交友は糾える縄の如し②
「三川君は何を飲みたい?」
校舎と体育館を繋ぐ渡り廊下。
その途中に設置された自販機の前で財布を開きつつ、背後を仰ぎ見た。
コイツまた身長が伸びたなと思いながら。
「奢ってくれんのか?」
「借りたものは即時返却。それが私の主義」
リボ払いで過去、痛い目に………などと愚痴を零したところで得にはならず。あれはサッサと忘れたい記憶だ。
「ねぇ。三川君との約束って何よ?」
ここに来るまで記憶を漁ってみたが、やはり思い当たらず。
スポーツドリンクを手渡しながら改めて問い質した。
「恋人の振りをするって、前に二人で決めたよな」
「それで昼休みに?」
「暇さえあれば会うというのが、恋人らしい行動だろ?」
去年のあの話、まだ続いていたのか。
そりゃ期限を決めなかったけどさ。
つーか、ここ最近そんな素振りは一切なかったし。
「それより栗田さん。どうしてアイツに喧嘩を売った?」
まるで一部始終を見ていたような口ぶり。
いつから見られていた?
首を捻りながら、自分用に買った飲み物を開封した。
「ムカついたから。ただ、それだけ」
「アノ日か?」
口に含んだ飲み物。危うく吹きそうになった。
「普通、そういうの女子に聞く?」
「悪いか? 女の気持ちを理解しろって、以前オレに言ったよな?」
そういや去年、そんな事を口にした気がする。
すっかり忘れていた。
「じゃぁ、そういう話題は女子に嫌われると憶えとけ」
「そうか。そいつは勉強になった」
わざとらしく嘯くや、肩を揺すりながら笑い出した。
………この唐変木が。
一瞬そう思うも、からかわれた可能性も否定出来なかった。
「栗田さんっ!」
「ん?」
突然、背後からの声。
「さっきは、ありがとう。僕のために気を遣ってくれて」
振り向くと、教室で使い走りを命じられた男子が、感謝とばかりに頭を下げた。
「確か、三和君だったよね」
演劇部との絡みで、彼とは何度か言葉を交わしていた。
「嫌ならハッキリと断った方が良いと思うけど」
「いや、実は嫌ってわけでもなくて。黒島君と一緒にいると、色々楽しいし」
見ると手元には、買い出しと思われるペットボトルが握られていた。
「そんなだから、角田さんにも良いようにコキ使われるのよ」
「そっちも僕としては嬉しい方でして」
「なんで?」
冗談かと思ったが、彼は照れ臭そうに笑っていた。
「彼女の演劇に掛ける情熱って凄いじゃないですか。そして、どこまでも明るく前向きなあの性格。僕は好きですよ♪」
「ポジティブだねぇ~」
角田さん。彼氏が欲しいとか言ってたけど。
案外、周囲の視線には無頓着なのだろうか。
それとも、選り好みしてるとか?
自販機へ追加の硬貨を投入しながら、何の利益にもならない事を暫し考えた。




