終節。
本日二話目です。
ーーーウェルミィ・エルネストは死ななかった。
彼女は、イオーラ・エルネストに一家ぐるみで非道な扱いを行い、さらには脱税をして国家背任の罪に問われた。
だがウェルミィ自身は、その日の夜にオルミラージュ侯爵と取引を行って牢を出た。
その時、ウェルミィは、デビュタントの夜会でエイデス・オルミラージュ侯爵と接触しなかった。
大広間に現れた際に、入口前でウロウロしていた一人の令嬢が存在せず、彼女を避ける動作をしなかったエイデスがそのまま大広間に入り、ウェルミィを抱き留めなかったからだ。
二人は知り合うことなく、ウェルミィは一方的に彼のことを知って策を練った。
だからエイデスは、彼女のことを思い出さなかった。
しかし、彼女は結局救われ、後に婚約を結ぶことになった。
二人の馴れ初めの場が、デビュタントの夜会から牢の中になっただけのことだった。
ーーーウェルミィ・リロウドは死ななかった。
社交界に奇跡的に舞い戻った彼女は、『精神操作の魔薬』によって多くの令息を操り、王太子殿下までをもその餌食とした。
その罪を暴いたのは、ダリステア・アバッカム公爵令嬢。
【王太子殿下婚約披露パーティー】にて行われたその断罪劇により、ウェルミィは一時拘束。
異論を唱えたのは、彼女を保護していたエイデス・オルミラージュ侯爵と、パーティーにて王太子殿下の婚約者として紹介されたイオーラ・エルネスト女伯であった。
ウェルミィは、脱獄を唆すズミアーノの誘いを断り眠らされたが、脱獄先でこんなことをした理由を聞き出した。
彼はウェルミィに説得され、自らに腕輪を嵌めて、その後オルミラージュ侯爵によって確保された。
全ての真実が明らかになった後、イオーラ・エルネスト女伯の手によってズミアーノの疾患が発覚し、ニニーナ・カルクフェルト伯爵令嬢と共同開発した魔薬で、彼の魔力脈疾患は癒された。
その時、ウェルミィは聖女テレサロと接触しなかった。
彼女は精神操作の魔薬に関する一連の出来事に関わる前に、聖教会の総本山へと居を移していた。
テレサロの思い人であるソフォイル・エンダーレン騎士爵が、騎士団入団直後にその才覚を南部辺境伯に認められ、すぐさま南部辺境騎士団へと移籍したことが遠因だった。
テレサロが想いを伝える機会を得られなかったのは、大公国から来た使者に足止めを食らわなかった南部辺境伯が、予定通りに王下直属騎士団を視察した為だった。
しかし、〝光の騎士〟となった彼と教会総本山で再会したテレサロは、無事にその想いをお互いに伝えて添い遂げた。
ーーーミィは死ななかった。
お遊びでオルミラージュ本邸に潜り込んでいたウェルミィは、一人の庭師に貞操を狙われたが、肝の座った彼女の魔術によって拘束された。
その後、それを指示した人物を知ったウェルミィは彼女に『指導』を行い、事件は秘匿された。
また、その時に行われた側付き侍女の選抜では『傷顔』と呼ばれた少女とハチミツ色の髪の少女が、『ミィとアロイ』として仲良くなったウェルミィ、イオーラの指名で専属侍女となった。
『傷顔』とハチミツ色の髪の少女は、虐待死する前にエイデス・オルミラージュ侯爵とレオニール・ライオネル特務卿によって保護されていた。
ルトリアノは、グリンデル伯爵家への復讐を目論んで幼い少女らの心に深い傷を負わせながらも、結局、彼女らの命までは奪わなかった。
ーーーオルミラージュ侯爵夫人は死ななかった。
しかし八大婚姻祝儀祭での披露パレードの最中には、とんでもない事故が起こった。
空中でショーを行っていた飛竜二体が、隊列を乱して接触。
墜落しかけた仲間の飛竜の体勢を立て直す代わりに墜落した、アーバイン・シュナイガーの乗騎が彼女の乗った地竜車を直撃したのだ。
しかしオルミラージュ侯爵は咄嗟に防御魔術の展開を行い、同時にアーバイン・シュナイガーも防御魔術を展開。
その反発で静止した飛竜に向かって、パレードを目撃していた騎士レイデンが突撃、押し上げられて体勢を立て直した飛竜は再び空に舞い上がった。
この事故で、怪我人は出なかったという。
ウェルミィの『アーバインだもの、仕方ないんじゃない?』という口添えもあり、祝儀の場でもあったことから、この件は後に演出の一環として、不問に伏された。
アーバインは辺境伯領で、師としてその才覚を伸ばす『殲騎』レイデン・アバランテに出会わなかった。
しかしこの件で結局辺境伯に目をつけられたレイデンは、伴侶となっていた少女と共に南部辺境に赴き、騎士団長としてアーバインに指導を行ったという。
ーーーウェルミィは死ななかった。
大公選定の儀に参加する為に大公国に赴き、王太子一行を狙った暗殺者から、エイデス・オルミラージュ侯爵を庇って毒を塗ったナイフで怪我を負ったものの、その場に参列していた聖女と、付き従っていた魔女の癒しによって完治した。
この件で、オルミラージュ侯爵とイオーラ妃が激怒。
その犯行を指示した〝水〟の大公は、拘束された。
ライオネルの報復を恐れ、また権力の座から〝水〟を引き摺り下ろす好機と見た、残り三公家が行ったことだった。
オルミラージュ侯爵家に行った犯行と精神操作の魔薬の件も明るみになり、表向き『病死』として密かに処刑された。
ーーーウェルミィは、様々な要因で幾度も死に掛けるが、決して死ななかった。
ありとあらゆるほんの些細なズレは、彼女の機転と彼女を愛する人々により修正され、彼女がオルミラージュ侯爵と生涯添い遂げる上での障害とは、ならなかった。
幾つもの分岐の内の一つでは、二人のウェルミィが義姉イオーラを救い、常ならぬ災厄によって【魔王】が生まれ落ちない世界線すら存在した。
何者でもない少女。
賢く、演者としての力に優れ、朱の瞳の一族であること以外に、特別な祝福など何一つない少女。
しかし、彼女には誰よりも強い『意志』があった。
あらゆる歯車を最良の状態にする為には決して欠かせず、物事の中心に立つ少女。
ーーーウェルミィは救われる。
誰よりも彼女を愛するオルミラージュ侯爵と、〝精霊の愛し子〟イオーラ・ライオネル妃によって。
ありとあらゆる想定の中で、彼女は常に生き残り、幸せな生涯を送ることになる。
ーーー彼女を愛する全ての者が、望む通りに。
これにて、四章表は終了です! ここまでお付き合いいただいた方々、誠にありがとうございました!
裏も順次投稿していきますー♪
悪役令嬢の矜持コミカライズが、『マンガUP!』さんにて連載中ですー♪
ただいま、5話まで先読み公開されております!
『私のお義姉様を、侮辱するな!』というウェルミィが、星樹先生の素晴らしい絵で表現されていますので、是非是非見ていただければと思います!
↓連載サイト
漫画UP
https://magazine.jp.square-enix.com/mangaup/
コミックシーモア
https://www.cmoa.jp/title/283171/
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