夢の果てに求めしは⑨
「由喜ちゃん青春してるねぇ~」
「気分的には針の莚だけどな」
自宅のソファーに深々と腰掛けつつ、溜息を吐き出した。
膝の上に乗せた、娘であり、今は義理姉の春佳を抱き締めながら。
「でも、学校へ行くのは嫌じゃないんでしょ?」
俺に凭れながら、春佳がチラリと顔を一瞥。
「そこは否定しない」
入学当初に比べたら随分マシになった。
何だかんだ友人も出来たし。
面倒という一点だけは今でも変わらないが。
「ちなみに由喜ちゃんはさぁ。わたしの胸をいつまで揉んでいるつもり?」
「気が済むまで」
背中から両手を回し、後ろから抱くような格好で乳房を両手で揉みまくり。
「自分のより大きくてムカつく」
「知らんがな。由喜ちゃん中学だから、きっと育つってば」
そうかな?
高校生になったら、サイズも多少は大きくなるか。
それまで現状維持というのは考え物ではある。
「つーか、いい加減許してよぉ。また続ける気?」
「昨日、逃げた分だけ利息が発生しておりますゆえ」
「それは謝ったじゃん」
今まで好き勝手、人の胸を揉んでおきながら何を言ってんだか。
「たまには揉まれる身にも……」
ん?
そういや……。
「春佳姉さん。彼氏との関係、どうなってるの?」
去年の夏頃に告白され交際中の筈なのだが。
最近、全く進展について報告がなかった。
「別れたよ」
「マジ?」
「話してなかった? 去年の秋に振った」
数ヶ月で破局かよ。
振ったという事は、コイツからって事だよなぁ。
「何が原因?」
「面倒だから」
「はぃ?」
「一日に十通くらいメールが飛んで来るわ。すぐに返信しないと機嫌が悪くなるわ。最初は仕方なくやってたけど、途中で飽きた」
ヤレヤレと言わんばかりに娘は肩を竦めた。
「そういう由喜ちゃんの方は、どうなのよ?」
「どうって?」
「同級生に学校で告られたんでしょ? どうして断ったの?」
「面倒だから」
「………由喜ちゃん。人の事を言えんの?」
それを指摘されると立つ瀬がない。
「春佳さんや。もしも付き合う事になったら、絶対お母さんは良い顔をしないと思うんだが」
旦那が中学生男子と交際。
普通は頭を抱える案件だと思う。
「そうかなぁ。むしろ興味を持つんじゃない?」
「へ? そう……なのか?」
「どっちかというと、クラスの女の子とキスする方がアウトじゃね?」
確かに、俺が元に戻った後を考えるなら判らなくもない。
もっとも、既婚者の中年男性と交際したい女子中学生など、微粒子レベルで存在するのか怪しい気がする。
「わたしとしては、由喜ちゃんに告った男子が気になるなぁ~。相手はどんな感じ?」
どんなと言われてもだな。
既に五人くらい振っているんだが。
「背が高くて、格闘技やってるような男臭いヤツ」
一番諦めの悪い男の事を口にした。
「イケメン?」
「顔は……」
あまり気にした事なかった。
「普通かなぁ。不細工じゃないけど」
女子によっては好みって子もいるだろう。
「画像とかは?」
「ないよ」
向こうは俺のを大量に持っているけどな。コスプレ姿の恥ずかしいヤツを。
「その彼氏、ウチに来る事ってないの? 由喜ちゃんの姉として、一回会っておかないとねぇ~」
「単に興味本位だろうが」
実は一回だけ玄関まで来ていたりする。
もしも。
三川君が春佳の姿を見たら。
容易にその光景が目蓋に浮かんだ。
実の姉妹と思われるくらい容姿が瓜二つ。
春佳を一目で気にいるだろうな。
炭酸飲料を飲んだらゲップが出るくらいの確率で。




