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【ノベル6巻発売中!】悪役令嬢の矜持〜婚約者を奪い取って義姉を追い出した私は、どうやら今から破滅するようです。〜  作者: メアリー=ドゥ
第五部/裏 わたくしからの贖罪を。

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国王陛下と宰相閣下の迅速。


「宰相シゾルダ」

「はい、陛下」

「どのような手段を用いても構わないという前提で、この六人を1週間以内にライオネル国内に揃える方法について、何らかの考えがあれば口にせよ」


 公爵位を引き継ぐと同時に宰相位に任じたシゾルダ・ラングレーを呼び出し、レオは名を書き連ねた書類を差し出して、そう口にした。

 書面に目を落とした彼は、そこに記された六人の名前を見て、微かに眉根を寄せる。


「ツルギスとアダムスは、王都に居るので問題ないでしょう。レイデン卿も、南部から飛竜にて飛んでくればおそらくは問題ありません。ですが、他の方々は……」

「無茶であることは理解している。が、この件にはウェルミィの命が掛かっている」

「オルミラージュ侯爵夫人、ですか?」

「【魔王】の瘴気によって昏睡状態に陥ったそうだ。その除去に、最低でも六人、魔性を始末出来るレベルの聖剣の遣い手が必要となる」


 訝しげなシゾルダが一転、口元を引き攣らせた。

 状況がどの程度逼迫しているのかを、今の一言で確実に理解したのだろう。


 真剣な目で再び書面を睨みつけたシゾルダは、絞り出すように口にする。


「彼の地への往復は、最短で二ヶ月近く掛かります。新設された大公国内の横断鉄道を使用したとしても、間に合いません……ですが」

「が?」

「〝風〟の公爵に連絡を取り、〝風渡り〟の魔術を行使していただければ間に合う可能性があります」


 シゾルダの言葉に、レオは頷いた。

 

 バーンズが立って以降、大公国は秘密主義的な部分が徐々に緩和されており、血統固有魔術や〝風渡り〟のような特異魔術の解析に関しても協力的になった。

 国際魔導研究機構へのデータ提供が主になっているものの一部は公表されており、〝風渡り〟の魔術は、熟練者であれば数日で大公国からライオネル王都までを駆けることが可能だとされている。

 

「大公の元へ、片道一週間で伝令を届ける方法は?」

「現在王都に、定期報告の使者として、南部辺境伯騎士団竜騎士隊長アーバイン・シュナイガー卿が赴いています。彼の飛竜が最速で南部辺境伯領に向けて飛べば、2日。そこから『魔性の平原』を抜けて〝風〟の公爵領まで3日。計5日で〝風〟の公爵に伝令を頼めれば……かつバーンズ閣下のご承諾を即時いただければ、一週間でこちらに来ていただくことそのものは、可能です……」


 シゾルダの歯切れの悪さに、レオは片頬だけで笑みを浮かべた。


 ーーー綱渡りだな。


 相手は一国の宗主であり、それが実現する可能性は限りなく低い。

 が。


「運が良い」

「は……?」

「たまたまアーバインが居て、それが可能なのだろう? そして相手が大公だ。……二人とも、ウェルミィに恩を売れる機会となれば、全力で動くだろう」


 アーバインはウェルミィに負い目があり、バーンズはウェルミィと外交で散々やり合っていて、今のところ重ねた交渉の勝敗は五分である。

 『ウェルミィを助けるのに協力すれば、ライオネルが大公国側に有利な条件を呑む』となれば、外交上極めて有利と判断する筈だ。

 

 まして彼は苛烈果断で知られる、足が羽のように軽い大公なのである。

 『常ならぬ【災厄】』の際も率先して最前線に赴き、全体の指揮を取りながら大公国山脈内に現れた魔王獣を自ら討ち取ったという、武人の鑑のような男だ。


「今回の件で不利を被る分は、ウェルミィ自身が助かった後に幾らでも挽回させれば良い。アーバインが南部に赴くなら、ついでに南部辺境伯騎士団長レイデンにも命令を届けさせられるな。これで四人は揃う。残るは、バルザム帝国のグリムド伯と、北方バーランド王国のダインス公だが……そちらは?」

「それなのですが……」


 と、そこでシゾルダは複雑そうな表情で、片眼鏡モノクルの位置を直す。


「多分、先程ズミ……ズミアーノから届いた言伝ては、最初意味が分からなかったのですが、おそらくこれに関連したものと思われます」

「オルブラン侯は、何と?」

「……『帝国側は任せてくれていいよー』と」


 レオは、いつもヘラヘラとしている彼の顔を思い浮かべて、片眉を上げた。

 彼の母親は帝室の血筋であり、ズミアーノ自身もその血を引いている。


 現バルザム帝王レイダック・バルザムとは再従兄弟はとこ同士の関係なのだ。


 が、内海を挟んだ上に広大な領土を持つかの帝国は、ライオネル同様大陸南部にある大公国よりも、帝都や帝国北部にあるロンダリィズ領への移動には時間が掛かる。


 たとえ血縁であっても、移動距離が縮まるわけではない筈だが……。



「オルブラン侯爵が任せろというのなら、任せておこう」



 レオはそう口にした。


 ある種、ライオネルで最も頭が回るあの道化は、ウェルミィを自分の主人と仰いでいる節がある。

 この状況で、みすみす彼女を殺すような悪ふざけはしないだろう。

 

 ーーー何か手があるんだろうな。研究成果か、あるいは帝国秘に関わる何かしらの、な。


 魔導の分野はまだまだ未開拓な点の多い分野であり、帝国が秘匿している古代魔術や遺失魔術に関して、以前エイデスがある推測を立てていた。


『中央大陸と東の大陸を結ぶ、古代遺跡の解析不能転移魔導陣に近いものを、帝国はまだ保有している可能性がある』と。


 エイデスは【大公選定の儀】以降、帝国宰相ウェグムンド侯爵の動きに特に目を配るようになった。

 そして彼が視察に赴く際の旅程が、大街道や鉄道を利用してもおそらくは不可能な形で行われていることを知り、その結論に至ったらしい。


 それを使えば、あるいは残り二人の『聖剣の遣い手』が10日以内にライオネル王国に来ることも可能なのだろう。

 交渉の手札も、何を使うのかは不明だが用意しているに違いない。


「シゾルダ」

「は」

「本件は関係者以外には確秘事項とするが、アーバイン卿、並びにレイデン卿他、必要な人員に事情を説明するよう伝えろ。その間に大公バーンズに手紙をしたためる。それを届けさせろ」

「仰せのままに」


 レオが命じると、シゾルダは即座に踵を返した。

 

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