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異世界の流儀  作者: 千路文也
第一章
10/40

010  一難去ってまた一難


 こうして明とエレナの旅が始まった。二人の旅は今後、どうなるか分からないがせめて有意義な時間を過ごしたいと切に願っている。これから長い時間を共にするのだから、中途半端な友好関係など御法度だ。異世界に転移したからと言って人間関係から離れられるなどありえない。どうしたって人間関係はついてくる。だからこそ相手と友好な関係を抱ければ人間的に成長が可能になってくる。人間的に成長出来るからこそ、会話にも愉悦が生まれる。それを知っているので、明は積極的に会話をしようとしていた。どうしたって人間は会話を交わさない限りは仲良くなれない。お互いの意志を確認するためにも、積極的に言葉を交わさないといけないのだ。明はそれを知っているので、やはり積極的に言葉を交わそうとするのだった。


「この世界は広大で面白そうだ。こうして草むらに身を潜めているだけでも幸福に値すると俺は思っている」

 

 冷静な口調で言葉を出す明とは裏腹に、隣で中腰の姿勢になっているエレナは怯えながらも夢中になった様子で言葉を出していた。しかしその気持ちとは裏腹に小声だった。その理由とは。


「な、何ってるんですか。この状況で!」


 明とエレナはさっそくイケない道に迷い込んでいた。どう考えても序盤に行く意味が分からない竜の谷に踏み入れたようで、目の前にはグースカとイビキを立てている竜がいた。その竜を起こさないように、ゆっくりと道を歩いていく必要があった。どうやら、この先を通れば次の村に行けるようなので慎重に進もうと明とエレナは会話を交わしていた。こういう危機的状況に互いが追い込めれていると、そこに友好関係が生まれる。互いに死地を乗り越えた事が友情を育む。


「この状況だからこそ楽しもうとするのが人間の姿勢だ。姿勢を崩してしまうと、それこそ後戻りが出来ないからこの考え方を変えるつもりは無い。今は幸福の時間だ」


 明の言っている事は最もに思えるが、人によってはそうではない。なんせ人間の性格はマチマチなので不満ばかりが溜まる人間もいれば、まったく不満を感じない人間も存在している。それが人間なのだから人生は面白い。人間は誰しもが自分の人生において主人公になれるので、当然のように主人公補正は存在している。


「言ってる意味がよく分かりませんよ」


 そう言いながら、エレナは青白い顔をしたと思うとゲロを吐いていた。オゲロゲロと緊張した様子でだ。それも無理は無いだろう。目の前には巨大という二文字を遥かに超えた超巨大の竜が聳え寝ているのだから。



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