東部動乱 その後Part1
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これからは、章の終わりに向けて話をまとめていきます。
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皆様の意見を真摯に受け止め頑張っていきたいと思ってますので、これからもよろしくお願いします。
ーー◇アーリナル王国王都ルディオン◇ーー
グラエス公爵家を中心とした東部貴族の反乱から数日経った頃……ここルディオンにあるとある酒場では、様々な人々が集い笑い声を上げていた。
そんな酒場の一角に座る男達もまた人々と同様に強烈な喧騒に乗じて酒を酌み交わしていた。
「では、王国軍の勝利と我等がアーリナル王国の今後の繁栄を願って乾杯!」
「「「乾杯!」」」
テーブルの中心でジョッキを打つけた音が鳴り響き、皆が一様にエールを飲み干す。すると、その中の一人の男がふと声を漏らした。
「カァーッ……美味ぇ!生き返るっつーのは、まさにこのことだな。戦終わりに飲むエールが、この世で一番美味ぇ気がするのは俺だけか?」
「ガハハ、違ぇねぇ!魔物でも戦争でも死線を乗り越えた先にある酒ってもんは、この上ない味に昇華するってもんよ。今頃、上等な酒を飲んでる商人や貴族様ってのは居るんだろうが、俺ら平民にとっちゃぁ安酒で十分……楽しく酔えりゃぁ良いって事よ!……それにしても、まさかまたこの四人で酒を飲めるってぇのは、本当に奇跡としか思えねぇな。」
「ですね……今回の戦争は、一言で言うと異様でしたからね。特にあの正気を失っていた若い冒険者達の並々ならない強さには舌を巻きました。」
「あの強さには、確かに驚いたな。正直な話、俺の魔法じゃ手も足も出なかった…… あの龍達の加勢がなかったらどうなっていたかと考えると身の毛もよだつって話だ。それにしても、あの龍達が敵じゃなくて心底良かったと思えるよ。」
「だな。あれ程の属性龍だ……一頭でも従魔にしたというだけでも信じられねぇのに七頭も従魔にしていたみてぇだからな。噂の話だと、今は無き某国の王子で情報が隠匿されているSランク冒険者らしいぞ?国許から逃げ落ちる際に殿下に助けられて恩義を感じ右腕となったとかなんとか……。」
「え?俺が聞いた話だと、何処かにあると言われる龍人族の隠れ里の者じゃなかったのか?」
「いやいや、私の聞いた話だと建国当時から王国を裏から支える影の一族ーー普段は、平民のふりをしているが非常時に姿を現す守護者の一族と聞きましたよ?その一族の当主が代々守護龍と契約しているとか。」
「あ?俺が聞いたのは、神の御使だと聞いたぞ?実際、俺もあの光龍様に無くなった筈の手足を治してもらったしな。見るも無惨だった死者が蘇生したって話もあるし……中には、生き返らなかった者もいたから『俺は、龍神様に選ばれたんだ!』っていう奴も出る始末、終いに巷じゃあ龍神教っていう宗教が生まれているらしいぞ?」
「……は?みんなバラバラじゃねぇか。どれが本当の話なんだ?」
「あくまで噂ですからね。どれが本当かなんて分からないでしょう?確かな情報としては、国の……いや、アリウス殿下の預かり知る所ということですかね。」
「そういうことだな。……それにしても、あの龍達の契約者が空から言っていた話って本当なのか?」
「あの話?ああ、魔族がいたって話か?その話なら本当らしいぞ?俺の知り合いが中央軍にいたんだが、そいつの話だと幻術や高位の魔法を使って多くの者達が殺されたらしい。」
「はっ!?あの話って本当だったのか!?てっきり俺は、魔族の様に強い手練れがいたって事かと思っていたんだが本当にいたのか……確かグリューゲル卿がその魔族とグラエス卿を討ち取ったって言ってたよな。噂じゃ遠目で見ても高位魔法の攻防があったって聞いたぞ?グリューゲル卿と言えば【豪剣】とまで称される剣の担い手だろ?どういうことなんだ?」
「それこそ知らねぇよ。でも、グリューゲル卿が魔族とグラエス卿の首を持って殿下に御目通りしたというのは多くの兵士が見た事実らしい。詳細は、今後国王様から発表されるだろうよ。まあ本当なら陞爵ものじゃないか?」
「でしょうね。可能性は十分あるかと。なんでもグラエス公爵家がお取り潰しになるようですよ?それと、反乱に加担した者達の一部が爵位の降格や賠償金が科せられるようです。魔族が裏でグラエス卿を操っていたという事実があったので一族の死刑は免れ、他の貴族や兵士もグラエス卿に家族を人質にされていたという証言が多くて情状酌量の余地ありということになったようです。」
「なんだよそれ……一部しか罰を受けていないのか?えらく甘くないか?」
「まぁ東部は、帝国との要ですし……全てを罰すると国の防衛が成り立たなくなるという見解でしょうね。逆に貴族達からすると、それくらいの罪で助かったことで王家に忠誠を誓う者が多くなったとかなんとか。」
「はぁ?現金な貴族様だな。まぁ俺ら平民には関わりないことか。」
「そういうことでしょうね。」
四人の男達が、各々耳にした話を噂する夕暮れ時の店内ーー隣の席に座っていた住民が、その話を耳にし更に噂が誇張され拡まるのは、また別の話……。
ーー◇アーリナル王国王城(王族専用サロン)◇ーー
酒場にて様々な噂が流れている時より少し時間を遡る。
レオナールは、国王の勅命によって父ジークと母ソフィアに連れられ王城にーーそれも、王族専用サロンに通されていた。
「ええと、父さ……いや、父上母上……何故私達は、こんな所に居るのでしょうか?」
周囲を高級な絵画や壺等の豪華絢爛な調度品に囲まれ、如何にも高級だと言わんばかりの刺繍の入ったふかふかのソファーに座り硬直するレオナール。
そんなレオナールを挟むようにジークとソフィアは、緊張した面持ちで腰を掛けていた。
「それは、お前がよく知っているだろう?例の件に決まっているだろう。」
「え?例の件って何?レオ、何をしたの?」
ジークの言葉に対し、ソフィアは疑問の表情を浮かべ声を発する。
ーーそう、実のところソフィアは、まだレオナールの一件を知らないのだ。というのも、レオナールは、血で汚れ穴の空いた服装を怒られこそしたもののルーメンの背に乗ってその日の内に王都に帰ったことでソフィアに戦争に参加したとは気付かれなかったのだ。
レオナールは、ジークが帰ってきたら自らのステータスの一件や戦争に参加した経緯を二人に説明しようと思っていたのだが、凱旋しジークが帰って来たと思った直後説明する間もなく王城に呼び出されたためソフィアが知る筈もなかったのだ。
「ですよね……。あの母上、実は、ですね……。」
そんなソフィアに説明しようとしたその時、豪華に装飾されている扉が開かれる。
「すまぬな、少し待たせたようだ。」
そう言葉を発するのは、威厳のある精悍な顔付きをした金髪蒼眼の男ーー国王ルクス・ファウスト・アーリナルその人であった。
「「「…………っ!!」」」
親子三名揃って慌てて立ち上がり頭を垂れようとしたその時、さらにルクスは言葉を続ける。
「いや、そのままで良い。ここは、公式の場でないのだ。」
「いや、しかし……!?」
ジークは、そんな国王ルクスの言葉を鵜呑みにするわけにもいかず声を発すると、更にその後方から見知った声が聞こえてきた。
「グリューゲル卿。父上が良いと言っているんだ。とにかく、安心して座ってくれ。」
そう言い放った男ーーアリウスは、笑みを浮かべながらジーク達に着席を促す。
「殿下まで……分かりました。失礼致します。」
ジークは、そう応えるとレオナールとソフィアに目を配り着席した。
ジーク達と脚の低いテーブルを挟み向かい合う様にして座るルクスとアリウス。そんな重い空気の中、ルクスは用件を述べる。
「お主らを呼んだのは、他でもない先の反乱の件だ。先程、アリウスに事の詳細を聞いたのだが、我に取っても信じ難い内容だったのでな。この場所に呼んだのは、認識阻害の魔道具を配置しているからだ。仮に本当の話であったとしても話が漏れ出る心配が無いから安心してくれ。では早速、話を聞かせてもらいたい。」
「やはり、その件でしたか……。実際のところ、私も先日知ったばかりですので詳細を知りません。勿論妻も知らぬことと思います。ですので……レオ。」
ジークは、ルクスの質問に対し腑に落ちた表情を浮かべ声を発する。そして、レオナールの名を呼び発言を促す。
「はい。今回の件の前に私が彼等を召喚した経緯をご説明します。事の始まりはーー。」
レオナールは、ジークに促され自らの経緯をルクスに説明する。
龍達を召喚した時のこと、神託の時のこと、アリウスと出会いティアやリリルを含め特訓した時のこと、そして……龍達と共に戦争に加勢し、ティアを人質に取られ魔族と一対一で戦い勝利したこと、概ね全てをルクスに対し説明した。
レオナールは、その際女神の加護についてのみ少し濁し、上位の魔眼に匹敵する能力を持っていることで鑑定やステータスの隠蔽改竄が出来ると説明した。
「ーー以上が、今に至る経緯と私自身の能力の説明になります。」
レオナールが話終えると、ソフィアは唖然と口を開き硬直し、ルクスも同様に驚きの表情を浮かべる。
「ど、ど、どういうこと?レオが、龍王種と契約していて、ステータスも改竄してて……え?何?え?」
ソフィアは混乱を極め、しどろもどろに声を漏らす。
そんな姿にジークとアリウスは、「そうなるよな。」と内心思考しつつ苦笑を浮かべていた。
そして、ソフィアと同様に驚きを浮かべていたルクスは、そんな彼女の姿を見てハッと我に返り咳払いをすると、再び真剣な表情を浮かべ声を発する。
「うむ。アリウスから聞いていた内容と同じだな。寧ろ過去の経緯も含め、更に詳細を理解出来た。だが、整合性が有ろうとも証拠となるものがない。実際に証拠となるものを見せてもらないか?」
ルクスの言葉は、暗に本来秘密とすべきレオナールのステータスと龍王種であるイグニス達を見せて欲しいという話だ。
レオナールは、そんな国王ルクスの言葉に間髪入れず返答する。
「勿論にございます。国王様たっての願いを断るわけにいけません。少しお待ちをーー先ず、これが私のステータスです。」
レオナールは、衣服の胸元から紙を取り出すと以前ジークに打ち明けた時の様にステータスを記し提示する。
名前 :レオナール・フォン・グリューゲル
性別 :男
年齢 :11
種族 :人族
レベル:35
職業:召喚士
スキル:召喚術レベル10
【火龍王 イグニス】
【水龍王 アクア 】
【地龍王 テラ】
【風龍王 ウェントス】
【雷龍王 フルメン 】
【光龍王 ルーメン】
【闇龍王 テネブラエ】
大剣術レベル8
盾術レベル7
火魔法レベル8
水魔法レベル7
風魔法レベル7
地魔法レベル8
雷魔法レベル7
光魔法レベル7
闇魔法レベル7
称号 :グリューゲル家嫡男
「「「……は?…………ハァァァァ!?」」」
先程まで威厳に満ちた表情を浮かべていたルクスや、知っていた筈のステータスと異なるステータスを見せられたアリウスは、一時的に視線を彷徨わせ呆けると、すぐに我に返り再度ステータスを見つめ発狂する。また、混乱の境地に達していたソフィアもまた二人と同様に驚きの声を上げていたのは言うまでもない。
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