入学試験 Part2
一年もの長い間、本当に遅くなってしまいました。本当に申し訳ありません。
もっと早くに再開する予定でしたが3月からコロナの影響で本業の医療業務がとてもシビアでした…言い訳良くないですね。すいません。
今月から週1投稿で再開していきます。
今度は途切れない様に頑張りますm(_ _)m
よろしくお願い致します。 Light
クレーターと化した地面を茫然と見つめるレオナールとルベルの両名。
そんな二人の反応を他所に魔法練兵場の扉が勢い良く開かれた。
「な、何事だ!?」
ルベルは、ハッと振り返り大声を上げて入室してきた男に視線を向けると慌てた様子で返答した。
「ゴルグ副学園長!!何故こちらに!?」
二人に歩みよる男ーーゴルグは、その視線をクレーター内に残る的に移すと訝しむ様子で声を漏らす。
「999……おい、何が起こった?」
「は、はい……それが、この者の魔力測定試験を行ったのですが……」
ルベルは、そう息を呑む様にレオナールに視線を移しつつ事のあらましとレオナールの素性を受験票を用いて説明する。
ゴルグは、その視線に釣られる様にレオナールを見つめ話を聴き終えると豪快な笑みを浮かべ声を発した。
「ガハハハハハッ……はぁ…馬鹿馬鹿しい。貴様は、私を謀っているのか?なにか?英雄の子だが知らんが成り上がり貴族風情のこの小僧が、この惨状を引き起こしたとでもいうつもりか?」
ゴルグは、先程とは真逆の冷徹な表情を浮かべ声を発する。
「ですが、私はこの目で……!!」
「ええい、もうよい。こんな学生にもなっていない小僧に何が出来ると言うのだ。単に測定魔具が暴発したというだけであろう。……これだから下賎な平民出身というのは、学がなく反吐が出る。栄誉あるこの学園において平民の教師なんぞ不要と何度学園長に進言したことか……」
「……っ。申し訳ありません。」
ルベルは、ゴルグの見下した対応に拳を握り締めながら謝罪する。
ゴルグは、そんなルベルの態度を鼻で笑いレオナールに声を掛けた。
「おい小僧。もう一度試験を行ってやる。このまま平民に任せても良いが折角多忙な私が来てやったのだ。どれ……クレーターになったという腕前というのを観てやろうではないか。」
「……分かりました。」
ゴルグが嘲笑を浮かべ見下す視線を送る中、レオナールは眉を顰め了承意を伝える。
ルベルによって新たな的が用意され的から離れた所定の位置に立つレオナール。
そんなレオナールにウェントス達が念話で語り掛ける。
『主、どうするの?』
『ん?どうするって?』
『ウェントスが言いたいのは、本気でやるのかってことだろ?勿論、本気でやるに決まってるよな?』
『イグニス。貴方は、少し黙りなさい。』
『あはは……ボクは、少し手を抜いた方がいいんじゃないかなって思うかな。』
『おいらも同意見なんだな〜。』
『……………僕も。』
『脳筋は、置いといて……確かにあのM字ハゲもといゴルグだっけ?あの人の態度は、正直思う所があるけど全力を出すべきじゃないかな。折角のチャンスだし今後の事を考えて無駄に目立たない方がいいだろ?」
『そうじゃのぉ。儂も皆や主に賛成じゃな。儂らのことは、アリウス達からも内密にと話しておったし特別目立つことをすることもなかろう。』
『だよな。ある程度の力を抜いて試験を受けることにするよ。』
念話で語り終わる丁度その時、ゴルグがレオナールに苛立つ様子で声を掛ける。
「おい、何をしている?準備が出来たならさっさと始めろ。」
「申し訳ありません。」
「チッ……ルベル。」
ゴルグの指摘に対し軽く会釈をしつつ謝罪するレオナール。
そんなレオナールの態度にさらに表情を歪め、ゴルグがルベルに視線を送り呼び掛ける。
「はい。では、再度魔力測定試験を執り行う。始めっ!」
レオナールは、ルベルの開始の合図と共に瞬時に魔力を練り上げる。銃を打つかの様に突き出した指先に小さな青い灯火を作り出すと一筋の光線の如く打ち出した。
シュッ……ボォォォォォ!!
着弾すると同時に激しく燃え上がる炎が的を包み込む。
激しく燃え上がる的に皆が呆気に取られた様に見つめる中、的に備え付けられた魔具の計測が終わり測定値が叩き出された。
「おい……ルベル。これは、私の目がおかしくなったのか?」
「いえ、おそらく私も同じ数値が見えているかと…」
二人が見つめる先ーー燃え上がる的に映し出される数値を見つめ、ゴルグとルベルは淡々と声を漏らす。
『ねぇ、主?』
『どうした?』
『これは、どういう意図があったのかな?』
『そうだな。結論から言うと…』
『言うと?』
『俺は、自分の力を見誤っていたみたいだ……』
レオナールは、念話でウェントスと話しながら視線を的に留めると呟くようにさらに声を発する。
「全力で999だったのに……半分も力を出してないのに、また999が出るなんて誰が思うんだよ……」
力無く的の数値を見つめるレオナール。
そんなレオナールにルーメンが語り掛ける。
『おそらく主の先程の全力は、限界測定値を遥かに越えておったのじゃな。』
『どういうことだ?』
『つまり、今回の結果で主が半分の力も出していないということは、先程の結果の際に理論上2000以上の測定結果があったということじゃよ。のう、アクアよ。』
『そうですね。主の魔力は、私達との契約を機に日々増しています。そもそも考えてみれば、あの測定魔具が主の全力の魔力を受け切れるはずが無かったということ。要は、あの結果が……主の全力が999という数値に収まるはずが無いということを私達も考えるべきでしたね。』
『なるほどな。取り敢えず、向こうの出方次第ということだな。』
アクアは、そう諭す様に自らな考えを語る。
レオナールは、その見解に納得し視線を口論し合うゴルグとルベルに向けた。
「これは、どういうことだ!」
「先程私はお伝えしたでしょう!これが彼の実力なのです!やはり先程の結果は、間違いではなかったのです!」
「黙れ黙れ!そんなことがあって堪るか!たかが召喚士風情にこんなこ………召喚士…まさか?」
ゴルグは、顎髭に手を添え召喚士の特性をふと思い出す。
召喚士ーーそれは、様々職業がある中で最もハズレと称される職業。召喚士は、召喚した魔物と契約する際の過酷な条件から一般的に大成しない存在として扱われる。だが、そんな召喚士にとって例外が存在する。それは、上位の魔物と契約が成った場合だ。
そもそも魔物との契約が成立した場合、召喚士と魔物との間でパスが繋がり様々な恩恵を受けることができる。恩恵の主だったものとして、経験値の分配があげられるのだが……その他の恩恵については、一般的に低級の魔物と契約する例が多い為実感するに至らない。中位以上に位置付けされる魔物と契約することによって耐性獲得、魔力の増加等の様々な契約した魔物に応じた恩恵が得られるのだ。
過去の記録を遡ってみても上位の魔物と契約を成したとされる偉人は存在自体が眉唾物とされている。
しかし、それを覆す存在がつい先日王都に現れた。
ーーそう、七龍の存在だ。
上位の魔物と…それも複数体の魔物と契約したとあれば、その恩恵は計り知れない。
ゴルグの脳裏には、正体不明とされる七龍の契約者の存在がレオナールと結び付き震える声色でレオナールに口を開く。
「お、おい。お前は、契約している魔物は……いるのか?」
レオナールは、俯き視線を逸らすと首を振り答える。
「いえ、いません。私は、過去に契約を試みたものの失敗しました。それ以降、失敗の恐怖から召喚を行わず己の魔力の研鑽に勤めて参りました。」
「そ、そうか……そうだろうな。私は、何を考えていたのか…こんな年端もいかない小僧がまともな契約できるはずがないではないか。」
ゴルグが安堵の表情を浮かべ呟くと、さらに声を発する。
「では、やはりこの計測は無効だ。ルベル、次の受験生の試験を一時止めて全ての魔具の点検をしろ。二つも続くということは、何かしらの不具合があるのだろう。」
「はい、分かりました。しかし、グリューゲルの件は如何致しましょう?」
ゴルグがルベルに点検を促す声を掛ける。
ルベルは、そんなゴルグに対し了承の意を伝えると共に視線をレオナールに移し意見を伺った。
「そうだな……私がこの目で見た内容で評価しよう。魔具が壊れて時間も押しているのだ。一人に時間を費やすものではない。」
「はい、分かりました。それで、評価は?」
「そうだな…F判定としておけ。」
そう言い残すと足早に魔法練兵場を去るゴルグ。
残されたルベルは、レオナールに振り向き申し訳なさそうに口を開く。
「あの魔法がF判定の訳がないだろう……。グリューゲル、後の会議で私からも意見を可能な限り通しておく。今日は、もう帰りなさい。結果は、後日書面で発送されるからな。」
「……はい。ありがとうございました。」
会釈をして魔法練兵場を退室するレオナール。
そんなレオナールにテラが話し掛ける。
『主の演技が成長してるんだな。』
『ほっとけ!でもまぁ…結果オーライ?』
そう心の内で呟くレオナール。
こうして入学試験を終え帰宅するのだった。
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次回更新
仕事の関係で誤字脱字修正がなかなか出来ないので9日21時にさせていただきますm(_ _)m
今月の更新日は、9.17.25.31日を予定しておりますm(_ _)




