東部動乱
大変遅くなりました(^^;;
すいません汗
今回の話は、相手の情報を組み入れたかったため少し説明がくどいところがあるかと思います。ご了承ください汗
◇ーアーリナル王国東部グラエス公爵領ー◇
「な、何なんだ、あの軍勢は……。」
黒衣に身を包んだ男は、目の前に拡がる統率の取れていない異様な軍勢を視界に捉え声を漏らす。
そんな中、黒衣の男の背後に同じ服装をした女が音もなく現れた。
「アレン隊長、ただいま戻りました。」
「シュラか……どうだった?」
シュラは、隊長であるアレンに片膝立ちの姿勢で報告する。
「あの軍勢は、やはり少しずつですが西の王都に向け進行しているようです。中には、兵士や冒険者らしき者達と奴隷も数多く確認できました。また、グラエス公爵家が直接治める東都カルデアから次々と溢れ出ているようです。」
「やはりか……街の様子は掴めたのか?」
アレンは、眉を顰め納得し更に情報を求める。対して、シュラは苦々しい表情を浮かべながら更に報告を続けた。
「申し訳ありません。今だ詳細を把握出来ておりません。遠目では、居るはずの門番の存在を確認出来ませんでした。それに、街を覆い囲む様に奴らが群がって居るので近付こうにも近付けずといった状況です。街にいるはずの暗部とも二日前から定時連絡がなく連絡が取れなくなっております。」
シュラは、仲間の安否を気遣い唇噛み締めながら街の状況に対する報告を行う。
「そうか……無事であればいいのだがな。」
アレンは、遥か先の街を眺望しながら部下の生存を願った。そして、そんな気持ちを切り替え、シュラに続けて報告するように促す。
「あの軍勢についての情報はあるのか?」
「はい。我々4名で軍勢から外れているFランクの前衛職らしき若い男2名とGランクの魔術師らしき女1名を捕縛しました。
彼らのギルドカードから低ランクの冒険者だということは分かったのですが……捕縛する際に抵抗が激しく2名負傷しました。前衛職らしき男達は、低ランクの冒険者と思えない並々ならぬ膂力で暴れ抵抗し、女の魔術師も同様に低ランクとは思えない膨大な魔力で風魔法を放ち傷を負わされました。また、魔術師の女に至っては、取り押さえた際に魔力の急激な高まりを感じたため危険と考え意識を奪いとった次第です。全員に共通する点は、会話が成立せずまとまりのない意味不明な言葉を呟いています。」
シュラは、捕縛した冒険者を不審に思いながらも淡々と事の事実を報告する。
アレンは、低ランクの冒険者相手に2名も負傷したことに驚愕する。
「なに?FやGの冒険者相手に我々が2名も後れをとっただと?」
「はい、申し訳ありません。我々も予想外の出来事で油断してしまいました。」
シュラは、顔を伏せながらアレンに謝罪する。
アレンは、そんなシュラの肩に手を置くと同時に声を掛ける。
「いや、今回ばかりは私ですら予想だにしなかったことだ。お前達に何も落ち度はない。
……それにしても、殿下の嫌な予感が当たってしまったということか。」
アレンは、部下達の失態を容赦しつつ、アリウスに助言されたことを思い出し苦笑を浮かべる。
「兎にも角にも、私は、これから急ぎ王宮に戻り事の次第を報告しに戻る。シュラ、残りの隊員を纏め、今後の動きや情報を収集しろ。私が王都に戻り次第、城の召喚獣を仕向けるので報告するように……。頼んだぞ。」
「ハッ、承知しました。」
アレンは、シュラが居なくなったことを確認し王都への帰路に就くのだった。
◇ーアーリナル王国王都ルディオン〜城内軍議室〜ー◇
「ーー以上が、東部における現状報告になります。また、シュラを始めとする部下4名についてなのですが、昨日召喚獣を送ったのですが連絡が途絶えました。何かしら不測の事態に陥ったものと考えられます。」
軍議室では、席に座っている数多くの貴族がアレンの情報を聞き様々な表情を浮かべていた。
アリウスは、そんな空気を裂くかのようにアレンに声を掛ける。
「そうか……御苦労だったな。引き続き反乱軍の情報収集に行い、並行して安否不明者の足取りを追ってくれ。」
「御意。では、失礼致します。」
アレンは、そう言い残し軍議室から退室する。
アリウスは、静まり返った軍議室内を一様に見渡し席を立つと声を張り上げた。
「現状は、先程の報告にあった通りだ。父上が出発し五日経った今日、今回の件に関する声明の書簡が届いた。内容は、『余は、正統なるアーリナル王国が真の国王エイル・フォン・グラエスである。現国王ルクス・ファウスト・アーリナルは、王座を簒奪した逆賊である。直ちに現王家は自刃し王位を返還せよ。』……だそうだ。全くもって意味の分からないことを述べているが、奴らは本気で王位を狙っているのは間違いないだろう。」
アリウスは、アレンの報告を鑑みて間違いないであろう事実を述べながら、現公爵家の謀反に落胆する。そんな中、アリウスと入れ替わるように初老の男がアリウスに話し掛ける。
「殿下。これより先の進行は、私に任せていただいてもよろしいでしょうか?」
「そうだな。父上がいない以上その道の専門家である者に任せた方が話も円滑に進むだろう。」
アリウスは、この場における最善な人事と考え初老の男の進言を容認する。
「ありがとうございます。ではここから先は、陛下より軍務を預かるナイゼル・フォン・フォードが進行させてもらう。まず、今回の謀反の主犯は、皆も分かっていると思うがグラエス公爵家だ。そして、それに続きグラエス公爵家に縁のあるゲルグ伯爵家とブラム子爵家、他男爵家と騎士爵家が少なからず参加しているとの報告が上がっている。反乱軍の内訳は、公爵家の私兵が約2万、伯爵家が約1万、子爵家が約3千、他男爵家や騎士爵家数家で合わせて約4千、残り冒険者や奴隷達が約の計4万を越えると考えられる。対して我等王国軍は、急であったため現段階で招集出来ているのは約6万の兵力だ。また、これは事前に殿下が反乱軍の同行を気付いて下さったため招集が間に合った部分もある。後詰で地方の貴族や兵士を招集すると計12万は集められるだろう。」
ナイゼルが席を立ち淡々と現状を報告する中、数人の貴族が騒めき始める。
「3倍の兵力なのか……それなら勝てる。いや、そもそも相手にならんのではないか?グラエス卿も愚か者だな。」
「そうだな。だが、勝てるとは言っても此方の軍にも被害を被るだろう。被害は計り知れないものになるぞ。」
「確かにな。もし被害が甚大にでもなれば、好機と考えて帝国が攻めてくる可能性もある。その為にも何か作戦を考えるべきだと思うがどうする?」
軍議室内では、彼等の言葉を皮切りに至る所で意見が飛び交い始めた。
ナイゼルは、そんな様子を目の当たりにし大きな咳払いをして注目を集め叱責する。
「ウォッホン!……話がまだ終わっていないのだが?」
一様に静まり返った軍議室で、ナイゼルは再度話を続ける。
「貴公らの意見にもあった通り、確かに我が軍の兵力は現時点でも優位……あと、7日もすれば3倍になり勝利に終わるだろう。だが、それは普通の戦であればの話だ。
暗部の報告にあった通り、反乱軍には全てではないが一部奇怪な者達が存在している。現段階で確認取れているのは、冒険者や奴隷、あと若い私兵達……数にして反乱軍の3千人といったところだが奴等の戦力は未知数だ。手練れの暗部でさえ低ランクの冒険者相手に後れをとるレベルと考えると一般兵の2倍……いや、下手すれば3倍以上の兵力と言える。つまり、この7日間に至っては、戦力差はあまりない……寧ろ劣勢ともいえるだろう。」
ナイゼルは、最後の言葉を述べると共に勝てると息巻いていた貴族を睨み言葉を締め括る。
対して、当の貴族本人は、顔を下に向けたまま冷汗を流し無言を貫いていた。
アリウスは、そんな居た堪れない雰囲気を察し、小さな溜息と共に話し始める。
「ナイゼル、それくらいにしといてやれ。」
「殿下がそうおっしゃられるのであれば……。」
ナイゼルは、渋々ながらもアリウスの意見を尊重し身を引き自席に着席する。
そして、アリウスは、ナイゼルが席に着いたことを見届けると話を切り出した。
「昨日、父上には、召喚獣で今回の謀反の詳細をお伝えしている。そして、早朝返答があったのだが、その内容によると既に獣王国の領土に入り、獣王国の兵士と共に王都に向けて行軍してるようだ。父上によると、急ぎ公務を終わらせて強行軍で帰ったとしても10日程時間がかかるため戻られるまでは我々で対応するようにとのことだ。そこで、今回の正規軍の総司令に名目上では、私が率いることになるが軍務卿でもあるフォード公爵に参謀兼実質上の総司令を任せたいと思う。尚、父上は、事前に最悪の可能性を考慮し王都をご出立される前から私とフォード侯爵に勅命をいただいていたのだが、異論がある者はいるか?もし、いるのであれば名乗り出てくれ。」
アリウスの質問に対し軍議室にいる一同が更に静まり返る。アリウスは、一同を見回して再度話し始めた。
「異論はないな。では、本題に入るが……反乱軍は、東部最大の湿原地であるミュレー湿原から5日程の距離を進軍しているようだ。我々は、事前に進行ルートになるだろうと考え、東部の貴族達にミュレー湿原で陣営を展開するように要請した。また、陣営周辺の魔物を掃討するようにも伝えている。反乱軍の進軍スピードが少し遅い事を考慮すると7日後には、ミュレー湿原で搗ち合わせることとなるだろう。そして、その頃には我々も間に合う手筈となっている。そこで、今回の戦におけるそれぞれの部隊を率いてもらう者達をここに居る者達に頼みたいのだがーー。」
アリウスは、その後ナイゼルと共に各部隊の指揮官を選抜した。5の鐘が鳴る頃には軍議も終了し、6の鐘が鳴る頃にはミュレー湿原に向けて事前に準備していた正規軍の第1陣から順に出発する運びとなった。
ーー7日後、アリウス率いる王国軍とグラエス公爵率いる反乱軍は、ミュレー湿原において合間見えることとなる。
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【補足】
召喚獣 ヘルバード
《魔物ランク》Fランク
召喚士においては、比較的契約しやすいとされる鳥型の魔物。気性が穏やかであり臆病な性格のため一般的には出会わない魔物とされている。様々な国で伝令用の魔物として重宝されている。
追記
軍の人数を調整しました。




