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06:プライド


Vatican VCSO headquarters


トーナメントが始まり活気に拍車がかかるバチカン、力試しの絶好の場だ。

最初から神選10階クラスの者と当たる者は傷を付けられればラッキー、負けて当たり前、力に自信がある者はあわよくばベスト16と。



トーナメントはVCSOが開発した新型の機械、悪魔が移動に使う黒い穴を解析し、それにより作り出せる異次元空間、そして前々から研究が進められていた神技による手合わせ、それらを結集して戦いによる死を擬似的にし五感は残したまま戦えるようになった。

つまり、痛みは勿論死ぬこともあり得るが、それはゲームの中でのゲームオーバーであり実際の死とは関係ない。

試合は異次元で行われるため建造物や自然の破壊も気にせずに済む、コレが最強を決めるタメに用意されたステージだ。




神技10階クラスのホーリナーは危なげなく勝ち抜き、残るは予選最終試合、アルテミスと摩和羅女の戦いのみとなった。


二人のフィールドは人から捨てられた街、埃は溜まり、健在な建物は皆無、その瓦礫により不安定な足場に加え死角の多さ、遠距離型にとっては最悪な条件と言えよう。


二人はお互い隠れて相手の出方を伺っている、アルテミスは顔を出そうとした時、微妙に足音が鳴ってしまった、普通なら聞こえないであろうその距離、しかし摩和羅女は迷わずに得物である針、針鬼を投げた。

アルテミスは慌てて避けると、アルテミスのいた所に凄まじい勢いで針鬼が通りすぎた。

それに冷や汗をかいてる暇もなく新しい針鬼が放たれた、それは真っ直ぐとアルテミスの心臓を貫こうとする。

アルテミスは即座に得物であるチャクラム、フルムーンを投げ、針鬼に当たるものの簡単にはね退けられてしまった。


「コンクリートを貫くだけの力はあるんだね」


アルテミスはギリギリまで引き付け、フルムーンを握りそのまま弾いた。


「エクスペンション【拡大】!」


アルテミスはフルムーンを大きくすると走り出した、摩和羅女は針鬼を投げるが意図も簡単に弾き飛ばされてしまう。


「近距離ならアタイの方が上だよ!」


アルテミスは横薙にフルムーンを振るうが摩和羅女に手で止められてしまう、手とフルムーンの間には針鬼がある。


「アタシだって近距離は得意だぞ!」


そのまま手の平でアルテミスのみぞおちを殴った、アルテミスは後ろに飛ぶが、体勢を崩しながらもフルムーンを投げた、摩和羅女は針鬼を握り難なく弾き飛ばすが、フルムーンの影には別のフルムーンあった。

摩和羅女は避けきれずに頬を切ってしまった、そしてその間に体勢を立て直し拳を振り上げたアルテミスが近づいていた、完全に意表を突かれ摩和羅女は殴り飛ばされてしまう。


「アンタとアタイだと場数が違うんだよ!」

「アタシだってかかさまに鍛えられたから強いぞ!」


摩和羅女は地面に体を擦りながらも針鬼を投げていた、何とか弾き飛ばすが摩和羅女への反撃のチャンスを失ってしまった。



その頃二人の試合を楽しそうに眺めている元帥と毘沙門天、ランギがいた。


「毘沙門天、もしかして摩和羅女ちゃんの‘かかさま’って………」

「あぁ、多分な、俺と阿修羅あすらを簡単に手放したあの支部長が頑に手放そうとしなかった、当時遠距離型最強だといわれていた守護神の乾闥婆けんだつばだ」

「理解、故強者、血統良好」

「彼女がいればホーリナーラグナロクももう少し被害は軽減されたんだろうね」

「まぁ離反してそれ以来消息不明だがな、まさかこんな宝物を残してくれるとはビックリだぜ」


乾闥婆、全く動く暇もなく殺される事から言われていたのが“立殺の乾闥婆”、毘沙門天と乾闥婆の二人の連携は誰も勝てないとことから“絶対双壁”と言われ、当時の元帥が阿修羅あすらよりも欲していたという。


「あの頃の日本支部は強かったなぁ、特に阿修羅あすらに毘沙門天に乾闥婆、後は先代の迦楼羅かるらかな?」

「迦楼羅、対大量戦術最強」

「お前が最強だろ!?確かに迦楼羅は強かったけどお前には負ける」

「今の迦楼羅とは大違いだよねぇ」







二人は息を切らしながら構えている、一進一退、ほとんど五分と言える戦い、気を抜けば殺される、しかし相手の隙を突かなくては殺せない。


「アンタやるじゃないか、神徳がないのにアタイにココまで喰らい付くなんて」

「アタシだって日本支部の一員だ、緊那羅や阿修羅ばっかりが日本支部じゃないんだぞ」

「そうだな、まぁアタイはほっとしてるよ、アンタに神徳があったら間違いなくアンタが最強だ」


アルテミスはフルムーンを投げた、摩和羅女は針鬼を投げて弾き飛ばそうとするが。


「エクスペンション【拡大】」


フルムーンは大きくなり針鬼を弾き飛ばした、そして勢いを殺さずに摩和羅女に向かう。

摩和羅女は避けきれないと判断し、針鬼を持ち、思いっきりフルムーンを叩くが、その力の前では摩和羅女の非力な肉体は簡単に吹き飛ばされてしまった。

摩和羅女は何とか体勢を立て直して反撃に移ろうとするが、顔を前に向けると大量のフルムーンがある。

直ぐ様両手に持てるだけの針鬼を持ち、投げるが時既に遅し、大量のフルムーンが一斉に摩和羅女の体を切り裂く。


「ぃやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


ズタズタに体を切り裂かれ、身体中から血を流しながら倒れた摩和羅女。

誰もが死んだと思ったが、どちらかが死ぬと異次元空間であるフィールドから強制的にバチカンに戻される、そう、まだココにいるという事は摩和羅女は生きているという事。


「何だ?気絶してるのかい?ならとっとと終わらせないと可哀想だね」


アルテミスはフルムーンを握りながら倒れている摩和羅女に近付く、完全に誰も摩和羅女が意識を保っているとは思っていない。

しかし摩和羅女の左手がピクリと動く、アルテミスが気付いた時には遅かった、針鬼に腹を貫かれていた。


「アタシはまだまだ戦えるぞ!」


摩和羅女は首の後ろの辺りを自分で突き刺すと、軽々と立ち上がり針鬼をアルテミスに投げる、アルテミスは寸前で体を微妙にずらして針鬼を顔にかすらせた。

しかし摩和羅女はそのまま走ってアルテミスに向かう。


「アンタ何でそんなに体が動くんだよ!?普通なら痛みで立ってられないだろ!?」

「痛みくらい消せるぞ!」

「まさかアンタ、さっきのはツボを突いたってのかい!?」

「そうだぞ!うん!」

「馬鹿だろ!?そんな所1ミリでもずれたら死ぬのに、何でそんな安々と…………」




フィールドのモニターを見ている阿修羅と緊那羅、沙羯羅はクスクスと笑っていた、摩和羅女の強さ、それは誰よりもこの3人が知っているからだ。


「まだアイツ摩和羅女の本当の強さに気付いてないみたいだよ?」

「摩和羅女の前では止まってても動いてても意味ないもんねぇ」

「緊那羅も摩和羅女に助けられた口だしね?」


緊那羅の首には針鬼が貫いた傷跡がある、阿修羅の腕があっても的確に相手を仮死状態に出来るだけの正確性、それは摩和羅女だけに出来る芸当。




摩和羅女とアルテミスは体術で接近戦に持ち込み、少しでも離れれば得物を投げる、そしてお互いの体力を確実に減らして行った。


アルテミスが投げたフルムーンに突っ込む摩和羅女、そして空中で蹴り飛ばし、その時の力を余したまま空中でアルテミスに背を向けて摩和羅女の攻撃範囲に入った瞬間、体を捻って空中で回し蹴りを放つ、まさに軽業の骨頂。

しかしアルテミスは軽々と腕で受けると摩和羅女を殴ろうとする、摩和羅女はその拳を足場にして後ろに回転する、そしてその間にも針鬼を投げていた。

アルテミスはフルムーンを握り弾き飛ばす、しかしあっという間に摩和羅女が近寄って来た、アルテミスは手の平を摩和羅女に向けてニヤリと笑う。


「ルナティック【狂気】!」


フルムーンが顕現され、妖しい光が摩和羅女を包む、そして摩和羅女の動きが止まる。


「な、………何、を?」

「そんだけ体力を消耗してたら対抗は出来ないだろ?」

「い、嫌だぁ!」


摩和羅女は針鬼で首を刺した、そして息を切らしながら片膝を地面に着く。


「アンタ、今度は気付のツボを?」

「アタシは、最強、なんて、興味、ない、ただ、負けたく、ない」

「何でそこまでして?アンタはアタイと戦うには圧倒的に不利なんだよ!?」

「かかさまが見てる前で負けちゃいけないんだ!」


摩和羅女は思いっきり針鬼を投げた、アルテミスはフルムーンを握って弾き飛ばそうとするが、逆に針鬼に弾かれてしまう、針鬼は若干軌道を変えてアルテミスの肩を貫いた。

そして摩和羅女は飛び上がり、頭を下に向けている。


「ファイヤーワークス【花火】!」


身体中から放たれる針鬼、その量と威力から考えて避けるのはほぼ不可能と思えた。


「エクスペンション【拡大】!リデューション【縮小】!」


凄まじい程の金属音、まさに鉄の豪雨が鉄板を叩いている音。

アルテミスはフルムーンを拡大し、その内側から更にフルムーンを拡大、それを繰り返し幾重にも密集したフルムーンの盾を作り出した。

それを完全に盾にして着地した摩和羅女に向かって走り出す、しかし摩和羅女は気付いていた、内側から拡げれば完全な鉄板は出来ない、確実に僅かな穴が空く事を。


「アタシはどんな隙間でも通せるぞ!」


摩和羅女は軽々と1ミリしかないフルムーンの中心を通した、しかしアルテミスはフルムーンを振り上げる、その口には針鬼がくわえられていた。

そしてアルテミスは針鬼を吐き出し、ニヤリと笑う。


「アンタの唯一の欠点、それは完璧すぎるところだよ!

でも認めてやるよ、アンタが遠距離型最強だ」


アルテミスはそのままフルムーンを振り下ろした。




異空間から弾き出される摩和羅女とアルテミス、そして会場の盛り上がり尋常じゃないものだった。


『終了だぁ!勝者はアルテミス!だけどお前ら!摩和羅女の強さは半端なもんじゃねぇよな!?アルテミスが何故勝てたか?って?そんなもん簡単だ!死線をくぐり抜けて来た数が違うんだよ!

でも気をつけろ!後2、3年もして摩和羅女が良い女になったら怖いぜ!手が付けられないから気を付けておけ!』


摩和羅女は泣きながら阿修羅に抱きついた、阿修羅は慣れたかのように頭を撫でる、アルテミスは居心地が悪くなりながらも摩和羅女に近寄った。


「今回は運だ、アンタ場数を踏めば絶対に強くなるよ」

「ほ、本当か?」


摩和羅女は阿修羅から顔を離して、少しだけアルテミスを見る。


「あぁ、アンタは強かった」

「アタシも頑張るぞ!うん!次は負けないからな!」

「アタイも負けるわけにはいかないんでね」













ホーリナー遠距離型最強―――――――――月神・アルテミス

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