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戦闘シーンのマンネリ打破

 今回は、戦闘シーンにありがちな、マンネリを防ぐ方法を考えていきたいと思います。


 マンネリ展開は、長期連載の物語にとって避けては通れない問題です。

 本格的な戦闘シーンも、回数を増すごとに新鮮味が薄れて飽きてきます。

 物語全体のプロットをしっかりと練って書き始めるタイプの作者であっても、戦闘シーンまでプロットを作るのは稀ではないでしょうか?


 戦闘シーンは、話の流れに応じてその場で書こうかな。

 だいたいの人はこんな風に考えておられるでしょう。

 こんなエッセイを書いてる僕自身も、さすがに戦闘シーンはプロットは作りません。


 僕は、戦闘シーンは“生モノ”であると考えています。

 物語の自然な要求に応じて、その場その場で出来たてを提供することが、最良ではないかと考えています。


 その戦闘に至るまでのキャラクターのテンションであるとか取り巻く状況、それまでに積み重ねてきた描写など、戦闘シーンを書くまでに提示されたいくつもの要素がその戦いの進行や結果に影響を及ぼすことは、僕はよくあります。

 プロットの練りこみが足りないと言われればそこまでですが。戦いは意外とその場その場のアドリブが重要なのではないかと感じています。

 これが上記の“生モノ”発言へと繋がるわけですね。


 個人的見解になりますが、実際の戦争をテーマにした戦記モノ、ノンフィクションなどでは、大多数VS大多数の戦闘シーンがハイライトになっていることがあります。

 この巨大な戦闘シーンに、僕はほとんど感動を覚えることがありません。

 それは軍師が淡々と戦略を進める、ボードゲームのような書かれ方をしているからだと思います。


 周到な戦略を楽しむタイプの方なら戦記モノはオススメですが、僕のように、戦いの最中の、あくまで個人の感情の機微を重視するタイプの人間には、合わないのでしょう。

 恐らく、小説家になろうの読者の中でも大半の方々は、僕と同じく戦闘シーンにおける個人の在り方をこそ重視するのではないでしょうか。


 小説家になろうの作品群の多くが一人称を採用している事実から考えても、戦闘シーンには個人の内面描写を強く打ち出していく方針の方が無難だと推測できます。

 この内面描写こそ、戦闘シーンが“生モノ”であるという主張の根幹部分です。


 主人公は日々、成長していきます。

 チート設定でほぼ無敵の主人公でさえ、人との交流によって人間的に成長してゆくでしょう。

 初めから100%完璧な主人公を設定する作家は、ほとんどいません。


 主人公の成長とともに、その内面も刻々と変化してゆきます。

 そして、主人公の変化を最も顕著に示すことができる場面が、戦闘シーンなのです。


 ゆえに暴論を展開するならば、戦闘シーンのプロットなどというものは、広がろうとする作品世界を頭から押さえつけて窮屈にする枷であると言えるでしょう。


 このエッセイを気にして読んでくださる書き手の方々なら、いざ戦闘シーンを書く時にはやる気に満ち溢れていると思います。

 そのやる気、そのテンションで書かれた戦闘シーンこそが、大事なのです。



 と、心構えについての話が長くなりすぎたのでここで切り上げます。

 ここからはマンネリ打開のための方策の話。


 プロットのない白紙の状態から始まる戦闘シーン。

 何回か書いてるうちに、どうしても書く手が止まる時が来るでしょう。


 この描写、前も使ったな。

 毎回同じ技で倒しているな。


 こんな風に感じた時、どうしましょうか。


 まず、最も簡単な方法はごまかすことです。

 前にも使った展開をそのままに、付随情報で読者の目を欺くのです。


 例えば、戦闘中、ふいに何らかのうんちくを語る。

 例えば、戦闘中、全く別のことを考えてみる。


 こういうのはどうでしょう。


 武器についての話を少し長く語ってみるとか、その戦いの前に女の子と一悶着起こしておいて、それについて主人公に考えさせるとか。

 一人称の場合、多少の脈絡の無さは読者も目を瞑ってくれるかと思います。

 主人公の内面で常にさざ波が立っている状態のほうが読んでいて面白くないですか。


 次に、もう少し高度な方法として、視点を変えてみるという技があります。

 これは、主人公の一人称をそのままに、主体を変更する書き方です。


 前の戦いで主人公の内面をたくさん描写したとします。

 次の戦いでもまた内面描写ばかり書くと、面白くありませんね。

 そこで次は内面描写を控えて、武器の動きに重点を置く、擬似的に相手の視点になってみる、などをします。


 剣がどういう風に相手を倒すか。

 魔法がどんな風に発生してどう広がっていくか。


 敵が自分のことをどう思っているだろうか。

 この世界がゲームなら敵は、どんなモーションを使ってくるだろうか。


 常に自分視点の戦いから一歩外れて、周辺情報を拾ってみるやり方です。

 以前の章で、アングルについてのお話をしました。

 その時の考え方を、ここでも使うわけです。



 ここまでは、同じような戦闘シーンにいろいろ付加する場合のお話。

 ここからは、戦闘シーンのバリエーションそのものを増やそうというお話です。

 どちらかというと、こちらのお話の方が重要度が高いです。


 戦闘シーンのバリエーションが無数にあれば、そもそもマンネリには困りません。

 では、戦闘シーンのバリエーションはどのようにして増やしていくのがいいでしょう。


 一つの提案としては、


 地形や敵を変える


 こんなのはどうでしょうか。

 ただこれだけだと分かりにくいので解説します。


 主人公自体の成長は戦闘シーンの前に丹念に描かれるでしょうから、戦闘シーンそのもののバリエーションには寄与しにくいです。

 一人称は、主人公(とその周辺人物)にべったりと寄り添う書き方なので、三人称と違って何かを隠すことには不向きです。

 すなわち主人公が新しい技を覚えたとか、新しい戦術を使えるようになったとかいうことを、読者に隠すのが難しいのです。


 そこで、そういう難解な作業よりももっと効率よく、戦闘シーンに変化を加えてみようと言うことですね。

 そのための二大要素はズバリ、地形と敵!


 地形とは、戦う場所のことです。

 これを丁寧に設定すると、戦闘シーンに驚くほど違いが出ます。


 例えば平坦な地形よりも、起伏に富んだ地形。

 あるいは湿地帯、砂漠地帯、海、建物内でもいいですね。

 これだけでも、戦闘の様相はガラリと変わるはずです。


 戦闘シーンで悩む書き手の多くが、戦闘が行われる地形のことをあまり気にしていないように、私は思います。

 ちょっとだけ地形に変化を加えてやると、意外にすんなり戦闘シーンが書けるかも。


 剣をメイン武器とする主人公なら……狭い場所で戦わせる(剣を自由に振りまわせない中での戦闘になり、緊張度が増す)


 魔法をメイン武器とする主人公なら……相性の悪い属性や地形で戦わせる(火炎魔法に対する水中ステージ、あるいは魔力が弱まる装置の近くなど)


 基本的に地形は主人公にとって不利である方が良いです。

 その危機的状況を切り抜けるカタルシスが生まれやすいので。

 ただ、書き手は少し頭をひねらなければいけませんね。

 プロット段階で簡単な地図を作ったり、戦闘する地形に関して記述しておくといいかもしれません。


 二大要素のもう一つは、敵です。

 魅力的な物語には魅力的な悪役が欠かせません。

 詳しくはキャラ論の項で語っておりますのでそちらもご参照ください。


 敵は出来るだけ、特徴をわかりやすく。

 鋭い牙、強靭な肉体、突風を生み出す翼、不定形で何でも呑みこむ、etc

 キャラクターメモを作ってまとめておくといいかもしれませんね。


 王道展開ならば、敵は段階的に強くしていくほうがよいですが、主人公チート設定ならば、逆にどの敵もとんでもなく強くしてしまうといいかもしれません。


 あと敵は前口上(戦闘前の語り)が長いほうが良いでしょう。

 どうせ一撃で倒されるのだからと、設定をおろそかにしてはいけません。

 漫画でも、登場は一瞬だけですが人気投票ではなぜだか上位に食い込むキャラクター、いるでしょう?

 とにかく自慢話をたくさんさせておいて一撃退場させた方が、シュール感が増します。


 ちなみに敵のバリエーションを増やすという作業自体が結構難しいかとおもいます。

 ここでもキャラ論の項で語った、利点と弱点という要素から考えていくと少しは楽かもしれません。

 が、やはり地形をいじくるよりは難しいと思います。多少の慣れが必要な部分ですね。



 以上、戦闘シーンのマンネリを防ぐための方策の話でした。


 では、また次回にお会いしましょう!





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― 新着の感想 ―
[良い点] はじめまして、「星斬りの剣士」のレビューツイートから飛んできました! 「戦闘描写に自信ありと述べる云々」という一文に結構カチンときて「おう何だよ、私の戦闘描写に問題があるから読まれないっ…
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