東部動乱Part9
少し長くなりましたが、今回はジークサイドの裏話です。
次回の更新で前の話と繋がります。
よければ評価とブックマークよろしくお願いします!
注)以前より感想にて意見がありました戦争の人数ですが4月28日に全て見直し訂正しております。多数の御指摘ありがとうございました!
尚、4月29日に東部動乱Part9も少し改稿しております。御了承下さい!
ーー◇ジークside◇ーー
ーー時は少し遡る。
開戦より鐘が二つ鳴り響き時間が少し経過した頃、ジークは、敵本陣から程なく離れた後方の草陰に身を隠していた。そんな最中……彼等は、突如として戦場に現れた。
「おいおい、どういうことだ?あれってどう見ても属性龍だよな?」
災害に匹敵する魔物……そんな魔物が七頭も援軍として現れるという有り得ない状況に言葉を失い、知らずと立ち尽くすジーク。そんな呆然と立ち尽くすジークに対し、屈強な大男が粗暴に話し掛ける。
「おい馬鹿ジーク!敵陣真っ只中で立ち上がってんじゃねえよ!バレたら作戦どころじゃねえだろうが!?」
「ああ、すまん。だが、あいつは一体何者なんだ?バル、お前何か知ってるか?」
ジークは、大男の注意に直様反応し身を屈めると疑問をそのままぶつけた。
「知らねえよ!あいつが殿下の味方って言ってんだから味方なんだろう。そもそも、味方じゃなければ早々にあの世行きだろうし信じるしかねえだろうが!」
バルは、ぶっきら棒に視線を逸らし声を荒げ返答する。
対して、ジークは、そんなバルに苦笑を浮かべながら話し掛ける。
「まあ確かに、その通りなんだろうが……それにしても、お前言葉遣いを治せとあれほど言っているだろ?俺以外の貴族に乱暴な言葉遣いをしてないだろうな?」
「うっせい、大きなお世話だ!てか、するわけねえだろ!お前が貴族っていうのに今だにピンと来ねえんだよ。なんだ?お前も畏まってもらいたいのか?」
「いや、お前に敬語使われるとか気持ち悪いから勘弁してくれ……。」
ジークは、普段粗暴な言葉を発するバルが敬語を使い、傅く姿を想像し身を悶えさす。
ーーそんな二人のやりとりを側で見ていた者達は、顔を見合わせ溜息を吐き言葉を発した。
「二人ともそこまでにしないか。バルも殿下の指名依頼を忘れたわけではあるまい?」
「そうだよ、馬鹿バル!あんたのでっかい図体と馬鹿げた大声の方が目立っちゃうでしょうが!!何処に敵の目があるか分からないんだから、あんた達いい加減にしなさいよ!」
「アビやヒイロの言う通りだよ。僕もここで騒ぐのは賢明じゃないと思うな。」
「うふふ……バルもジークもそのくらいにしないと二度と回復しないわよ?」
「「すいませんでした!!」」
ジークとバルは、即座に二人揃って土下座し素直に謝罪する。
((あの目、絶対本気だ[じゃねえか]!?))
そんな二人の姿を垣間見た一同は、再び顔を見合わせ溜息を吐くのだが……その後の表情は、微笑みを浮かべていた。
「うふふ、この感じ久しぶりね。」
「あはは、イルルも感じてたんだ!私もこんな元気なバル見たの久しぶりかも……バル〜あんたジークが居なくなって寂しかったんじゃないの?ねえねえ〜!」
棍を携えた白いローブを身に纏った出で立ちの女性が笑みを漏らすと、背中に弓を背負った軽装の女性は、つられた様に笑みを零す。
そんなヒイロは、久しぶりにみたバルの姿に喜びを感じ弄るようにバルを突つく。
「ふん、寂しいだあ?そんなことあるわけねえだろ!何で俺がこんな奴を寂しがらないといけねえんだ!」
バルは、そんなヒイロの言葉を聞いた直後、視線を逸らし返答する。
そんな他愛もないやりとりをする一行であったのだが、この後のアビの一言で気を引き締めることとなった。
「おい……いい加減にしないか?」
「「「「「……はい。」」」」」
古い付き合いだからこそ分かる……この絶対逆らったらいけない空気に一瞬で静まり返るパーティー。
そんな空気の中、アビは溜息を吐き話を進める。
「はあ……お前達も少しは緊張感を持つべきじゃないか?まあいい。信じ難いと思うが、おそらく属性龍は、手練れの召喚士の従魔だろう。まあ今は、考えていても仕方ないから省くぞ。現状とこれからの事についてだ。カイト、敵の状況はどうだ?」
「はいはい。上手く回り込めたみたいだよ。敵さん、まだ僕等の事気付いてないみたいだね。遠回りした甲斐があったってもんだよ。」
アビに話を振られた緑髪の童顔低身長の青年ーーカイトは、身を持って視察した内容を報告する。
「そうか、ならいい。では、もう一度確認しておくぞ。今回、我々【爪痕】へきた依頼は、アリウス殿下からの要請だ。ジークと協力し少人数で敵軍背後から強襲を掛けて混乱を引き起こすようにとの仰せだ。また、状況を見て離脱して構わないと許可を貰っているから、安全マージンの見極めは任せてくれ。私の指示で即時撤退……皆、異論はないな?ジークもそれでいいか?」
「ああ、問題ない。【天眼】の異名を持つお前に任せるのが一番だろ。」
「そうだぜ。俺らのリーダーは、アビなんだ。異論はねえよ。」
アビが、今回の依頼を確認し皆に同意を求めるとジークとバルは続けて返答する。他の三名も各々が首を縦に振り肯定した。
「そうか、では作戦を伝える。まず前衛バルとジークから順に全員を強化、そして無警戒な敵背後に私が持ち得る最大威力の雷魔法で攻撃。さらに、ヒイロの弓技で指揮官と思しき人物を片っ端から攻撃する。バルとジークは、前衛で敵を凌いで一点突破。それに追従する形で、遊撃にカイト、回復支援のイルル、後衛支援のヒイロ、そして私が順に敵陣に切り込むぞ。勿論、撤退に必要な体力と魔力は残しておくように。」
「「「「「了解!」」」」」
「よし。では、行くぞ!」
アビの掛け声で全員が行動を開始した。
ーーグラエス公爵sideーー
龍達の登場より腰を抜かし激怒する一件から少し時間が経った頃、エイルは一人忌々しく戦場を見つめていたーーそんな最中、陣後方より爆音が響き渡る。
「敵襲!敵襲ーー!!本陣後方より、敵軍の者達と思しき一団が現れました!」
「な、何だと!?人数は!?被害は!?」
エイルは、報告を齎した兵士に唾を飛ばしながら激昂する。
「ろ、6名です!先程の魔法や弓によって死傷者約30!うち、サルマル騎士爵、ネンメル騎士爵が戦死されました!」
「……っく、たったの6人に死傷者30だと?何を愚図愚図している!さっさと始末しろ!」
「ハッ!現在、後方部隊が戦闘に入ったため討取るのも時間の問題かと思われます。」
「……そうか、それなら良い。下がれ。」
エイルは、自らの命の危険を感じ慌てふためくも兵士の報告に安堵の息を吐いた。
エイルは、功を焦った愚者が少数で乗り込んできたのだと判断してしまったのだ。
勿論、然うは問屋が卸さない……。
その直後、続けて届けられた新たな報告にエイルは、目を見開くこととなる。
「伝令!敵の素性が判明致しました!【天眼】率いる爪痕と【豪剣】ジーク・フォン・グリューゲルです!」
「天眼に豪剣だと!?何故、奴らがこんなところにいるんだ!?……いや、そんなこと今はどうでも良い!奴らはどうした?殺ったのか!?」
驚愕の表情を浮かべるエイルだったが、直様首を振り伝令を齎した兵士に問い質す。
「いえ、それが……。」
兵士が現状を伝えようとしたその時、エイルの眼前に彼等は現れた。
「思った以上に手薄だったな。背後から攻撃がないとでも思ったのか?」
ジークは、片手で大剣を担ぎながら盾を構えエイルと対峙し話し掛ける。
そして、その横でアビが一歩進み出るとエイルに向けて堂々と声を張り上げた。
「私は、爪痕リーダーのアビと申します。アリウス殿下の要請を受けここに参上しました。貴殿は、グラエス卿とお見受けする。直ちに降伏していただきたい。」
「巫山戯るな!!正当な王たる余が降伏だと……?馬鹿も休み休み言え!貴様等、今の現状が分かっておるのか?この状況で降伏勧告などと片腹痛いわ!」
アビの降伏勧告を耳にしたエイルは、憤怒の表情を浮かべ怒声を上げる。また、馬上からジーク達一行を見下し、右腕を横に広げ周囲を包囲するように指示を飛ばした。
「あちゃー、やっぱりこうなるよね。」
「まあ、予想通りでしょう。アビ、撤退のタイミング任せたわよ!」
カイトは、包囲された現状をみて苦笑を浮かべながら声を漏らす。そして、それに続いてヒイロも緊張した面持ちでカイトに返答しアビに声を掛けた。
「仕方ない……イルル、結界を頼む!」
「はい!エリアシールド!」
イルルは、アビの指示で対象者から半径5m程の結界を作り上げた。現状のイルルの魔力量では、一度しか使うことが出来ず5分程しか効果が持たない爪痕奥の手の一つである。そんな安全エリアから2人の男が足を踏み出した。
「バル、グラエス卿は、俺がもらっていいか?」
「そうだな。いいぜ、ジークにやるよ。その代わりこっちは貰うぞ。そっちより面白そうだしな。」
バルは、エイルとの間に立ちはだかる親衛隊長レックスを見つめ答える。
「交渉成立だ。じゃ、アビ。あとは頼んだぞ。」
「予定では、5分後離脱だ。こっちは、結界があるから安心しろ。」
顔だけアビに向けて用件を伝えるジーク。対して、アビは普段と変わらぬ態度で見送った。
ーー次の瞬間、バルは、その巨体には似合わない素早さを持ってレックスに肉迫する。
「お前の相手は俺だとよ……っと!」
「……っく、速い!」
強化されたバルの戦斧を咄嗟に盾で弾くレックス。
ジークは、その隙にレックスの横をすり抜け一目散にエイルの元へ走り寄る。
「ヒいっ!ファ、ファイアーボール!ファイアーボール!ファイアーボール!」
ジークも並々ならぬ速度で肉迫するため、焦るに焦ったエイルは、立て続けに魔法を放った。その魔法は、流石公爵家の人間と言えるだけの威力であり直径3mを超える火球がジークを襲い掛かる。
「おっと、危ねえ危ねえ。」
そんなエイルの火球を軽やかに躱していくジーク。
3つ目の火球を躱し終えたジークは、エイルの眼前に差し迫った。
全て躱されるとは夢にも思わず馬上で慌てるエイル。
そんなエイルを他所にジークの剣が馬の咽喉元を一閃する。
馬は、短く声を上げ前脚を高らかに上げると、騎乗していたエイル諸共横転し絶命した。
ジークは、そんな放り出されたエイルに詰め寄り咽喉元に剣を突き付ける。
「あそこでファイアーボール3連はないだろ?まあとにかく、これでチェックメイトだ。」
「ま、待ってくれ。降伏だ!降伏する!だから、命だけは助けてくれ!」
両膝をつき両手を挙げ降参の姿勢を見せるエイル。
レックスは、そんなエイルの姿をみた直後剣を捨て降伏した。また、それに続いて周囲の私兵も降伏の意を示した。
「つまんねえな〜もう終わりかよ。ジークてめえ堕とすの速すぎだろう。」
バルは、戦闘を楽しもうとした矢先、降伏したレックスを横目にジークに話し掛ける。
「いや、俺もこんなに早く決着が付くなんて思わねえよ。」
そうバルに振り向き話したその時、降伏していた筈のエイルが声を挙げ突如としてジークに火球を放ったのだ。
「死ねえええええ!!ファイアーボール!!」
「ジーク!!」
バルが咄嗟の事に声をあげジークに喚起する。
「うぉぉりゃぁーー!!」
ジークは、振り向きながら雄叫びを上げ横一文字に一閃した。
「アヒャ…………。」
そんな力の限りを放った斬撃は、火球を切り裂く事だけに留まらず奇怪な声を上げるエイルの首を吹き飛ばす。
「馬鹿なことしやがって……。」
ジークは、頭部だけになったエイルを見下ろし声を漏らした。そして、声高らかに宣言する。
「敵将エイル・フォン・グラエスは、我ジーク・フォン・グリューゲルが討ち取った!反乱軍全員直ちに降伏しろ!命も保証する旨を前線にも伝えるんだ!」
……こうしてエイル・フォン・グラエスは、その生涯に幕を閉じるのだった。
話の都合上、戦争の裏話を盛り込みました。
拙い文章ですいません汗
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