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七龍の契約者  作者: Light
第一章 少年期(仮)
36/59

東部動乱Part7

みなさまの温かい感想と御尤もな御意見ありがとうございます。今後は、定期的に更新できるように頑張ってみようと思います。


誤字脱字や気になることがあれば御意見くだされば幸いです。


ご感想にあった人物紹介等は、序章が終わるタイミングで載せたいと思います。

「私は、貴方との一騎打ちを望みます。勿論のこと龍王達の援助は無しですが、ハンデを与えましょう。どうでしょうか?」


レオナールに恍惚とした笑みを浮かべ問い掛けるテジー。

レオナールは、そんなテジーを相手に苦悶の表情を浮かべ答える。


「分かった。いいだろう……その一騎打ち受けてやろうじゃないか。」


「おや?……クフフフフ。おっと、これは失礼。正直なところ即答されるとは思ってもいませんでしたので……。参考迄にお聞きしたいのですが、何故龍王達(かれら)を使って私を殺さないのですか?」


テジーは、レオナールの返答に一瞬細目を見開き声を上げると、直ぐ様先程の笑みを取り戻しレオナールに再度問い掛けた。


「白々しい事を……。お前を殺してティアまで殺されたなんて日には堪ったもんじゃからな。」



ーーそう、単純に事を考えるとこの場で龍達に始末してもらう方が戦争を終結する上でも最速の一手と言える。しかし、この場に置いてそれ(・・)は最善の一手ではないことをレオナールは知っていた。

テジーは、この乱戦の戦場に置いて使い魔から“先程・・連絡が来た”と言っていたーーということは、ルーメン達と同様の念話……あるいは、それに近い能力があるという事に他ならない。もし、テジーを仕留めようものならティアに対し使い魔にどんな命令を出すか分かったものじゃないのだ。



「クフフフフ、アハハハハハ!……良いですよ、実に好ましい!大変失礼致しました。私は、貴方を過小評価していた様ですね。では、敢えてお約束致しましょう。この決闘が終わるその時まで憎っくき聖女が生きていることを保証致しましょう……私も命が欲しいですからね。」



テジーは、そんなレオナールの返答を聞いた直後、一様に大きな笑い声を響き渡らせる。その眼は、レオナールを見据え、そのまま龍王ルーメン達に視線をスライドさせると更に異様な深い笑みを浮かべた。


『フォフォフォ、貴様も面白い事を言うのぉ?保証も何も……もし、既に手を出していようものなら貴様は屑と化しておるわい。ティアの魔力は、儂等が把握しておる。儂等を舐めるでないぞ?』


ルーメンは、柔和な表情を浮かべる。しかし、その視線は、射殺すが如く鋭いものだった。


「……っ!?これは、失礼致しました……平にご容赦を。では、話が逸れてしまいましたね。早速、交渉成立ということでルールの確認と参りましょう。」


テジーは、ルーメンの殺気の籠った視線に一歩後退りながらも気を取り戻し話題を摩り替え発言する。


「私から求めるルールは三つ……一つ、使い魔及び召喚獣の手助けを禁ずる。また、現時点をもって如何なる指示を出すことを禁じる。一つ、決着を迎えた際、敗者の召喚獣あるいは使い魔は勝者に手出し無用。一つ、現時点を持って魔具・アイテムの使用を禁ずる。

以上の三つです。二つ目は、私の保身の為です。私が勝っても龍王達かれらに殺されたら元の木阿弥ですからね。因みに私からのハンデですが、この魔具ーー魔笛と風繰の指輪を使いません。そもそも、指輪に関しては其方の風龍のお陰でこの通り壊れてしまいましたものでね。」


テジーは、そう言いつつ右手を上げると中指に付いていた指輪が崩れ落ちた。


「それと私は、今回の戦での人族ゴミ共の操作と、風龍あなたのお陰で少々魔力を使い過ぎました。アイテムの使用を禁じたことで回復出来ず本来の力と程遠い状態で一騎打ちに臨まないといけません。これもハンデとして与えましょう。如何ですか?」


テジーは、一時的に風龍ウェントスを見つめた後、レオナールに振り向き提案する。それを聞いたレオナールは、思い詰めた表情で返答した。


「一つ確認したい。このルールは、本当に守られるのか?俺がお前を殺す間際にルールを反故してティアを殺す指示を出す……なんて事があったら意味がないしな。」


「…………クフフフフ、アハハハハハ。もう私を殺した後の心配ですか?私も舐められたものですね。大丈夫です。その点は、私も十二魔将トウェルヴの名の下に誓ってフェアに参りましょう。では、念の為こちらを発動させましょう。」


テジーは、鳩が豆鉄砲を食らったような表情を浮かべ笑い声をあげる。そして、自然と出る笑みを隠そうと右手を口元に重ねレオナールに答えると、両者の足元に紫色の魔法陣が現れた。


「なっ⁉︎」


レオナールは、驚きに声を漏らし離れようとするも一瞬の内に魔法陣は消失した。


「ご安心下さい。私が発動させた契約呪術です。お互い特に何も害はありません……ただ、先程の内容に背く事があれば召喚獣諸共直ちに命を落とす事になりますがね?」


テジーは、平然とした面持ちでレオナールに語り掛ける。

しかし、レオナールは、口角を上げ笑みを浮かべていた。


「……何が可笑しい?」


テジーは、不快な表情を浮かべ先程までと打って変わった口調でレオナールを諌める。


「いや良かったよ。これで、お前が幾ら追い込まれようともティアに手を出す可能性が無くなったみたいだからな。」


レオナールは、心配事が無くなり安堵の表情を浮かべる。


「クフフフフ、アハハハハハ!ここまで馬鹿にされたのは久しぶりですね。まさか、本気で勝つつもりで居るとは……面白い!龍王よ、お前達の主人が惨たらしく死ぬ姿、その眼に焼き付けるがいい!」


テジーが声高らかに笑い声を上げそう言い放つと、いきなり腕を変形させレオナールに斬りかかった。


「くっ!?」


咄嗟のことにレオナールは、後方に跳躍し回避する。


「よく避けれましたね?決まったと思ったのですが、時期尚早でしたか。」


テジーは、異様な腕に変形させ鋭利に伸びた爪を見つめながらレオナールに対し驚きの表情を浮かべる。


「騙し討ちもありかよ……少し危なかったな。じゃあ、次はこっちの番だ!」


レオナールは、やられたらやり返すとばかりに一瞬の内にテジーの間合いに詰め寄ると跳躍し上段から力の限り剣を振り下ろした。


「何っ!?速い!」


テジーは、反射的に両腕をクロスさせ爪で剣を受け切る。しかし、それだけでは収まらない余りの衝撃にテジーは膝を付いた。


「くっ……!?人族ゴミ如きが舐めるなーー!!」


ギリギリと剣と爪が拮抗する嫌な音を鳴らしながら声を漏らすテジー。

しかし、そんな状況を打破しようと自らを鼓舞する様にテジーは叫び行動に移す。


「シャドウエッジ!」


「おっと!」


レオナールの足元から夥しい漆黒の刃が飛び出すと、レオナールは後方に跳躍しそれを回避する。


テジーは、先程までの嘲笑は鳴りを潜め、至って真剣な表情浮かべてレオナールを見つめる。




「……可笑しい。実に可笑しい事この上ない。貴様、召喚士ではないのか?召喚士が、幾ら馬鹿げた魔力があろうとも多くの高位属性・・・・魔法を使えるなどと聞いたことがない。」


先程と同様に様変わりしたかの様な冷淡な口調で話すテジー。

そんな相手にレオナールは、引き攣った笑みを浮かべ声を漏らす。



「……やっぱりばれたか。」



レオナールは、先程までの会話の最中に無詠唱・・・で身体強化を行っていたのだ。

風魔法“クイックアップ”、火魔法“バーストアップ”、土魔法“ガードアップ”といった敏捷、攻撃、防御の三拍子を事前に気付かれないように上げていたからこそ初撃を防げたと言っても過言ではない。また、その効果に置いてもレベル(・・・)に左右されるためテジーが高位レベルの魔法と気付いたのもレオナールの身体強化が並々ならないものであった事に他ならないのだ。



「何を言っているんだ?御察しの通り紛れもなく召喚士に相違ないぞ?……まあ、普通の召喚師と一緒にされても困るのも事実だがな。」



レオナールは、距離を置きテジーに返答する。

すると、テジーは落ち着き納得した様な表情を浮かべ語り始める。


「私としたことが取り乱すとは情けない。そうですね、龍王ばけものを召喚できる時点で可笑しいのです。何があっても可笑しくありません。……遊んでいては痛い目を見そうですね。では、私もここから本気で行かせていただきましょう!」


テジーは、途端に相対するレオナールから距離を取るため後方に跳躍し詠唱を始める。

とっさの事に虚をつかれ反応が遅れるレオナール。そんな些細な時間が、テジーの詠唱を完成させた。


複合魔法・・・・は、私を以ってしても無詠唱では難しい……ですが、これで終わりです!“シャドウホール”!!」


レオナールとテジーの間に巨大な漆黒の球体が出現したかと思うと、それは直ぐ様強烈な吸引力を発揮する。周囲の草花や辺りに散乱していた亡骸や武器防具など様々なものが球体に引き摺り込まれていく。


そんな様相に相見えているレオナールも只事ではなかった。

レオナールは、剣を地面に突き立て抵抗するも徐々に球体に引き摺り込まれていたのだ。



「闇魔法の独自魔法オリジナルも使えるのかよ!?」



本来、魔法とは、体内に存在する大元の魔力を属性の魔力に変換して発現する。その工程において、他属性の魔力を同時に混ぜ合わせることは困難であり、二属性、三属性と複合させるに連れて飛躍的に難易度は上昇する。また、光魔法や闇魔法は、どの属性に置いても複合させることが更に至極困難を極めるのも周知の事実なのだ。

そして、二属性以上を混ぜ合わせて発現する魔法の威力は、強大かつ凄惨極まりない威力を呈し複合魔法=独自魔法オリジナルとも呼ばれている。つまり、二属性以上の魔力を複合させ発現させることが出来るのは、一流と呼ばれる実力と魔力制御力があって初めて発現出来るという事に他ならない。



「くっ……!?アースウォール!!」


レオナールは、三重に張り巡らせた堅固たる防壁を聳え立たせる。しかし、その防壁も徐々に崩壊の兆候を示していた。

一時的に自由を手にしたレオナールは、後方に跳躍し防壁が崩壊する直前に全力の魔力を解き放つ。



「ファイアーストーム!……からのアースウォール!」



レオナールの眼前には、高レベルの火魔法ーー蒼炎の業火が吹き荒れる。その業火は、球体諸共テジーを吞み込み炎上した。


レオナールは、蒼炎で視界を遮る最中再度堅固たる防壁を聳え建たせ、それに伴い更に距離を取ると安堵の表情を浮かべていた。





ーーだが、そんな油断がレオナールを窮地に立たせる。


次回の更新は、明後日月曜日に更新致します。


少しでも楽しんでいただければ幸いです。これからも七龍の契約者を宜しくお願い致します。


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