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異世界の流儀  作者: 千路文也
第一章
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016  笑っていられるのは今の内


 人間は歳をとってしまうと自分の思い通りに体を動かせない。女性の多くは更年期障害を患ってしまい、歯がゆい思いをしてしまう。それは男も同じだ。更年期とまではいかないが腰通や肩こりが悩みのミドルエイジは数多く存在している。その中の一人が玖雅明だった。元いた世界ではキングオブエクソシストの称号を手にしていた彼にも歳には勝てなかった。最近は腰が痛くて湿布にはとてもお世話になっている。しかしそれも異世界に転移してしまい湿布に頼れなくなった。そういう時に腰通をごまかす方法は一つしかない。それはハイテンションになる事だった。テンションを上げて熱を持って人と接していればいつの間にか腰痛もおさまってしまうのだ。それは腰が痛いのを忘れるぐらい何かに熱中せよという証なのかもしれない。とにかく明はテンションを上げて人と接する事により腰痛による負担を軽減させていた。


 そんな事を思いながらブラブラと村を歩いていると、二人の会話はヒートアップしていた。それはまだお互いを完全に信用していないからだ。もしもお互いが親友のように心を許していればお互いに無口でも何も思わない。しかしまだ出会って間もない状態では互いに無口だとストレスが溜まってしまう可能性があるので、明から積極的に言葉を出してた。伊達に50年近く生きていない。人生経験だけはそれなりにあるので、そういう気まずい雰囲気を察するのも上手になっていた。


「俺はもう今年で48歳だ。エレナのようにいつまでも可愛らしく笑顔を振りまくのも苦痛と感じる年齢になってきた。今までは笑顔に痛みなど感じなかったけど、この歳になると腹を抱えて笑おうとするのが怖くて仕方がない。笑う事によって体の調子が崩れやしないかと心配になってしまう、そんな弱い大人にお前はなるなよ。お前は歳をとっても笑顔が似合う大人になってくれ」


 まだ18歳にも達していない子供を見てしまうと、どうしても親の感情を抱いてしまう。なんせエレナと同い年の子供を持っているので感情移入は防げない。なので親の目線からの切り口になっていた。自分に劣等感を感じているからこそ子供にまでそうなって欲しくないのだ。10代、20代、30代はまだ十分にやり直せる。ところが40代に差し掛かってくると自分のやり方を変えるのは難しくなってくる。今までの経験が癖として残ってしまい、既に修復不可能。そうなる前にエレナには理想の自分を手に入れて欲しい。自分のような苦い大人にはなるなと口を酸っぱく言うのそれが理由だった。



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