027 美人には棘がある
美人を見て、鼻孔を膨らませる行為は生物学的の雄人間として真っ当であると明は感じていた。容姿の整った女性に惹かれるのは男として当たり前の行為であり、それを否定する者は何人たりとも許さないが明のスタイルだった。よって、嫉妬心丸出しのエレナには何等かの処置を施して言い聞かせる必要があった。これは男として普通の行動であり、美人を見ても鼻孔を膨らませない雄人間は最低であると。むしろ、美人を見て下心を抱かない方が危険を感じる。同性愛者や既婚者なら問題は無いが、美人を目の当たりにして堂々としている雄人間には人格を疑ってしまう。なので自分の行動は何一つ間違っていないと確信しながら、明は美人のお姉ちゃんと一緒にディナーを楽しんでいた。隣の席では相変わらずエレナがムッとした表情で美人のお姉さんを睨み付けている。まだ少女なので独占欲があっても仕方ないかもしれないが、さすがに明も目線が気になってエレナの顔に目隠しをしていた。とは言っても元山賊なだけあって、平気で目隠しを引き千切る豪快な一面も持っていた。明はそれを見て、少しだけ興味をそそられたのは言うまでもない。そしてまもなく、美人のお姉さんもエレナの行動に真意を見つけたようで、笑っていた。これぞ大人の余裕な態度である。
「あら。貴方にはとっては余程大事な人のようね。心配しなくても、私は明さんを取ろうとはしてないわよ」
それを聞いた瞬間、明の表情は変わっていた。そして美人のお姉さんに向かってグーパンチを突き出したと思うと、美人のお姉さんはヒラリと攻撃を躱していた。その身のこなしはとてもじゃないが素人とは思えない、明の思った通り彼女は格闘の達人だ。明は首の骨を鳴らしながら美人のお姉さんに近づき、話しかけていた。今度は先程のような甘い言葉では無い。ドスの効いた渋い声である。
「俺は一度も自分の名を名乗っていない。にも関わらず、君は俺の名前を知っていた。考えられるのは俺の暗殺を依頼された人間か?」
「正解よ。良くわかったわね。貴方の頼んだ紅茶に毒を入れて毒殺しようと思ったけど、どうやら実力行使に出ざる終えないわ。貴方の戦闘力は報告書で見てたから、なるべく正攻法は取りたくなかったけど仕方ないわね」
彼女はそう言うと、ドレスを脱ぎ捨てた。そこに現れたのは爆乳が良く目立つ戦闘服姿の彼女であり、右手にはクナイが握られていた。どうやら忍者は日本だけの特権では無いらしいと、明は思ったのだった。




