キャッチコピーで読者のハートを掴む
今回のテーマはキャッチコピーです。
キャッチコピーとは、何らかの告知や宣伝に用いられる文章、煽り文句のことです。
短い文章で企業理念や商品価値を示すキャッチコピーは、コピーライターなど専門の職があるほど重要なものです。
このキャッチコピー、小説でも頻繁に目にすることがあります。
とある人物が作中に登場するとします。
その人物の身体的特徴の記述がなされます。
そしてページをたくさんめくり、再び同じ人物が登場します。
すると、先ほど書かれていた身体的特徴が再び列挙されている。
こんな場面、見た事はありませんか?
小説に限らずあらゆる文章において、同じ内容を何度にもわたり書き記すことは、冗長とみられ歓迎されません。
しかし例外として、あえて同じ文章を繰り返すことで、とある物事や人物のイメージを読者に強烈に印象付ける方法があります。
この繰り返される文章を、僕はキャッチコピーであると考えているのです。
それは例えば、登場人物の、口癖です。
独特の語尾によって、あえて地の文で語らずともその人物だとわからせるやり方です。
それは例えば、登場人物の容姿、その中でも際立った部分です。
青く澄みきった瞳、だとか、右腕が義手になっている、とかいったことです。
それは例えば、風景描写です。
その街にしかない景色、その街独特の香り、などです。
それは例えば、武器の形状についてです。
幾度となく繰り返される武器の描写は、やがて固定化されたイメージを読者に与えるでしょう。
キャッチコピーは、冗長なように見えて実際には文章量、というか読者から見た処理情報量の節約に役立っています。
キャッチコピーを使えば、それを視認した時点で読者はそのキャラクターを即座に想起します。
以降に続くお決まりの文句は、見てはいますが脳はほとんど処理していない。
キャッチコピーによって、処理の自動化がなされているわけです。
それだけスムーズに読み進めることができるのです。
そのために早い段階で、出来れば初登場時に、主要キャラクターや重要アイテムに関するキャッチコピーは披露しておくべきでしょう。
キャラ設定などを考える時に、一緒にキャッチコピーを作っておくといいと思います。
動きが多くなりがちな戦闘シーンでは、複数のキャラクターが入り乱れることもあるでしょう。
その時に、このセリフを喋っているのは誰で、ここで戦っているのは誰か、わかりにくい文章はよろしくありません。
物語のスケール感を出すためには登場人物を増やさなければなりませんし、舞台も多く設定しなければいけません。
武器は種類が多いほうがいいですし、スキルも豊富なほうがいいでしょう。
これらを、読者にしっかり印象付ける作戦として、キャッチコピーを使うのです。
では、キャッチコピーはどのように作っていくのがいいでしょう。
まず人について考えてみます。
これは簡単です。
口調を、独特にすればいいのです。
特に語尾を、ちょっと他では考えられないようなものにするだけで、キャラはある程度立ちます。
あとは一人称をいじるというのも有効ですね。
この語尾や一人称の豊富さは、日本語独自のものです。
活用しない手は無いでしょう。
ただ、誰も彼も語尾口調で色をつけてしまうのは単調すぎますね。
次なる方法は、身体的特徴を用いることです。
とりわけ、性差に根差したステレオタイプ的記述は、人間の記憶に残りやすいことが心理学実験でも明らかにされており、有効だと思われます。
男性ならば、筋肉質であるとか、色が黒い、声が太い、毛深い、頭が禿げあがっている、など。
女性ならば、胸が大きい、ボディラインがくびれていて美しい、髪がサラサラである、肌が白い、いい匂いがする、など。
これらを、より強調することでキャッチコピーを作ります。
その男は、筋肉であった。
全身が筋肉、腕も、脚も、指先、爪先、背中、恐らく頭の中身までも。
例として、筋肉ダルマな男のキャッチコピー。
この時、出来るだけ読者が頭を悩ませるような文を最初に記述するとキャッチコピーの効果が高まるかと思います。
その男は筋肉、と言われても一瞬、戸惑いますね。
そこで次の文で執拗に全身の状態を書き記して、あぁ、なるほど~と思わせるわけです。
身体的特徴の他にも、内面に関する記述であるとか、その人物独自のアイテムによる記述もあり得ます。
人に関するキャッチコピーは作るのはさほど難しくないでしょうから、キャラづくりの中に取り入れて、習慣化してしまいましょう。
次に考えたいのは物に関するキャッチコピーです。
これは人のときよりも難しい作業になるかもしれません。
物の中で、キャッチコピーを作っておきたいものの筆頭はやはり武器です。
主人公とその仲間たちの用いる武器はたいてい、そのキャラ固有の武器になるでしょう。
そのために登場頻度は高くなると予想されます。
ならばキャッチコピーを作る必要があるのは自明のことです。
武器にも多くの種類があります。
剣など物理的なものは、形状の記述や、その切れ味、あるいはそれにまつわるエピソードなどを考えておくといいのではないでしょうか。
魔法など特殊なものは、それが発生する時に起こるエフェクトを考えておくといいかと思います。
頻繁に作中に登場する街も、出来ればキャッチコピーが欲しいですね。
これは風景の中で特に印象的な物体、あるいはにおい、などでしょうか。
キャッチコピーは作者の言語センスが出るポイントです。
是非ともかっこいい売り文句を考えて、読者のハートを鷲掴みにしましょう!
それではまた次回に!




