を減らしながらみんなが後退したところで。

 ズズン! と石ブロックを壁状に積んでスライムたちを圧し潰していった。石壁の向こう側でピチピチ跳ねる音がするけれどもスライムなどに壊されるわけもない。とは言えすぐに迂回なり登ってなり来るだろうからそこまで余裕があるわけでもない。


「ウルとリーゼはこのまま地上でスライムを倒してて。武器はこれ」

「うむ」

「うん、頑張るよ」


 その場で即刻熱線の矢を作成してウルに渡し、リーゼにも火属性槍を作成しておいた。穂先の質があまりよくないからすぐに壊れるけど、量だけはいくらでも作れるんですよフフフ。


「フィンはゼファーと一緒に空からクイーンの分け身を探して狙撃。倒しにくければウルかリーゼに頼んで」

「う、うん」

「フリッカはわたしと一緒に石ブロックで上に登って同じく分け身を狙撃。高く作れば早々スライムも登って来れないからね」

「わかりました」


 地上からは見つけにくくても、上空からであれば(埋もれてるのは別として)遥かに探しやすい。特にフィンとゼファーなら自在に空を動けるから十分に索敵の役割を果たしてくれた。

 それから程なくして分け身を殲滅し、無事にクイーンスライムを倒すことが出来た。そして再生産されなくなったスライムをちまちまと倒していって解決となるのだった。

 期せずしてクイーンスライムの素材が得られたのは僥倖だけど……しんどかったな。




「……で、リオンはここまでしてスライムゼリーで何を作りたかったのだ?」

「いや、クイーンに関しては完璧想定外なんだけどもね?」


 苦笑しながらわたしが作ったのは……クッションとマットレスである。綿はあるのだけれども、それ以上に座り心地寝心地が良くなる一品だ。

 え? 「そんなことに……?」って、ウルさんや、睡眠は超大事ですよ? 快適な睡眠は翌日のパフォーマンスの引き上げになりますよ?

 ついでに言えば、スライム素材部分に冷気の魔法が篭められた魔石を埋めることで冷感マットレスや保冷剤になる。ただ冷気の魔石を使用するよりもよっぽど効率が良いんだよね。夏になってもウルがくっ付いて寝るもんだから最近ちょっと暑くてさ……いや怒ってないけども。

 更に付け加えると、熱気の魔法を篭めるとカイロになるから冬場にも重宝しそうなんだよ。


 それにこれはまだ研究段階だ。可能性はまだまだ大いに広がっている。

 いずれ作るだろうゴーレム馬車の座面には絶対使用したいし。ちょっと固くしてパッキンとして使えば水漏れが防げるし。あぁ、箱の扉に貼り付けて冷気を抜けにくくさせれば冷蔵庫、冷凍庫になるよね。

 それからそれから――


「……リオン様が楽しそうで何よりです……」


 フリッカは非常に疲れた顔をしていたけど、マットレスは複雑な気分を抱きつつも気に入ってはくれたようだ。布で包んでいるからスライム素材そのものが見えてないのもあるのだろう。

 今回最大の被害者であるフリッカにすら有用と思ってもらえなかったら土下座する勢いだったよ。ふぅ。


 どうでもいいことだけど、ビーズ状に小さく大量に加工して人をダメにする巨大クッションを作って一階のみんなのくつろぎルームに置いておいたら、ゼファーがダメになっていた。野性はどこに行った。と言うかどこから入った。フィンが窓を開けた? あっはい。

 仕方ないのでゼファーの寝床に白竜を模した巨大クッションを作ってあげたらフィンに羨ましがられたのでもう一つ作り。更に、レグルスとリーゼがグロッソ村で話したらしく子どもたちが欲しがったので大量に作ることに。


「こ、子どもたちの人気がゼファー(クッション)に取られてしまうのでは……?」

「何を心配しているのだぬしは……」


 わたしの危機感(?)はウルに理解されなかったらしく、呆れられてしまったとさ。うぐぐ。




 なお、しばらく後に、フリッカと念の為にフィンを抜いた、わたし、ウル、レグルス、リーゼの『魔法何それおいしいの?』組で訪れてみたらマギスライムどころかその他スライムもあまり沸かなかったとさ。

 うーん……前回クイーンスライムを倒したことでスライムが寄り付きにくくなったのかな……? 次からどう入手したものかなぁ。

真相は、アルネス村がごたごたしてて長いことスライムを狩ってなかったから増殖した、です。


スライムで三話使うとは思ってませんでした(白目

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― 新着の感想 ―
[一言] やはり作ったか、人をダメにするクッションを……!! あとは美容用保湿パック、家の壁に撥水コーティングとして塗れる? あとは密着性があるなら、手動式ポンプでシュコシュコ血圧計の直接腕に巻く部…
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