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【WEB版】婚約者に浮気された令嬢は異国の強面盟主に溺愛される〜呪いで猫になりましたが、毎日モフられています〜【コミカライズ・電子書籍4巻配信中】  作者:
番外編

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風邪をひいた日は~バーク視点~後編

 トレイにミルク粥とその他もろもろを載せて歩く。立ち上る湯気にのってミルク粥の甘い香りが腹を刺激する……が、その後から他の刺激臭が襲ってくる。

 オレはそれらを見下ろしながら力強く頷いた。


「これだけあれば、どれか効くだろ」


 風邪の時にコレをしたら早く治るという噂の品々。これをすればミーの風邪はすぐに治るはず!

 オレはミーの部屋のドアをノックした。


「どうぞ」


 いつもと変わらない声にホッとする。

 ドアを開けて部屋に入ると、ベッドから上半身を起こしたミーが迎えた。


「寝てないとダメだろ」


 慌てるオレにミーが眉尻をさげて微笑む。


「少し寝たら体が楽になりました」

「そうか?」


 オレはサイドテーブルにトレイを置いてミーの額に触れた。


「……確かに朝より下がっているが、いつもより熱いぞ」

「そうですか」


 どこか悲しそうに目を伏せるミー。その様子にオレは慌てた。


「別にミーを攻めているわけじゃないぞ! 悪いのは風邪だ! そ、そうだ。ミルク粥を食べるか?」

「あ、はい。いただきます」


 ミーがミルク粥を受け取ろうと手を出したが、オレは皿を自分の方へ引き寄せた。


「バーク様?」


 可愛らしく小首を傾げるミーの姿にグッとくるものを堪えながらオレはスプーンを持った。

 そのままミルク粥をすくって軽く息を吹きかける。湯気が消えたところで、ミーにスプーンを差し出した。


「え?」


 丸い水色の瞳がますます丸くなり硬直する。動きそうにないミーにオレは訊ねた。


「こういう時は食べさせるんじゃないのか?」


 昔、読んだ本に『風邪の時は食事の介助をする』と書いてあった。


(そういえば、その時の掛け声があったな。それがないからミーは戸惑っているのか)


 納得したオレはミーに言った。


「ほら、あーん」


 その声に水色の瞳が驚いたように揺れる。少し迷った後、おずおずと口を開き、パクンとミルク粥を食べた。

 小さな口がもぐもぐと動く。その小動物のような愛らしい姿から目が離せない。


 ジッと見つめていると、ミーが恥ずかしそうに頬を赤らめた。


「あの、自分で食べますので……」

「ハッ! いや、これはオレの仕事だ! ミーは食べて寝るだけでいい!」

「ですが……」

「いいから。あーん」


 ミルク粥をスプーンにのせて前に出す。始めは戸惑っていたミーだが、覚悟を決めたようにパクリと食いついた。


(やっぱり可愛い!)


 オレの手から食べる、その光景が! なんとも言えない……いや、初めて感じる背中がゾクゾクする。ずっと見ていたいのに、襲いたくなるような……って、今は看病に集中だ!


 必死に煩悩を払いながらミーにミルク粥を食べさせる。こうして苦行だが至福の時間を過ごし……


「ごちそうさまでした。ありがとうございます」


 ミルク粥をぜんぶ食べ終えたミー。そのまま視線が隣に流れトレイに転がっているモノたちに気づく。


「あの、バーク様。それは……」


 オレは転がっているモノの一つを手にとった。


「ミーの風邪が早く治るように準備したんだ」

「えっと……それらをどうするのですか?」


 なんとなく顔を引きつらせているミーにオレは説明を始めた。


「これは生姜だ。首に巻くと風邪が早く良くなるらしいぞ。あと、これはニンニクを繋げてネックレスにした。首からかけると良いらしい。それと、蜂蜜を体に塗って叩くと悪いモノが体から出て行くんだってさ。他にも薄切りにした芋とか、この葉っぱを額に貼ると良いらしいぞ」


 説明を聞いていたミーがコップを指さした。


「あの、そちらは……?」

「風邪が早く良くなる特性ドリンクたち(・・)だ。ちなみに右から、強い酒に蜂蜜とレモンとコショウを入れたやつ。次は茶にハーブとすりおろした生姜を混ぜたので。あ、これはミルク酒に卵と黒糖を入れたんだ」


 オレは左端に置いていたコップを手にした。緑のドロッとした液体が揺れる。


「これはオレの特性ドリンクだ! ニンニクと生姜とハーブと蜂蜜と卵と茶とミルクと強い酒が……」


 リリリーン!


 言い終わる前にミーが呼び鈴を鳴らした。


「どうしました?」


 すかさずオンルが部屋に入る。


「なんで、おまえが!?」


 驚くオレの襟首をオンルが掴む。


「はい、はい。あとのことは使用人たちに任せて、仕事をしましょう」

「いや、ちょ、ま……ミー! またあとで様子を見に来るからな!」


 オレは引きずられて執務室へと強制移動させられ、仕事へ。その日は夜遅くまで書類と格闘するはめになった。

 ちなみにミーの風邪は数日で完治。


 その数日後、今度はオレが熱を出した。


「バーク様、特性ドリンクを作りました」


 ミーが可愛らしい笑顔で持ってきたのは緑の……


「竜族の方には、このドリンクがよく効くとオンル様に教わりました」


 いつもは天使のようなミーなのに、この時ばかりは細い小悪魔の尻尾が見えた気がした。



お読みいただき、ありがとうございます!


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