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異世界の流儀  作者: 千路文也
第一章
38/40

038  むっつりスケベ


 一日歩き続けて、ようやく次の村へと辿り着いた。スポーツが盛んな村だとエレナが言っていた通り、フィジカルには自信がありとばかりに胸を張って歩いている人物が大勢いる。しかも海に面している村なのか砂浜でワイワイと騒いでいるフィジカルモンスターが多数見受けられるではないか。おなごにしても腹筋が割れていてナイスバディなボンキュボンも兼ね備えているのだ。何度も述べてきた通り、明は現在独身の身。そろそろ再結婚も考えてもおかしくはない時間は経ているのだ。どうしてもおなごには目がチラチラと動いてしまう。それが男の性質なのだ。三大欲求の中でもひときわ闇が深いのはどう考えても性欲である。それと同時に人間がもっとも本質的に否定しようとするのもまた性欲なのだ。三大欲求の中でも嫌われ者に属しているので、ある意味では可哀想な欲求だとも言える。だが明は三大欲求に差別的意識は持ち合わせていない。食欲、睡眠欲と共に平等な存在として受け入れているのだ。これは思春期の過ごし方によって見方が変わると言っても過言では無い。思春期で、クラスメートの中に一人でも美人が言れば男子はあっという間に性欲モンスターと化す。しかし、クラスに美人がいなければ性欲は萎えてしまい、エロスに対して差別的な意識を持つのだ。エロスこそがこの世の万物を支えてきた重要事項なのを知ってても尚、そっぽを向くのは間違っている。たとえば小説や漫画、アニメ、映画の類には性欲をほのかに刺激する材料が含まれているのを明は知っている。お色気展開が作品の発展に繋がるのは誰が見ても分かる。たとえべたべたな展開でもいいのだ。無いよりかは有った方が良い。そんなこんなで、明はクールな表情をしているように見えるが、実はおなご達に夢中なのだった。


「明さん。じっとビーチ見つめてどうしたんですか?」


 しかし、まだ性欲に目覚めていないエレナは何故明がビーチを見つめているのか理由が分からないようだ。臭い物に蓋をするかのように性欲は一般社会で否定さているのを気に食わない明だが、その意味を一瞬理解したのは皮肉と言うべきか。こんなに純粋な目で見つめると本当の事を言えないのが人間なのだと。所詮は明も人間なのだ。他の汚い大人と同じように自分を正当化しながらエレナに事の真相を伝えていく。


「深い意味など無い。これは人間観察だ。この村の人物がどういう生活習慣を過ごしているのか……俺には見届ける義務があるのでな」


 まさに汚い大人の言い方である。汚い大人の代表的な政治家に比べればまだマシだが、上手く丸め込んでいるのには変わりない。厄介なのは嘘を言っていない事だ。視姦と人間観察は紙一重なのだと、明はサングラス越しに察していた。



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