補講:戦闘シーンの解像度
早いもので、このエッセイが完結してからもうすぐ一年が経とうとしています。完結を迎えた後もじわじわとポイントを伸ばし続け2020年3月現在、累計ポイント7400ptオーバー、ブックマークは3000件以上にもなっております。とても有り難いことに、細々と需要を繋ぎ続けているようです。
さて皆さん。僕は本エッセイの最終回において、今後も何かネタを思い付いたら追加するかもしれませんと言っていたのを覚えておいででしょうか?
そう、そうなんです。ネタを思い付いたのです。なので久しぶりに内容を追加します。といっても今回のは実用的かどうかは甚だ疑問な、戦闘シーンを書く上での心構えみたいな部分です。恐らく、中級者以上の方向けになると思います。本エッセイにざっと目を通して頂いてから読んでもらいたい内容ということになりますね。
前置きを長くしたくないのでさっさと本題に入りましょう。
今回お話する内容は、戦闘シーンの解像度について。
うん、これだけだと意味不明ですね。解像度? 何のこっちゃです。順を追って、話して参りましょう。
自戒の意味も込めて言うのですが、戦闘シーンには不思議な魔力があるもので、戦いの場面を書くのが好きだったり自信がある作者ほど過剰に書き込んでしまいがちです。
ですがあくまでweb小説の世界で人気になろうとした時、こういう一挙手一投足にまで血の通ったハイグレードな戦闘描写というのはそこまでウケません。ここを勘違いしている作者の方が意外といる印象です。
基本的にはweb小説とはアマチュア作家の趣味の世界です。文章力の高さはそこまで重要視されません。むしろキャラ、そしてストーリーに拠るところが大きい。戦闘描写はキャラを引き立てたりストーリーを進めることには有用ですが、書けば書く程人気になるというものでは決してないのです。この点は恋愛描写などとは顕著に違うところです。恋愛についてはうまく書けば書く程人気になれるはずです。読者はそこを読みに来ているから。けれど戦闘描写についてはアクションジャンルならいざ知らず、いや、アクションジャンルにおいてすら、そこだけしっかり書いていたらポイントがドカドカ入るというものではない。これは肝に銘じていて欲しい部分です。
今回なぜこんなネタを書く気になったのかというと、戦闘描写に自信を持つ作者って意外とストーリーはおざなりなこと多いよなとツイッターを見ていて思ったからです。
戦闘シーンはあくまで物語を進める導線に過ぎません。もちろん、最高に盛り上がる場面にすることも作者の力量次第で充分可能です。しかし、そこだけミッチリ書けばいいと言うものではない。
最悪なことは、序盤から、読者がまだキャラクターの概要や世界観すら掴めていない段階で、いきなり長くて激しい戦闘シーンを始めてしまうパターンです。自戒を込めて言ってます。僕も油断するとこれをやるタイプです(笑)。
web小説でこんなことやったら即ブラウザバック案件です。でもやりがちなんですよねーバトルジャンキー系の作者は。
三度の飯よりバトルが好きな作者にとっては、戦闘シーンこそ命。でも読者はそうではないんです。これが、戦闘シーンの解像度という問題です。
戦闘シーンに読者をしっかり没入させる為には、それまでの仕込みが絶対に必要です。
先に丁寧にキャラクターの説明を行っておき、世界観を周知し、その作品における戦い方や武器なども明らかにしておく。そこまでやってようやく、血沸き肉躍る戦闘シーンが活きてくるのです。
ちなみに身も蓋もない話をすると、戦闘シーンなんかなろうではキンキンキン!スキル名!相手を倒した!と、これだけでも充分です。前例ありますし。
僕がここで提唱しておきたいことは一つ、
序盤のバトルの解像度は低く。読者にキャラ等が定着していくにつれて解像度を上げていった方が良い。
これです。つまり最初は戦闘シーンは短くていいし、可能な限り固有名詞も減らした方がいい。解像度を、下げておくべきです。読み易さを優先しましょう。
どのみち、作品を読み進めていけばいろんな設定は読者の脳内にインプットされていきます。なので後半で複雑なバトルをしてもついてきてくれると思います。
序盤で読者を突き離して自分の趣味を優先し、とにかく熱く激しくこってりした戦闘シーンを書くというのは暴挙です。
が、しかし、もちろん例外は常に存在します。
一つ、作者が既に有名であり作風が周知されている場合。
これはもう相当数の固定ファンがついているので序盤から自分のカラーで攻めても大丈夫。むしろそっちの方が読者にとっては安心感があります。
一つ、作者が始めからニッチ需要にのみフォーカスを絞って書いている場合。
これは、作者が戦略的に一部のマイナーな需要に突き刺さる作風を狙っている状況です。僕もどっちかというとこれですね。てかこれしか出来ない(泣)。戦闘描写それ自体が好きで好きでしょうがない作者が、同じように戦闘描写中毒な読者を囲い込む為に取る方策です。これはこれでクレバーであると言えます。
でもどんな場合であれ重要なことは、作者に自覚があるかどうかです。
自分はこういう作風であり、こういう読者層を狙っていて、だからこう書くのだ、という冷静な自己分析が出来ているか否か。
案外、戦闘描写自信満々クラスタ(若干悪意ある言い方)の方々は自覚に乏しい。自分はこんなに凄いものを書いているのに何故人気が出ないんだとか、読者のレベルが低いとか言いがちな気がします。
戦闘描写って書けるようになってくるとどんどん緻密に書きたくなるんですけど、常に俯瞰で客観的に自作を見つめる目は養っておきたいところですね。自戒を込めて言ってます。
てなわけで、戦闘シーンも詳しく書けば書く程良いわけでは無いという今回のお話。頭の片隅に置いておくとアナタの書く戦闘シーンの品位がちょっとだけ上がるかも?
また何かしら小ネタが浮かんだら内容を追加しておきたいと思っていますので、その時は読んでみてくださいね。それでは!




