呪い
仕事ががががが。
ーーそんなことはさておき、この話も少し長いです。
良ければ、評価やブックマーク、レビューをよろしくお願いします。
『私ですか?』
ティアは、ルーメンに急に話を振られたことで目を丸くして手記で反応する。
『そうじゃ、お主じゃよ。ほれ、主が最初に言うておったじゃろ?』
ティア達は、少し前の過去を思い出す。
「「……あっ。」」
アリウスとリリルは同時に声を漏らし、ティアも思い出したかのように表情を浮かべた。
「そういえば……そもそもレオが、ティアのことで紹介したいって言って召喚したんだったな。あまりに衝撃的過ぎて忘れていたけど。」
アリウスは、乾いた笑みを浮かべながら呟く。
リリルは、そんなアリウスを横目で見つつルーメンに問い掛ける。
「ーーと言うことは、レオナール様が例のことを知っていたのは、もしかしてルーメン様が?」
「まぁそういうことじゃの。儂等は、凡ゆる生物の魔力の流れを感知することができるんじゃが、ティアと言ったかの?……お主の魔力の流れは歪なんじゃよ。」
リリルの質問に応答し、そのままティアに視線を逸らし答えるルーメン。
そして、ルーメンの言葉にティアは真剣な表情を浮かべ再び手記で問い掛ける。
『歪とは、どういうことなのですか?』
ルーメンは、少し考え込むように項垂れティアに返答した。
『……ふむ、そうじゃのぉ。結論から言うと、お主は十中八九闇魔法系統の呪いに掛かっておる。それが魔力の流れを阻害し歪みとなっておるというわけじゃ。』
「……!?」
そんなルーメンの言葉に直ぐ様反応したのはアリウスだった。
リリルは、そんな驚きの表情を浮かべたアリウスに声を掛けた。
「アリウス様、どうかされたのですか?」
対してアリウスは、リリルの言葉が届いていないかのように顎に右手を当て俯きながらボソボソと呟く。
「呪いだと?いや、まさかそんなはずはない。あれは、あの種族特有の魔法のはずだ……。」
そんなアリウスの不可解な態度にティアとリリルは顔を見合わせ首を傾げる。
ルーメンは、そんなアリウスを目を細めて感心したように見つめていた。
『お主は、既に答えが出ておるようじゃの?」
アリウスは、ルーメンの確信めいた言葉に苦虫潰したような表情を浮かべ答える。
「…………もしかして、魔族なのか?」
アリウスの言葉にティアとリリルは、言葉を失った。
「正解じゃ。そう、そもそも呪いはある種族特有の闇魔法じゃ。それ即ち魔族に他ならないというわけじゃ。』
「まさか本当に実在していたなんて。私も古い文献を読んだ時に目を通したが、伝承……ただの昔話かと思っていた。」
アリウスは、ルーメンの解答に神妙な面持ちで考え込む。
そんな中、ティアは再び手記でルーメンに問い掛けた。
『私は、魔族に会ったことがないですよ?魔族は領域から数百年出たことがないと言われているのに本当に魔族なんですか?』
『じゃが、現に呪いに掛かっておるのは事実……おそらくじゃが、時期からみてお主が以前拐われた時にでも関わっておったのじゃろうな。
あと一つ訂正じゃが、魔族が数百年領域から出たことがないなんぞありえんわい。魔族は少なからずではあるが、こちら側に来ておったことがあるしの。』
ティアは、過去の事件を思い出したのか身体を震わせて怯える。
対してアリウスは、ルーメンに鬼気迫った表情で更に問い詰めた。
「ちょっと待て、ルーメン。ティアの事件は、国内の多数貴族が関わっていることが懸念されていた。そうなると、魔族と繋がっている者共がいるということか?それに、魔族が私たちの身近に来ているというのは本当なのか!?」
ーーそうだ、確かティアが誘拐されたあの事件は未だ解決していない。あの事件は、王宮内に居たティアが誘拐されるという普段ならあり得るはずもない不可解なことだった。当時、誘拐されたと分かった直後、男爵位の男を筆頭に他数名の貴族が使用人等の証言から実行犯として捕縛された。そいつ等を詰問し口を割らせようと試みたが支離滅裂な意味不明な言葉を叫び、挙げ句の果てには獄中にて全員自害したのだ。王家や調査をしていた騎士団は、人海戦術で早期にティアを見つけることが出来たが、黒幕がいることを分かっていながらも捕まえるまでに至らなかったのだ。
レオナールは、アリウスの言葉でふと過去の事件を思い出したが、ルーメンに視線を向け話の続きを見守った。
『そんなことは、儂も知らんわい。儂は、魔族が来ているということも含めて、あるがままの事実を伝えただけじゃしの。』
ルーメンは、アリウスに呆れたように呟く。
アリウスは、そんなルーメンの態度に気が抜けた表情を浮かべた。
「そうか……すまない。だが、可能性がある以上慎重にことを運ぶ必要があるな。それよりも、ルーメン……それ程までに詳しいのであれば呪いを解呪する方法は知らないのか?」
『もちろん、知っておるわい。』
アリウスの質問に軽い口調で即答するルーメン。
アリウス達は、一瞬呆気に取られるもアリウスとティアが反応する。
「な、なら教えてくれ!どうすればいいんだ!?」
『是非、教えて下さい。お願いします!』
ルーメンは、そんな二人の真剣な訴えを聞きつつ話を進める。
『誰も教えんなんて言ってないじゃろうが。そもそも、それを教える為に儂等は姿を見せたんじゃ。解呪する方法は、呪いを掛けた魔族を殺すか、呪いを掛けられた者が死ぬかしかない。』
「……え?」
ルーメンの言葉でアリウスの口からふと声が漏れる。そして、その表情は青褪めたものだった。ティアも目尻に涙を溜めて俯き両手で顔を覆う。
この広い世界で呪いを掛けた魔族を探すというのは、不可能に近く無情というしかない。リリルは、そんな二人の姿を悲しげな表情で見守っていた。
ーーだが、そんな空気の中ルーメンは慌てたように言葉を紡ぐ。
『待て待て。まだ話が終わっとらん。確かに解呪の方法はそれしかないが望みはある!』
ルーメンの一言で、アリウス達は一斉に顔を上げルーメンに視線が注がれる。
『呪いというのは、魔族特有と言っても全員が使えるわけではなく呪いの種類も千差万別、そして限られた者しか使えんのじゃよ。そして呪いは、一律にしてデメリットもある。それは、呪いを掛けた者のある程度近くにいないと呪いが施術者に返ってくるという諸刃の剣じゃ。ある程度と言っても、広くても王国内といったとこかの。即ち、ティアに呪いが掛かっているという事実がある以上、魔族は王国内に存在するということじゃ。』
ルーメンの話が終わるとアリウスとティアは、互いに顔を見合わせ表情が緩む。
「それなら早速洗いだすべきか?……いや、無理に刺激すると何をしでかすか分からんな。多くの民の命を犠牲にするかもしれないし。」
アリウスは、早速対策案を考え出す。しかし、魔族という未知の存在がどんな事をしでかすか分からないため下手に手を出せないでいた。
『そうじゃの。アリウスと呼ばせてもらうが、お主の言う通りじゃ。ティアには悪いが、呪いとは言っても死ぬわけじゃない呪いじゃし、相手方が尻尾を見せるまで静観するのが得策じゃろうな。
まぁ〜……呪詛返しが離れると出来るのであればティアが離れればいいんじゃろうが相手も馬鹿ではあるまい。離れれば自ずと反応があろうが、移動時に何が起こるか分からんしティアの危険は増すばかりじゃ。魔族を焦らして、いつかティアを始末しに動き出すまで待つのが一番の安全且つ好機かの。』
「なるほど。それが一番いい考えかも知れないな。……だが、ティアは、それまで怖い思いをすることになる。だとすれば、もっといい案が……。」
アリウスは、ルーメンの考えに一番の好機を見出し納得する。
しかし、兄としての想いがアリウスを困惑させていた。
『私は、大丈夫です。お兄様もリリルも城のみんなも守ってくれると信じてます。それに、レオナール様も。』
そんな葛藤を抱いていたアリウスを思ってか、満面な笑みを浮かべるティア。
「そうか……すまない。必ず私達が守って見せるから心配するな。」
「そうです。私達がついておりますのでご安心を!」
アリウスとリリルは、それぞれ笑みを浮かべながらティアに話し掛け、場は暖かい雰囲気に包まれる。
ーーそんな暖かい雰囲気に包まれている中、少し離れたところでレオナールは、悲し気な瞳でティアを見つめていた。
「…………俺は、次いでなのか。」
『フォフォフォ、まだまだ前途多難じゃの。』
振り向くとルーメンだけじゃなく龍達ニヤニヤと笑みを浮かべていた。
ーー忘れてた。龍達と繋がっていたことを……。
レオナールは、後悔しつつもこれから始まるアリウスとの特訓に気持ちを切り替え、アリウス達の元に駆け寄るのだった。
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追記
当たり前なことを失念しておりました。
呪いが距離をとることで、呪詛返しになるのであればティア自体が遠方に行けばいい……そりゃそうだ笑
感想頂いた方々ありがとうございました。会話を少し修正しました。




