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17話:ある話

――気が付くと、そこは見覚えのある風景だった。


住宅街が立ち並び、ランドセルを担いだ少年や少女。

忙しそうに歩くスーツを着たサラリーマン。

耳にイヤホンをつけ、自転車にのる制服を着た学生。

コンビニがあり、何人かがレジで列をつくり、店員が忙しそうに対応している。

輸送トラックが、コンビニに着き、商品を台車にのせて店内へ入ろうとしている。

横を見ると、交通量が多い交差点のため、警察が立ち笛を鳴らしている。

さらに遠くをみると二車線の道路でどうやら事故が起きているらしい。

自転車と自動車。

どうやら自転車の主は、イヤホンで音楽を聞いていたため、周囲への注意がおろそかになったのだろう。

顔面は蒼白。

おそらくは心臓もすでに止まっている。

同じくらい蒼白なのは、自動車の運転手だ。

警官も困った様子で聞き取りをしたり、救急車がやってきてすぐさまほぼ死人を救急カートにのせて救急車は走りさっていった。


どこか特別で、どこかみたことのある光景に、気がつけば○○○は涙を流していた。

それは寂寥感なのか。

それとも別の感情なのか。

この空っぽな心では、推測すらかなわない。

残念に思いつつ、○○○はその場を離れようとした。

瞬間、意識が弾けた。


気が付くとそこは一面野原。

先ほどまでの風景とは打って変わって自然バンザイな光景が広がっている。

遠くを見ると森であったり、山が見えることから、どこか遠くにきたのだろうと○○○は思った。

そうして○○○はしばらくそのままにいた。


――半日がたって、○○○は動き出すことにした。

どうもイベントは何もおきないようだった。

不思議とお腹が空くことや、疲れなどはなく、いつも以上に身体が軽かった。

今なら魔法でも使えそうな、変な高揚感に身をまかせ、めずらしく鼻歌なんて歌い出す。

ラララ、ラララ、ラララ、ラララララン。

ああ、こんなにも平和で、優雅で、楽で、苦労のない生活を自分は憧れていたのだと、○○○は確信していた。

夢なのか、現実なのかわからない。

だが、これが自分の望んだものだということだけは理解できた。

なぜなら、これは――――だからだ。


そうして、○○○はスキップをしながら、軽快に道を歩く。

後頭部から衝撃を受けるまで――。


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