東部動乱 その後 Part3
お久しぶりです。Lightです。
1年もの長い間、更新できず本当に申し訳ありません。
ブックマークも2000件程減りましたが、それでも尚待っていてくださった方々、本当にありがとうございます。
ーー◇王国練兵場◇ーー
「待たせたようだな。すまない。」
練兵場に到着したと同時に、ルクスは、先に居合わせた者達へ向けて声を掛けた。
「いえ、我々も先程到着したところです。それよりも陛下……急を要する要件とは、何事ですか?それに、軍議室でなく何故このようなところに?」
ルクスの発言に対し、その場にいた者達の代表として思案の表情を浮かべる男が返答する。
「まぁ待て、一部来ていない者もいるようだが仕方あるまい。先に順を追って説明しよう。まず、シオンや貴公らを呼んだ件についてだが、それは先の戦争について貴公らと共有すべきことができたからに他ならない。」
「共有すべきことですか?」
ルクスに質問した人物ーーシオンは、訝しむ表情を浮かべ更にルクスに発言を促した。
「あぁ。王国を守護する要とも言うべき貴公らに打ち明けるべき話だ。本来であれば、詳細な事実関係を把握した後招集するべきことだと思ったのだが、皆が王都にいるこの現状を無碍にすることもないと思ってな。」
練兵場にいる者達を見渡しながら発言するルクスに対し、他の者達ーーフレンとレインもまたそれぞれが声を発する。
「なるほど。四方に散る我々が一堂に会するこの状況を有効活用という訳ですか。確かに効率的ですね。」
「そうですな。我々も領地から王都に呼び戻されたとあっては、たまったものではないですし理に適っている。して陛下、その話とは、如何様なものなのですか?」
「うむ。その話をする上で、貴公らに紹介したい者達がいるのだ……ジーク。」
ルクスが左後方に顔を向けジークに声を掛けると、ジークが短く呼応しルクスの左後方並び立った。
「知らぬ者は居ないと思うが、改めて紹介しよう。今回の戦で、グラエスを討ち取ったジークだ。」
「陛下より御紹介を賜りました。ジーク・フォン・グリューゲルに御座います。」
右手を胸に添え軽く頭を垂れるような所作をとるジークに対し、シオンが感嘆の声を挙げ手を差し伸べながら返答する。
「ほぅ、貴公があの豪剣か……。私は、陛下から公爵の爵位を賜っているシオン・フォン・フォラムだ。宜しく頼む。先の戦では、早々にエイルを討ち取ってくれたこと感謝するぞ。貴公の活躍のお陰でこちらの被害は、最小限に収まったと聞いている。その手腕、伊達ではないようだな。」
「勿体無きお言葉恐れ入ります。しかし、私個人のみの力では有りません。仲間達ありきの成果だと思っております。その点は、訂正させていただきたく思います。」
「ハッハッハッ!殊勝な心掛けですな。手柄を我が物としないとは、実に欲が無い。だが、そんな貴公の考え……私は、嫌いでは無いぞ。私は、レイン。レイン・フォン・シュルク公爵だ。陛下より北方の守護を任されている。戦争では、世話になったな。貴公の活躍が無ければ我が中央軍の被害は、目に見えた結果になっていただろう。良くやってくれた。」
「そして、私が南部を預かるフレン・フォン・ファルアだ。貴公の武勇は、以前より耳にしていたが、やはり噂と申し分ない実力だったようだな。貴公のお陰で右軍も助かったのも事実、礼を言う。因みに私もこのシュルク卿やフォラム卿と同じく公爵だ。よろしく頼む。」
「こちらこそ御目にかかれて光栄です。」
シオンへの挨拶を終え安堵の表情を浮かべるジークに対し、休む間も無くレインやフレンから手を差し伸べられ声を掛けられるジーク。
そんな父の姿を見守りつつ、レオナールは、一人ポツリと声を漏らす。
「この人達が、あの四大貴族……。」
四大貴族ーーそれは、アーリナル王国建国当時より国を支える重臣であり、その全てが過去王弟の婿入りや王女の嫁入りといった縁談によって王家と遠からぬ親戚筋に当たる者達である。少なからず王家の血を引いている彼等を人は、四大貴族と呼んでいた。そんな彼等は、王国を四方から守る為それぞれが広大な領地を与えられ領主として事を成しているのだ。
そんな彼等を呆然と見つめるレオナールを横目にルクスは、フッと微笑を浮かべ声を発する。
「そうだ。まだ来ていない者も居るが、この者達が我が信頼を寄せる者達だ。四大貴族と呼ばれる最後の公爵家は、グラエスであったが、仮に今回の謀反が無く生きておってもここには呼んでおらん安心しろ。あやつの黒い噂は、以前より数多く上がっておったのだ。そんないつ牙を剥くとも知れん奴を呼ぶ訳もなかろう。」
「なるほど、それなら良かった……って、申し訳ありません!」
「ハハハ。いや構わん。子供が気にするでない。」
レオナールは、安堵の声を漏らした直後、自らの失言に対し謝罪の意を述べる。
対してルクスは、豪快な笑い声を挙げ笑みを浮かべていた。
そんな二人を側で観ていたレインが、釣られるように笑い声を挙げ声を発する。
「ハハハ、陛下にそのような物言いをするとは、将来大物になりますな。ところで、彼等は?見た所グリューゲル卿の身内かと思いますが?」
「ああ、その通りだ……加えて言うと、貴公等を呼んだ1番の理由は、この息子にあるのだ。」
「ん?」
「は?」
「え?」
ルクスの予期せぬ言葉にレイン、シオン、フレンが順番に疑問の声を漏らす。
そんな中、シオンが眉を顰めて続けて声を発した。
「どういう意味ですか?すいません、陛下。意味が良くわからないのですが?本題が、その少年なのですか?」
「ああ、そうだ。実は、今回の戦争でーー」
ルクスがレオナールの事を説明しようとした矢先、後方に位置する扉が勢い良く開かれる。
その場に居た全員の目が扉に移り、声を詰まらせるルクス。
そんなルクスに対し、扉から現れた二人ーーデュークとナイゼルは、揃って臣下の礼を取り奏上した。
「陛下、参上が遅くなり誠に申し訳有りません!デューク・フォン・ジルベルト只今参上致しました。」
「私も遅くなり申し訳有りません。ナイゼル・フォン・フォード只今参上致しました。」
「我が急に呼び立てたのだ、気にするでない。」
二人の謝罪に対し、微笑を浮かべ応えるルクス。
ルクスは、ジークに振り返り続けて声を発する。
「ジーク、この者達も紹介しよう。デュークは、当分グラエスに代わり東部の要になってもらう人材だ。そして、ナイゼルに至っては、宰相兼軍務の総括として、今尚王国の頭脳として我を支えてくれている。この者達も同席させてほしいのだが構わないか?」
ルクスの言葉に、そっとレオナールを見つめるジーク。
そんなジークの視線にレオナールが小さく頷くと、ジークは、ルクスに返答する。
「はい、陛下の御心のままに。ジルベルト卿、フォード卿、ジーク・フォン・グリューゲルにございます。御目にかかれて光栄です。」
「おぉ!其方は、豪剣ではないか!戦争では、世話になったな。貴公の活躍は、目を見張るものがあったぞ。流石、豪剣と言うべきか……おっと、申し訳ありません。そんな話は後でしたな。私共は、何故このようなところに呼ばれたのでしょうか?」
錚々たる顔触れの者達が集うこの場を見回しながら、疑問の声を挙げるデューク。
そして、そんなデュークに釣られるようにナイゼルもまた辺りを見回すと、ナイゼルは、一人得心を得た表情を浮かべアリウスに声を掛けた。
「……なるほど、そういう事ですか。殿下、私達が呼ばれた理由と言うのは、殿下があの時仰っていた件という理由ですね?」
アリウスは、顎に右手を添えつつ語るナイゼルの言動に驚きの表情を浮かべ返答する。
「流石ナイゼルというべきだな。あぁ、その通りだ。天幕では、父上にも通していなかったが為に話せなかったが、今回は別だ。今から父上が説明する内容は、政を行う上で皆に知っていて貰わねば彼等の扱いに困る話になる。」
「彼等ですと?それに、扱いに困る話とは?」
「まぁ待て、ナイゼル。今から説明するところだ。これで我が信頼する者達は、皆揃った。これより話す内容については、箝口令を敷く。我が許可しない限り一族の者達にも他言無用だ。我が王国にとって重要な事案だと認識して欲しい。」
「「「「「……ハッ!」」」」」
アリウスとナイゼルの話に割り込むように声を発するルクス。
そんなルクスに対し、練兵場にいる者達は揃って臣下の礼を取り声を発した。
「うむ、では早速話に入ろう。先の戦争について貴公等は、おそらく七頭の属性龍の存在と召喚師の存在を聞いている事と思う。彼等の介入によって我々は、魔族が居たにも関わらず被害が皆無であった。そして、その魔族とグラエス卿を討ち取ったのが、ここにいるジークだ……ここまでの情報は、相違ないか?」
「はい。私どもが把握している情報は、似たようなものです。ですが、些か腑に落ちない報告も聞いております。ーーですよね?シュルク卿。」
「はい、フォラム卿の仰る通りです。私は、中央軍の長として戦場に居ました。荒れ狂う暴風と重力によって近付くことが困難でしたが、遠目で戦闘を見ていても腑に落ちない点があります。」
「腑に落ちない……とな?」
「はい、それは、魔法です。あの戦闘では、遠目で見ていても分かる程の高レベルの魔法が使われておりました。ーーですが、本陣の報告では、魔法を使えない筈のグリューゲル卿が討ち取ったという報告しか聞いておりません。私は、失礼ながらグリューゲル卿の他に誰かいたのではないか?そう愚考し情報を集めたのですが、部下の報告でも不確かな情報ばかりで詳細が掴めておりません。」
「うむ。他にあるか?」
ルクスは、レインの発言を受け他に意見がないか皆を見渡しながら声を発する。
そして、皆からの意見が出ないこと確認すると小さく溜息を吐き話を続けた。
「やはり現場で見ていた者達には、隠しようがないというわけか。実は、その件について詳細を貴公等に伝える為にここへ呼んだのだ。あの戦争において、グラエス卿を討ち取ったのは、ジークで間違いない。……だが、魔族を討ち取った者は、別にいるということだ。」
「なっ!?やはりそうだったのですね!?では、一体誰が魔族を屠っ……」
レインが咄嗟に声を発すると、シオンがレインの発言を手で制し、訝しむ表情を浮かべつつ声を発する。
「……それが、その子だと言うのですか?陛下。」
「あぁ、その通りだ。この者、レオナールが魔族を討ち取ったのだ。」
ルクスの発言を受け、一瞬にして静けさが漂う場内。
そんな中、力の無い笑い声を挙げ信じられないと言わんばかりにレインは、疑問を声を挙げる。
「あははは……。陛下も御冗談を仰られるんですな。こんな子供に何が出来ようというのですか?それなら、グリューゲル卿の奥方が屠ったという方が信憑性がありませんか?」
「そう……で、すね。グリューゲル卿の奥方が高位の魔法使いというのは、有名な話ですし、それなら可能性として頷ける部分がーー。」
レインの発言にフレンがそれなら納得出来ると声を挙げようとすると、ナイゼルが空かさず自らの考えを声に発する。
「ですが、この状況下で陛下が御冗談を言う必要がありますかな?」
再び静まり返る場内。
「それは……。」
「では、という事は……」
レインとフレンが声を詰まらすと同時に皆の視線がゆっくりとレオナールに集まると、ルクスが小さく溜息を吐き声を発する。
「皆の反応は、当然のことだろう。実際、我も到底信じられる内容ではなかったからな。」
「では何故陛下は、信じられたのですか?」
「そうだな。どう説明すべきか……龍王種に話してもらうのも一考か……。」
ルクスは、顎に手を添え思案の表情を浮かべつつレインに語ると、話を切り替えるようにレオナールに声を掛ける。
「それよりも、レオナール……まず、彼等にステータスを見せてやってくれないか?」
「はっ、畏まりました。これが、私のステータスです。」
レオナールは、胸元から鑑定結果を記された紙を取り出しつつシオンに歩み寄り手渡す。
名前 :レオナール・フォン・グリューゲル
性別 :男
年齢 :11
種族 :人族
レベル:35
職業:召喚士
スキル:召喚術レベル10
【火龍王 イグニス】
【水龍王 アクア 】
【地龍王 テラ】
【風龍王 ウェントス】
【雷龍王 フルメン 】
【光龍王 ルーメン】
【闇龍王 テネブラエ】
大剣術レベル8
盾術レベル7
火魔法レベル8
水魔法レベル7
風魔法レベル7
地魔法レベル8
雷魔法レベル7
光魔法レベル7
闇魔法レベル7
称号 :グリューゲル家嫡男
「…………ん?」
予想外の内容に食い入るように鑑定結果を見つめるシオン。
そんな不思議な表情を浮かべるシオンを横目に、他の者達も手元にある鑑定結果を覗き込む。
「「「「…………。」」」」
一同が言葉を失い呆然と立ち尽くす中、恐る恐るシオンがルクスを見つめ声を発する。
「陛下、これは、なんですか?」
一同の視線がルクスに再度集中すると、ルクスは徐ろに返答する。
「到底信じられるものではないだろう。だが、偽りのない事実だ。」
「こんなことが、あり得るのですか……。」
絞り出すように声を発するシオン。
他の者達もまた信じられないと言わんばかりにレオナールを見つめる。
ある者は、神域に達しているスキルレベルに驚愕し、またある者は、11歳と思えないレベルや様々なスキルを習得している事実に声を詰まらせる。
皆が真実なのか問い質したい思いを抱える中、王自らが事実だと認識していることに返答の余地が無く、あるがままの事実に皆が一様に驚愕した。
ルクスは、そんな者達を見つめながら苦笑を浮かべ言葉を続ける。
「皆の反応は、想定の範囲内と言える。そこでだ、レオナール。この場に龍王種を呼び出して欲しいのだが頼めるか?」
「はい。大丈夫です。」
そう言いつつ開けた場所にレオナールは、歩を進める。
「さぁみんな、来てくれ!」
レオナールの掛け声と共に七つの巨大な魔法陣が地面に浮かび上がった。
契約者を囲む様に展開される魔法陣……そのそれぞれが各属性を象徴する赤、青、緑、茶、黄、黒、白といった七つの光の柱が立ち昇る。
「……っ!?」
場の誰かが激しい光の奔流に息を飲むように声を漏らす。
正に圧巻。その言葉以上に適切な言葉は出てこないだろう。
ーーそう、光の波が納まったそこには、レオナールを……契約者を護るように身を寄せる七龍の姿があったのだ。
数少ない読者の皆様の為にも完結までまだまだ長いですが、真摯に取り組んでいきたいと思っております。よろしくお願い致します。Light
もしよろしければ、モチベーションアップに繋がりますので、評価と、勝手に小説家ランキングに投票よろしくお願いいたします。
追記
3月1日仕事終わりに文章確認して投稿する予定です。22〜23時頃更新いたします。




