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異世界の流儀  作者: 千路文也
第一章
34/40

034  存在を否定する行動


 次の村に向かおうとする明とエレナだったが、後ろから老婆が尾行を続けていた。老婆らしく派手で流行から置き去りにされた服に身を包んでいるため尾行と表現して良いのか不明だが、とにかく後ろから付いてくるのだ。最初こそイライラを隠せない明だった。何も言わずに自分達の後を追ってくるのだから怒りを感じてシカが無い。とは言っても、あの老婆は不死身に限りなく近い生命体だ。どんなに殴りつけてもあっという間に復活してしまう。そんな彼女に怒りを感じるだけ無駄だと思った明は無の境地に達していた。奴の相手をするだけで疲れるのは目に見えているからだ。明の故郷は日本という国だが、東日本には放射能汚染された化け物が蠢くゴーストタウンと化していた。全ての引き金は原発である。第三次世界大戦で東日本にミサイルが投下され原子力発電所が大爆発を引き起こし、その結果。東日本は放射能汚染されて人が住めなくなった。それから100年以上が経過して東日本には化け物がひしめく世界と化してしまった。ようするに後ろから追ってくる老婆は化け物だと言いたいのだった。当たり前だが化け物には人権など発声しない。故に存在していない生物だと思い込んで徹底的に無視をするのが賢明だと明は判断したのだった。ところがそんな明とは裏腹に、エレナはチラチラと後ろを見ながら明らかに老婆を気にしていた。


「あの人、いつまで付いてくるのかな。正直迷惑なんだよね」


 その疑問は最もだ。真意を確かめようとしても白を切るのは目に見えている。ならば身体を粉砕して存在自体を消滅させるのがベストだが、それも出来ない。奴は悪人なので死を以って償うべき犯罪さも起こしている奴だ。しかし前述にも述べた通り驚異的な自己再生能力を持っているので何度殴りつけても復活してしまう。そんな能力を持っているなら人々から盗みを働かずに、もっと他の事に生かせと突っ込みたくなるが、老婆とは元来そういう生き物だ。自分の潜在能力を、何かに貢献するためには使おうとしない。あくまでも自分が楽して生活するために使ってしまうのだ。だから老婆は嫌われてしまう。ならばいっその事、存在自体を否定してしまおうと考えているのが明だった。


「奴の存在を認めるな。背景だと思えばイライラやストレスも軽減される筈だ。あんな老人の事を考えるだけでも時間の無駄としか言いようがない」


 明はそうだと言うのだった。結局は自分のためにならないのだと。



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