東部動乱 Part13
大変遅くなりました汗
前回あとがきにてニマニマ出来るような内容にし
もしよろしければ、ブックマーク、評価、レビューをよろしくお願いいたします。本当にモチベ上がります。
ーー◇ミュレー湿原上空レオナールside◇ーー
レオナールは、ウェントスの大規模な魔方陣が展開されると大きく息を吸い込み声を張り上げた。
「双方、武器を収めよ!不毛な戦闘は、これ以上必要ない!敵将エイル・フォン・グラエス並びに暗躍していた魔族は、ジーク・フォン・グリューゲルの手によって討たれたのだ!この戦…………王国軍の勝利だーー!!」
レオナールの声がウェントスの魔法により変質し拡散されると、ミュレー湿原に静寂が訪れた。だが、そんな静寂は、瞬く間の内に掻き消されることとなる。
「「「「「ウオオオオオオオオオーーーーーーーー!!」」」」」
ーーそう、地表では、王国軍兵士達の歓声が地鳴りの如く押し寄せたのだ。
王国軍の兵士達は、皆口々にジークの名を呼び、ジークコールが巻き起こる。
レオナールは、そんな予想以上の盛り上がりに驚きの表情を浮かべるも気を取り直し更に発言を続けた。
「故に反乱軍は、直ちに投降せよ!抵抗の意思ある者は、我が持てる力全てを以ってこれに対処する。反対に投降の意思ある者は、我が光龍の力を用いて命を保証を約束しよう!」
レオナールが再度声明を発し始めると、ジークコールが止み耳を傾ける兵士達。
その声明に対し、実際に被害を蒙った者達は、その味わった恐怖に戦慄し悲鳴をあげた。反対に王国軍兵士達からは、再度歓声が巻き起こるのだった。
上空からそんな様相を呈す地表を見つめるレオナール。
龍王達は、そんなレオナールに対し思い思いに話し掛ける。
『全部父親に擦りつけるってあんまりなのね〜。』
『だよね〜〜。』
『儂等の事は、公に出来んのじゃから仕方ないじゃろ。』
『おいおい、なら俺らの活躍ってどうなるんだ?』
『貴方は、黙っていなさい。主にも考え合っての発言なのです。』
『まあまあ、アクアも落ち着いて!取り敢えず、落ち着こうか?』
『………………休みたい。』
「擦りつけるとか人聞きの悪いこと言うなよな。父さんが、エイルを討ち取ったことに間違いないわけだし一つや二つ功績が増えても変わらないだろ?取り敢えず、俺は、ルーメンとこのまま戦場を回って治療してくるよ。アクアは、馬鹿が変なことをしないように見張っててくれ。」
レオナールは、テラの念話に苦笑を浮かべ応えつつ、イグニスを一瞥するとアクアに指示を出した。
『馬鹿って俺のことを『分かりました。しっかりと見張っておきます。』……って、おいっ!?』
『見張る『ボク等は、どうしたらいい?』……って、聞けーー!!』
アクアは、レオナールに反論しようとするイグニスに被せて声を発する。そして、アクアに追従するようにフルメンもまた同様にイグニスに被せつつレオナールに話し掛けた。
『えっと、そうだな……他のみんなは、テネブラエも休みたい様だしゆっくりしていてくれ。本当なら送還してやりたいが、龍王種という存在自体が抑止力にもなるし少しこのまま待ってもらえるか?」
レオナールは、イグニスの反応を無視し全員を見渡しながら今後の指示を出す。
そんなレオナールの指示に対し龍王達は、先程と同様にそれぞれ声を発する。
『ボクは、大丈夫だよ!』
『…………うん、分かった。』
『ククク……分かったのね〜。』
『了解!それにしても、イグニス……どんまい。』
『イグニスには、これくらいが丁度いいのです。いつも怒る私の身にもなって下さい!』
『何故、この仕打ち!?』
『フォフォフォ。』
「……まあ、イグニスこれに懲りたら少しは考えて行動しろ。それじゃ、ルーメン行くぞ!」
『重畳じゃ!』
レオナールは、呆れた表情を浮かべつつイグニスに忠告すると、気引き締めてルーメンに声を発し飛び立つのだった。
ーー◇王国軍左軍ジルベルト侯爵side◇ーー
「なあ、ガナン。私は、夢でも見ているのか?」
「安心しろ、ウィル……現実だ。」
「そうか、そう、だよな……。」
先程まで猛威を奮っていた灼熱の炎と極寒の猛吹雪が鳴りを潜め静まり返った左軍最前線。
ある所では、マグマの如くグツグツと地表が燃え滾り地獄の様な風景が広がり、またある所では、氷と雪の世界となった幻想的な風景が広がっていた。しかし、その光景の裏には、夥しい数の兵士達が焼き爛れ、氷漬けにされる等といった苦悶の悲鳴が響き渡っていたのだ。
そんな地獄絵図と言うべき光景を目の当たりにし声を失うウィルとガナン。
呆然と見つめ立ち尽くす彼等に対し、背後から馬で歩み寄る者がいた。
「ゼブルス卿、デュロー卿、二人とも何をしている?」
その声に瞬時に振り返るウィルとガナン。彼等は、その声の主を知っていた。
咄嗟に頭を垂れるとウィルがその人物に対し声を発する。
「申し訳ありません。ジルベルト卿、何故このような場所に?」
「気にするな、前線の状況を把握しに来ただけだ。それと、先程本陣からヘイルバードで届けられた伝令によると、あの龍達の契約者が言ったあの声明……確かな情報だということが分かった。伝令によると、間違いなくグラエス卿とテジーという名の魔族は討たれたようだな。」
デュークは、両名を見つめながら真剣な表情を浮かべ話し掛ける。
ガナンは、そんなデュークに対し腑に落ちない表情を浮かべ反応する。
「なるほど。あの【豪剣】が……彼の力量ならば、グラエス卿を討てるのも納得です。しかし、あの龍達の攻撃を躱して敵本陣に奇襲とは些か信じられませんね。それに、魔族の戦闘は、此処からでも多少なりとも確認出来ましたが魔法を使っていた様子……あの【豪剣】が魔法と言うのは、どうかと思うのですが?」
「うむ、その点については、殿下が別働隊として龍達が現れる前から敵陣側に送っていたようだ。なんでもあの【爪痕】が行動を共にしていたようだしな。それと、魔族の攻防ついては、私も腑に落ちないことがある。殿下の諜報員《陰影》によると、あの契約者が魔族を寸前まで追い詰め止めを刺したのが【豪剣】だったらしい。」
「あの【爪痕】がいたのですか!なるほど。あの【天眼】がいたと言うのであれば、戦場を縫うように行動できたのも納得です。それに魔族についても殿下がそうおっしゃるのであれば、それを信じるしかないというわけですか……。」
ガナンは、ある程度の理解を深め納得の表情を浮かべる。
ウィルは、ガナンと同様に首肯し、ふと思い出したようにデュークに問い掛ける。
「魔族については、天才と言われる殿下の事ですし、殿下が王国にとって不利となるようなことはしないでしょうから置いておきましょう。ですが、あの契約者が言っていた“光龍の力で命の保証を約束する”と言うのは、どういう意味でしょうか?」
「そうだな。私も同意見だ。殿下に偽りがあったとしても王国に害を為すようなことはするとは思えん。殿下を信じるしかないだろうな。それと光龍か……その点に関しても、伝令にあったぞ。あまりにも信じられないことだが、彼と光龍は、中央軍で敵味方問わず治療し死を待つだけの虫の息だった者達や四肢欠損が生じた者達といった重傷者を完全に回復させたようだ。お陰で、中央軍の死者は千人にも満たないだろうという見解だ。現在、右軍の治療に当たっているらしいが、同じような結果らしい。もうすぐ此方にも来るだろう。」
「「………………はい?」」
デュークの答えに対しガナンとウィルは同様の反応を示し絶句する。
対するデュークもまた信じられないと言わんばかりに苦笑を浮かべながら答えた。
「私も信じられんのだ。だが、事実と言うのは間違いない。中央軍の歓声がここまで聞こえるだろ?あれは、戦争に勝った兵士の歓声もあるだろうが、命の助かった反乱軍の冒険者や兵士達の割合が大きいようだぞ。」
「ちょっと、待ってください!!虫の息だった者達が完全に回復ってどういうことですか!?」
「落ち着けウィル。」
「落ち着いていられるか!?そんな死人を生き返らせるような奇跡あり得ないだろ!属性龍は、確かに子龍と言えどAランク以上の魔物……それにしても我が国にとって余りある力ではないですか!?」
「卿らが信じられんのも分かる。今後、彼等については、議会で殿下への追求が行われるのは間違いないだろうな。戦争擁護の派閥の者共にとってこれ以上ない好機となるだろう……っと、噂をすれば来たようだぞ。」
興奮した様子で捲したてるウィルを前に冷静に事を収めようとするガナン。
だが、冷静に振る舞うガナンにしてもデュークから見れば落ち着いていないのが見て取れた。そんな彼等に対し、デュークが落ち着いた様子で語る最中、噂の人物……レオナール達が到着するのだった。
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