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16:友情?


Vatican VCSO headquarters


ベスト16第8回戦、アルテミス対ククルカン


大きな街、都会と言えるような街のメインストリート、ビル群の隙間にいるアルテミスとククルカン、狭い空に高い壁、それは押し潰されそうになるような圧迫感、そこに人一人いないのは不自然以外の何物でもない。

アルテミスは激しく苛ついている、それは精神状態が優れないククルカンに対して、ユピテルが死んでから死んだような目をしているククルカン、アルテミスはそんなククルカンが嫌で嫌でしょうがなかった。


「ククルカン、アンタ少しは目を覚ましたらどうだい?」


「アルテミスに何が分かるっての」


「確かに分からないね、ただ分かる気はさらさらないよ」


ただの睨み合い、それは冷たく、そして意味をなさない時間、しかしククルカンがユラユラとおぼつかない足で近寄る、その過程で腕輪に触れた、得物は刃以外を覆うように刃のナックルガードが付いた槍、名はルドラシス、アルテミスも腕輪に触れた、得物はドーナツ型の暗器、チャクラム、名はフルムーン。

ククルカンは攻撃範囲内に入ると一気に踏み込む、大振りでルドラシスを叩きつけるが、アルテミスに簡単に避けられ、更に顔面を蹴られて尻餅をついてしまう。

それでも命がない人形のように立ち上がり、アルテミスに向かってルドラシスを振り下ろす。


「いくらがむしゃらな戦闘って言っても、これは意味がないって気付きな」


今度は腹を蹴り飛ばす、よろめきながら後退するが、やはり歩いて来るククルカン、それによりアルテミスの中で何かが弾け飛んだ。


「アンタいい加減にしなよ!」


再びデタラメな動きで横薙に払うククルカンに対し、体勢を低くして避けると、タックルをして押し倒した。

ルドラシスを蹴り飛ばして馬乗りの状態になると、ククルカンの胸ぐらを掴んで引き寄せる。


「アンタホーリナーだろ!ホーリナーに恋したんならいつ死別しても覚悟出来てるんじゃなかったのかい!?」


「何が分かるっていうの?」


「何も分からないね!ただアンタが腐りきっているっていうのは分かるよ!アンタが愛したユピテルってのはアンタのサバサバした性格が好きだったんじゃないのかい!?」


ククルカンの一寸の目に感情が戻る、それは明確な殺意。


「もうユピテルはいないんだよ!?ユピテルがいない世界なら生きる価値なんてない!」


「アンタ!」


アルテミスは思いっきりククルカンを殴った。


「ユピテルはアンタのために死ぬ気で頑張ったんじゃないのかい!?アンタの笑顔が好きだからいつも頑張ってたんじゃないのかい!?

アンタの笑顔以外何でユピテルを弔う!アンタの笑顔のために死んだユピテルの死を無駄にしてるんだよ!?」


アルテミスは完全に怒りに身を任せ、もう一度殴ろうとする、しかしそれはククルカンに止められてしまう、そしてククルカンの目はユピテルがいた頃の目に戻っていた。


「ムカつくムカつく!アルテミスに何が分かるっていうの!ユピテルが守りたいのは笑顔じゃない!うちの大好きなこの世界全て!

そんでそんで!うちとユピテルが出会えた神選10階だよ!」


アルテミスの顔は怒りから笑顔へと変わった。


「ならアンタがやる事は分かってるんだね?」


「当然当然、ユピテルが守りたいものはうちも守りたい、だからだから、精一杯戦って、死んでからユピテルにいっぱいいっぱい自慢してやるんだから」


ククルカンはアルテミスの腕を掴み、そのまま投げ飛ばした、アルテミスはビルの壁に叩き付けられるが、すぐに立ち上がる、しかしルドラシスを顕現したククルカンの追撃。

先程とは比べものにならない速さで振り降ろされるルドラシス、アルテミスはそれを避けると、フルムーンを投げるモーションに入るが、それよりも早くククルカンの拳が振り下ろされる。

ククルカンの拳は避けられてしまい、アスファルトの地面に突き刺さる。


「前よりデタラメになってるんじゃない?」


「うるさいうるさい!ユピテルを殺された恨み辛み、全部晴らさしてもらうからね!」


ククルカンはそのままアスファルトを剥がしてアルテミスに投げつけた、アルテミスはフルムーンを3つ、アスファルトに向かって投げる。


「エクスペンション!」


大きくなったフルムーンはアスファルトをバラバラにし、勢いを失う事なくククルカンに襲い掛かる。


「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


ククルカンはフルムーンを思いっきりルドラシスでぶっ叩いて落とす、ククルカンに落とされたフルムーンは綺麗に曲がっている、その光景に口をあんぐり開けるアルテミス。


「あ、アンタ、それディアンギットの鉄だぞ?」


ディアンギットの鉄を曲げるなど文明の利器では不可能、核兵器をうけてもビクともしない強度だ。


「関係ない関係ない!うちに刃を向ける奴は全員叩き伏せる!」


「まぁそっちの方がアンタらしくて良いね」















ダグザ、タナトス、ヘリオス、モリガンは神選10階の待合室でモニターを見ていた、一番古く、ユピテルを含めた7人は神選10階にいたのが長い、だからこそククルカンの気持ちが多少なりとも分かるし、アルテミスの気持ちも分かる。


「やっぱりあの二人は仲良いんじゃないッスか?」


「どこをどうすればそう見えるんだい?」


「ただあいつらを見てるとスカッとするよな」


「誰よりもぶつかり合った分、誰よりもお互いを理解してるんだろうな、そうなるとククルカンの目を覚まさせられるのはアルテミスだけだったんだろうな」


そしてフルムーンが叩きつけられ、見るも無惨な曲がり方をした場面になると、そこにいた全員はアルテミスと同じ顔になる。


「な、何スかあれ?得物って人間の力で曲がるもんなんスか?」


「神技を使ったようには見えなかったね、あれじゃあ僕より破壊神に近いじゃないか」


「あんなデタラメな力ありかよ?普通神技使って壊すもんだろ?」


「怒りにより神技の暴発、乱気流と引力を足し、全身のバネを使い…………、いや、不可能だ、いくら身体強化されたホーリナーといえど、ディアンギットの鉄を曲げるなど不可能だ」


全員が絶句したククルカンの一撃、アスファルトを素手で剥がす程の馬鹿力というのは知っていたが、ディアンギットの鉄を曲げる程だとは思わなかった、いや、普通はアスファルトを剥がすだけで規格外なのを何とか受け入れていた節はある、つまりククルカンは………


「「「「化け物だ」」」」



















アルテミスはフルムーンを大きくして接近戦に持ち込む、何とかククルカンと斬り結ぶアルテミス、遠距離型にしたら奇跡に近いが、これが遠距離型最強の力、そして牽制程度に新たなフルムーンを顕現して投げる、しかしククルカンがルドラシスを振ると、弾丸のような速さでビルに突き刺さる。


「それを待ってたよ!」


モーションが大きく、力任せな動きのククルカンには隙が多い、故にアルテミスはこの大振りになる瞬間を狙っていた。

フルムーンを横に振るうと、ククルカンは何とかバックステップで距離を取るが、脇腹を浅く斬られてしまう。

傷自体は大した事ではないのだが、近距離型であるククルカンに遠距離型であるアルテミスが接近戦で傷を負わせた。

むしろ1対1では遠距離型は壊滅的な弱さ、しかしそれを克服した者だけが神選10階に入れる、つまりアルテミスは狭き門をぐぐった数少ないホーリナー。


「アンタ休んでる隙はないよ」


アルテミスはフルムーンわ次々と投げる、それは暗器の常識を超えて曲がりくねり、様々な方向からからククルカンに襲い掛かる。


「バキューム!」


ククルカンはフルムーンを打ち落とすのと共に、手が回らないフルムーンは真空の突発的衝撃を使い、打ち落とした。

普通ならその不規則な動きに気を取られるが、ククルカンはアルテミスの戦い方に慣れているために、いとも簡単に打ち落とす、しかし慣れていたとしても死角から来たフルムーンまで落としてるのは不可解である。


「やるじゃないか、よく死角から狙ってるのに打ち落とせたね?」


「簡単簡単、気流の変化があるからうちに死角はない!」


「さすが、伊達に風神の神徳があるわけじゃないんだね」


「そうそう、まぁもう疲れちゃったし終わりにしようか?」


ククルカンが走り出した、アルテミスはその場から動かず、ニヤリと笑った。

ククルカンに向かって手のひらを見せる、そこにフルムーンが顕現された。


「ルナティック」


淡い光で発光する、それを見たククルカンは動きが鈍る、そして内からの自分に対する狂気に喰われそうになる。


「こ、ん………なのぉ」


ククルカンはアルテミスを睨み付ける。


「うちはこんなのに負けない!」


気合いで内からの狂気を追い出した。


「それくらい分かってたよ」


ククルカンは気付くとフルムーンに包囲されていた、これじゃあ打ち落としていては間に合わない。


「ツイスター!」


凄まじい竜巻が発生する、フルムーンは軽々と竜巻に巻かれて力を失い、風の猛威に呑まれてしまう。

アルテミスは冷静に対応する、並みの力では巻き上げられつしまう、しかし向こうは砂塵で視界がゼロ、ならばとアルテミスは一回転してフルムーンに勢いを付けて投げる。


「エクスペンション!」


巨大化するフルムーン、重量も加わり竜巻を貫く力は充分、そして竜巻に触れた瞬間、何故か竜巻は消え失せた。


「なっ!?」


そしてククルカンが投げたルドラシスがフルムーンに当たり、二つの得物は地面に落ちる。


「バキューム!」


ククルカンは神技の同時発動により、ツイスターの力を足と腕に纏わせ、まず地面を蹴る、風の力を借りて凄まじい勢いでアルテミスへと迫る。

そして腕には竜巻、そして真空、つまり腕にかまいたちを纏わせ、腕を振り上げた。

アルテミスは全て気付いていたが、このスピードに対応は出来ない、何か神技があれば相殺出来るだろうが、アルテミスに攻撃系の神技はない。


「やるじゃないか」
















二人は気付くとバチカンにいた、そしてお互い目を合わせる。


「ちょっとちょっと!最後まで頑張って戦いなよ!なに最後かっこつけてんの!?」


「うるせぇよ!アンタも近距離型なら得物をなげてんじゃないよ!プライドってもんはないかよ!?」


「黙れ黙れ!アルテミスだってぶん殴ってんじゃん!遠距離型ならさっさと急所狙って殺しなさいよ!」


「アンタに言われたくないね!戦略もクソもないめちゃくちゃな戦い方ばっかりしやがって!」


早くも喧嘩する二人、観客だったホーリナー達は口を開けて二人の喧嘩を見ている、元神選10階の面々はまたか、といった具合。


『と、とりあえず勝者はククルカンだな、なんか吹っ切れたみたいだから良かった良かった、あんなむちゃくちゃな戦い方が出来るのはククルカンだけだな、うん。

あとそこの二人、喧嘩なら裏でやれ、今日はもう終わりだ、まぁ仲が良いのは分かったよ、新手のスキンシップってやつだろ?』


ククルカンとアルテミスの獲物は実況に変わる、そして短く一言。


「「ぶっ殺す!」」








エクスペンション

拡大

得物を大きくする、その比率により使用者の力量が分かる。



ルナティック

狂気

相手の正常な思考を奪い、極度の自傷衝動を起こす、しかし、自我の強い人間に対しての効力は希薄。


バキューム

真空

真空状態を作り出す、極地的にも、広域でも可能。


ツイスター

竜巻

竜巻を作り出す、大小は使用者次第だが、その威力は使用者により左右される。

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