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08:ダンス

大変遅れてしまい申し訳ありません。

コレからピッチを上げていこうと思ってますので、最後までお付き合い下さい。


Vatican VCSO headquarters


ベスト16が出揃いいよいよ本当の最強を決めるホーリナーが出揃った、どのホーリナーも誰よりも秀でたところはある、恐らく誰が勝ってもおかしくはない戦い。


『さぁ出揃ったぜ!恐らくココにいる奴らは本当に神に愛された奴らだ!

第一回戦は知識神“全能のダグザ”対火神“千手の祝融”!

第二回戦は護法神“殺壁の帝釈天”対創造神“万状のズルワーン”!

第三回戦は死神“死神のタナトス”対悪神“悪神のアカ・マナフ”!

第四回戦は音楽神“音速の緊那羅”対文化神“雲避のケツァルコアトル”!

第五回戦は破壊神“道化のモリガン”対地母神“鎖蛇のコアトリクエ”!

第六回戦は太陽神“太陽のヘリオス”対海神“反響のニヨルド”!

第七回戦は戦闘神“天竜の阿修羅”対商業神“舞踏のメルクリウス”!

最終第八回戦は風神“鎌鼬のククルカン”対月神“魔女のアルテミス”!

どの戦いも注目株だよな!?正直ココまでのカードが組まれたら甲乙つけがたいぜ!

特に初戦注目なのダグザと祝融の主従対決、タナトスとアカ・マナフの悪対決、ヘリオスとニヨルドの火と水の対決、そしてククルカンとアルテミスの対大量戦術・遠距離型最強対決!

こりゃ本当に熱い試合になりそうだよな!?明日が楽しみだよな!?まぁその熱い余韻はコレから始まる最後の晩餐まで残しておきな!そんでホームシックになった奴は早く支部に帰りな!コレから始まる熱い試合を見たくないんならな!』















夜になり女性ホーリナーはドレス、男性ホーリナーはタキシードに身を包んで、前日と同じように晩餐会に出た。

昨日とは違い落ち着き、本当に高貴なパーティーと言った具合だ。

そして昨日と違うのは晩餐の主旨がダンスパーティーという事だ、そして元帥曰くベスト16に出場したホーリナーによる‘何か’があるらしい、それはベスト16のホーリナー本人すら知らない、また元帥の遊び心に惑わされるホーリナーな達。


「じゃあダンスパーティーに出たい人は中央に男女ペアで出てきてよ!」


元帥の声で真っ先に出てきたのはケツァルコアトルとコアトリクエ、恐らくダンスパーティーとなればこの二人の独壇場となるであろう。

そして走って阿修羅に近寄るヘリオス、阿修羅は嫌な予感が頭をよぎる。


「阿修羅ぁ!踊ろうッスよ?」

「はぁ、ヘリオス、貴方踊れるの?」

「余裕ッスよ!……こんな感じッスよね?」


ヘリオスはステップを軽く踏んでみせる、阿修羅は目を丸くしてヘリオスを見た。


「どこでそんな事を?」

「今日ダンスパーティーがあるからってダグザに教わったんスよ、何度死にかけた事か………」


ヘリオスは思い出して顔色を悪くする、どんな特訓をしたのか阿修羅には聞かずとも分かった、しかしヘリオスもダグザに教わればどうなるか知っているはず、そこまでして阿修羅と踊ろうとしていた事に感動した。


「もしかして阿修羅踊れないんスか?」

「はぁ、コレでも根っからのお嬢様よ?ダンスは小さいコレから叩き込まれから大丈夫」

「じゃあ、よろしくッスよ」


ヘリオスは方膝を着いて阿修羅の手を取る、阿修羅はドレスのスカートを軽く持ち上げ頭を下げ、中央に出ていった。



緊那羅は華美な世界などお構い無しに食に走る、花より団子、それが緊那羅にはふさわしい。

そこにぼーっと歩いていたタナトスが近寄る、緊那羅は気付いていても箸を休めない。


「何だ、テメェは踊る男がいないのか?」

「ほなははふいふぇるはふよ(お腹が空いてるだけよ)」


タナトスは苦笑いを浮かべて水を差し出す、緊那羅は飲み込んでまた箸を進めようとするが、タナトスがその手を制止した。


「何よ?」

「食べてばかりいないで踊ったらどうだ?」


緊那羅は黙り込んでしまった、ばつが悪そうな顔でタナトスと反対側を向いてしまった、しかしタナトスは回りこんで覗き込む。


「踊れないんだな?」


初めて緊那羅より優位に立つタナトス、しかしいつものタナトスならいじり倒す所だが、今回のタナトスは何故か緊那羅の手を取った、緊那羅はビックリしてタナトスの顔を見る。


「知らないなら教えてやる」

「い、嫌よ」

「何でだ?」

「……………恥じかきたくない」


タナトスは鼻で笑ってそのまま歩き出す。


「俺が恥をかかせない、俺がサポートしてやる」

「う、うん」

「喜べ、俺様が人に教えるなんてないぞ」

「ありがとう」


緊那羅はタナトスに手を引かれるがまま中央に出ていった、それは緊那羅にとって初めての体験、男勝りの緊那羅にとってエスコートされる等初めての経験だった。

そして、大切な人を無くした二人傷を埋めていた。




ダグザと祝融は中央で踊るホーリナーをただ眺めていた、いや、実際にはダグザのみ、祝融はダグザの後ろからダンスパーティーとダグザを交互に見ている。

主従、その関係が祝融にとってもどかしく感じる事もある、祝融にとってダグザは初めて負けた相手、そして祝融の事を初めて女として扱ってくれた人、それは祝融にとっては大きかった。

しかしダグザの事は分かっているつもり、ダグザにとって自分は駒であり、ただの奴隷にしか過ぎない、故に祝融の持っている感情は一人よがりであり、抱くだけ無駄、そして痛みだけしか残さない感情。


「あのタナトスまで踊ってる、元帥の馬鹿の思惑どおりだな」

「そうですネ」

「ヘリオスの馬鹿に教えただけある、まともに踊れてる」

「酷かったですからネ」


ダグザは踊るホーリナーを見て毒を吐くだけで楽しんでいる、ダグザはいつまで経ってもダグザであり、タナトスのように空気に呑まれる事などまずない。

そう、つまり祝融から行動を起こさない限りこの‘観客’という立場は変わらない、しかし祝融の立場はダグザに何かを持ち出せるような立場ではない、つまり祝融は勇気というモノをフルに絞り出さない限り打開策は皆無ということ。

そして祝融は何とか絞りだそうとする、勇気、使った事のない勇気を精一杯絞り出す。


「だ、ダグザ様」

「何だ?」

「わ、私たちも、おど、お、おどり、お…………」


どうしてもドモってしまう、最後の一言が出てこない。


「何だ?貴様も踊りたいのか?」

「………………は、はい」

「なら先に言え」


ダグザは祝融に手を差し出した、祝融は驚き、その手をただ見つめ、目に若干の涙を溜める。


「どうした?」

「イヤ、踊ってくれるなんて、思ってなかったんデス」

「貴様が踊りたいなら踊るが、どうする?」

「お願いしマス!」


祝融はダグザの手を取った、ダグザは微笑み祝融をエスコートする、それは祝融にとって至福の時間だった。




トイレに行ってから迷ってしまった摩和羅女まわらにょ、迷路のような本部を泣きながら歩き回る、ホーリナーとしての強さは天下逸品だが、一人は大っ嫌いな寂しがり、そして大の泣き虫、甘えん坊も抜けないただの子供である(今は16歳で阿修羅がホーリナーになった歳)。


「阿修羅ぁ!緊那羅ぁ!沙羯羅ぁ!何処にいるんだぁ!?出てきてくれよぉ!」


それを聞き付けて一人の少年が近付いて来た、タキシードを着ていても何故か頭のバンダナだけは外さない少年。


「摩和羅女さん、どうしたんですか?」


摩和羅女はその少年の顔を見た。


「ず、ズルワーン?」

「はい、摩和羅女さんは何で泣いているんですか?」

「ま、迷子になったぁ!」


涙を流しながら泣き叫ぶ摩和羅女、ズルワーンはポケットからハンカチを取り出して摩和羅女の涙を拭いた。


「帰り道が分からないんですか?」

「そうだ、トイレに行ったら迷子になった」

「と、トイレですか………」


ズルワーンは苦笑いを浮かべた、そう、トイレは会場を出てから5m程歩き、曲がり角を右に曲がってすぐの所にある、つまり、迷うなどそれこそ神業。

そして二人がいるのは1フロア上、どうやったらココまで迷えるのか不思議でしょうがなかった。


「帰り道教えるんで帰れますよね?」

「一緒に来てくれないのか?」

「僕は人混みを見てると人酔いしちゃうんですよ、それにうるさいのも嫌いですし、この前は挨拶したかっただけなので我慢してましたけど」

「ならアタシもココにいるぞ!うん!」


摩和羅女は近くにあったベンチに座った、そこには料理の山が何皿も。


ぐぅ〜………


摩和羅女の腹の虫、摩和羅女は乙女らしく顔を真っ赤にする、ズルワーンはまったく気にせずに優しい笑顔を作った。


「食べて良いですよ、僕はお腹いっぱいなん―――」

ぐぅ〜………


今度はズルワーンの腹の虫が悲鳴を上げた、それを聞いて二人は笑いだした。


「やっぱり食べても良いですか?」

「こんな量アタシだけじゃ食べきれないぞ!一緒に食べよう!うん!」

「ありがとうございます」


しかしフォークは一つしかない、長期戦を仮定していてこの量、そして一人でこのあり得ない量を食べる予定だったのでフォークは一つ。


「フォーク使って下さい」

「アタシは大丈夫だ!…………ほれ!」


摩和羅女は腕輪に触れて得物である針、針鬼を2本取り出して箸のようにする。


「それじゃあ先がとがってて危ないですよ!僕は大丈夫なので使って下さい」

「本当か?」

「はい!」


ズルワーンは近くにある鉄製の取っ手を掴んだ、摩和羅女は何が始まるのか興味津々と言った具合。


「コンストラクション【構築】」


その瞬間取っ手がフォークに変わった。


「凄い!凄いぞそれ!」

「そ、そんな事ないですよ」


ズルワーンは照れて顔を真っ赤にする、本来なら戦いで絶大な力を発揮するこの神技、しかしズルワーンとしてはこういうちょっとした事に使った方が気分が良い。


「では食べましょうか?」

「食べよう!うん!………‘いただきます!’」

「イタダキマス?」


ズルワーンは疑問符を浮かべた、そう、海外で神に感謝する習慣はあっても‘いただきます’という言葉は存在しない。


「‘いただきます’っていうのは、素材を作れる土壌をくれた神様、素材を作ってくれた農家の人達、この食べ物を作ってくれ人達に感謝する言葉ってかかさまが言ってた!」

「素晴らしい言葉ですね、僕も言っても良いですか?」

「当たり前だ!良いことだぞ!うん!」

「じゃあ―――」

「「いただきます!」」




モリガンは片隅で椅子に座りながら賑わう人々を見ていた、何でこんな他人の下手くそな踊りを見て楽しめる?そう言った具合だ。

ボールのまま持ってきたサラダを抱え、ただ無心に食べ続ける、機械のように決められた動きで、仮面が取れても何も変わらないモリガン、本当な蝋人形という形容がふさわしい。

しかしモリガンの時間を脅かす一人の女にモリガンは気付いていない、その女性はモリガンの後ろに回り込み目を手で覆うとカップル定番の――


「だぁれだ?」

「殺すよ?メルクリウス」


メルクリウスの遊び心を殺気で返すモリガン、さすがモリガンと言ったところ、しかしメルクリウスもまけじと笑顔でモリガンの前に座る。


「何だい?邪魔だよ」

「踊りましょうよ!?」

「拒否する、踊りは見るものだ、それに食事中だし」

「ココからじゃ見えないじゃないですか」

「素人の踊りで喜ぶ粋狂な奴らを見てる方が楽しいからね」


そしてまたサラダを口に運ぶ。


「何でサラダをそんなに?」

「草食動物の方が肉食動物よりも大きいじゃないか」

「もしかして小さいのを気にしてるんですか?」

「う、うるさい!君には関係ないだろ!」


モリガンは顔を真っ赤にした、モリガンの珍しい表情に悦が入るメルクリウス。


「ちなみにダンスは身長が伸びますよ、ダンサーに小さい人ってあんまりいないじゃないですか?」

「逆じゃないのかい?小さいと表現力に欠けるからダンサーになれないんだと思うけどね、それに僕は伸びてないし」

「ダンスやってたんですか!?」

「親に無理矢理やらされてたよ、小さい頃から嫌という程ね、お陰で親が嫌いになって、殺したさ。

親は僕が悪い事してるなんて知らずにお坊っちゃんだと思ってたらしいよ、本当に馬鹿だよね、裏では人のもの盗んだり、ムカつく奴の家に爆弾仕掛けたり、うっとうしい奴にはカラスの死骸プレゼントしたり、学校が嫌で学校燃やしてみたり、貯水槽にヒ素いれたりしてるのにも気付かず、だから実子に殺されるんだよ」


モリガンは若干の笑顔でそれらを話す、メルクリウスは酷いという言葉しか出ない、確かに酷い、恐らくバレていれば法律を変えるくらいの悪だ。


「まぁ過去の話だよ、分かったら帰ってくれないかな?」

「嫌です!アタシがモリガンさんを更正させます!では一緒に踊りましょう!」

「僕は、って!おい!辞めろ!」


メルクリウスはモリガンの手を無理矢理引っ張ってダンスホールに向かった。




沙羯羅は片手にジュースを持ちながら人を捜していた、それは帝釈天、誰に聞いても何処へ行っても見つからない、だからこそ見付けてやろうという沙羯羅の維持。

中央では阿修羅とヘリオス、ぶっきらぼうな緊那羅とタナトス、ダグザと祝融、モリガンとメルクリウス、見知った顔ばかりが踊っている。


「皆ダンナがいて羨ましいなぁ」


そんな沙羯羅を見付けては男性ホーリナーが。


「沙羯羅さん、俺と踊りませんか?」


と誘って来る、しかし沙羯羅はその度に。


「結構です」


と断り帝釈天を捜す。


そんな沙羯羅にまた一人近寄る男。


「おい女、俺と踊れ」


無理矢理沙羯羅の腕を掴み中央に向かおうとするアカ・マナフ、沙羯羅は無理矢理振りほどいて睨む。


「お前みたいな良い女と踊りたいから俺と踊れ」

「嫌だ、女の子を口説きたいならもうちょっとましな口説き文句考えてよ」

「俺が踊りたいだけだ、お前の意見なんて聞いてねぇ」


再び腕を掴み、今回は更に強く引っ張る、いくらホーリナーと言えど男性に力で敵う訳がない。

沙羯羅が涙ぐみ、叫ぼうと思った瞬間、誰かがアカ・マナフの腕を掴み上げた、沙羯羅は期待しながら掴まれていた腕を引く。


「アンタ最悪だね、踊りたいなら口説いてからにしな」


そこにいたのはアルテミスだった、そしてアカ・マナフはSPにつまみ出される。

沙羯羅は涙を拭い、若干の失望の目でアルテミスを見た。


「帝釈天なら外にいるよ」

「ほ、本当!?」

「あぁ、一人で空を見てふけってやがる、会いたいんだろ?早く行きな」

「ありがとうね、アルテミス!」


沙羯羅は悲しみに染まった顔を笑顔に変え、走って唯一外に出られる出口に向かった。

外に行くと確かにベンチで横になってる帝釈天がいた、沙羯羅は上から帝釈天を覗き込む。


「沙羯羅か」

「沙羯羅か、じゃない!馬鹿!」


沙羯羅は一気に涙が溢れだした、安堵と、先程の恐怖が一気に襲って来て。


「す、すまない、俺は何かしたか?」

「してない、してないけど馬鹿」


帝釈天はベンチに座り直し、沙羯羅のスペースを空けた、沙羯羅はそこに座るととめどない涙を拭う。


「何があった?」

「帝釈天の事捜してた、そしたら、アカ・マナフが無理矢理私と踊ろうとして、アルテミスに助けられた。

帝釈天がいれば何もなかったのに、帝釈天の馬鹿!」

「すまない、どうもあの雰囲気に慣れていなくて」

「悪いと思ってるなら踊ってよ」

「いや、俺は産まれてから戦いしか知らないから踊れない」

「知らない!」


帝釈天はこめかみを掻きながらどうしようかと悩む、戦いしか知らない帝釈天にとってダンスとは未知の世界。


「踊らないの?」


沙羯羅は涙を溜めた瞳で帝釈天を睨む。


「しかし俺は………」

「踊れないなら教える」

「踊りたいのか?」


沙羯羅は涙をまき散らしながら思いっきり頷いた。


「どうなっても知らないからな」


帝釈天は立ち上がり、沙羯羅に手を差し出した、沙羯羅は笑顔でその手を取ると二人は会場に入って行った。

なんか恋愛が大半を占めてしまいましたね。

次回からは戦闘ラッシュです。

今まで戦闘シーンがなかったキャラクターや、まともに戦ってないキャラクターがモロに戦います!



ちなみに、少し気が早いですが次回作の設定が固まってきました。

霊鬼編が悪魔編の序章だとしたら、今作は次回作の序章になります、そして、全てのキーワードが解けるのでお付き合い頂けたら光栄でし。

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