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夢の果てに求めしは①


「ぃだっ!」


 朝。

 目が覚めるなり、貫くような痛みに頭を抱えた。

 昨日から地味に疼いていたが、本格的なのが本日いらっしゃいましたか。

 薬まだあったよな?

 そう思いながら身を起こした直後。

 ヌルリと体内から流れ出る粘液。

 途端、股間に広がる生温かな感触。

 今回。

 量が多くね?

 こんな事もあろうかと、下着に生理用品を貼り付けていたのだが。

 横漏れしているだろう、これ。

 嫌なんだよなぁ~。

 朝からパンツ洗うの。

 まだ数回のみだが、これが何十年も続くとなると憂鬱な気分にもなる。

 男の体なら、こんな事は…………あったな。うん、あった。

 中学や高校の頃。アレな夢を見た後に、親に見つからないよう隠れて洗ったわ。

 赤色と白色。どちらの汚れがマシだろうか?

 世界広しとはいえ、こんな下らない事を考えるヤツは早々いやしないだろう。






「由喜ちゃん、起きるの早くない?」

「俺としては、もう少し寝ている予定だった」


 泡立つ洗剤。

 その中で生地の局部を揉み洗い。


「不意打ち喰らったの?」

「敷いては寝たんだよ。レギュラーではダメだった」

「判るわぁ~。わたしも何度か、やられてる」


 ありふれた姉妹の会話。誰も父と娘とは思うまい。


「春佳姉さん。今日は早番?」


 まだ時刻は朝六時前。


「うん。これから出勤」

「そっか」


 学生時代。ギリギリまで惰眠を貪り遅刻常習犯だった我が娘。

 今は始業の十分前に仕事場へ。

 成長したなと感慨深く思うのだが。


「ねぇ、春佳姉さん」

「なぁに? 由喜ちゃん」

「今、生理中なんだけど………」

「うん。知ってるよ?」


 春佳が男なら、まだしも、なのだが。


「今、胸が張って痛いから、揉むなってのっ!」


 俺が洗濯中で動けないのを良い事に、背後から手を回して来やがった。


「いやぁ、据え膳とかいうヤツでしょうか? 何もしないのは悪いかなぁ~って」

「良く言った。姉さん。夕方、コチラからも揉み返す」

「それは…」

「妹として、姉の胸を揉ませて戴きますから、よろしくっ! 逃げるなよっ!」






「あなた、ハンカチ」

「すまない」


 妻から手渡される花柄の布地。

 わざわざ買ったのだろうか。いつもの地味な色で俺は構わないのだが。


「忘れ物はない?」

「多分」

「私の胸、ひと揉みしていく?」

「珈琲飲む、みたいに言うな」


 ご丁寧に両手で持ち上げてるし。

 きっと春佳との会話を聞いていたのだろう。


「陽子の方は最近どうよ。仕事、上手くいってる?」

「ぼちぼちね。今週から忙しくなる感じ」

「じゃぁ、早めに帰って来るよ」


 洗濯とか少し溜まっているし。

 夕飯も手を抜いてばかりだしな。


「別に急がなくても良いわよ? もうすぐ文化祭じゃない。放課後に色々する事あるでしょ?」

「俺のやるべき事は、大体終わったよ」


 むしろ、家庭の事情にかこつけてサボりたいのだが。


「私の事は気にしなくても良いから。あなたの好きにして♪」

「もったいない、お言葉で」


 嬉しくもあり嬉しくもなし。

 真っ直ぐ帰宅するのが俺の望み………なんて言ったら、変な勘違いをされるに違いなく。


「じゃぁ、行って来ます」

「気を付けね」


 扉へと手を伸ばした矢先。

 忘れ物と不意に手を掴まれ、抱き締められ、ついでに唇を奪われた。

 ふと思う。

 妻は少女の俺と、男の俺。

 果たして、どちらの姿を望むのだろうか。


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