友人に結婚の申し込みをされようとした時に大変な知らせが舞い込んで来ました
私はその後延々、モスリム伯爵からお世継ぎの必要性について話されたのだ。本当にうんざりした。
いざとなったらお父様やお母様、あるいはお兄様が継げば良いんじゃないのと投げやりな態度で答えたら、皆に白い目で見られてしまったんだけど……
この件は頭の痛い問題だった。
やっと解放されたと思ったらハワードが飛んで来て、いきなりプロポーズを始めて私は目が点になった。
「天にましますリディアーヌ様。是非ともあなたの僕の私、ハワード・ノールを夫にしてください」
ハワードはそう言って土下座を始めたんだけど……
というか、天におはします我らが父よ、という食前のお祈りのフレーズじゃなかったっけ?
それは私は食い意地が張っているけれど、食前のお祈りを持ってくるか?
それに土下座って何よ!
「我が戦勝の女神であり、天使リディアーヌ様よ。あなたの行くところには勝利しかない。そのあなたと手を取り合って生きていく許可を頂きたい」
その横でチャーリーまでが言い出した時には私は開いた口が塞がらなかった。傍目から見たら飛んだ茶番だ。レナードなんか腹を抱えて笑いこけていた。私が放出系魔術が使えたら、絶対に爆裂魔術か何かをお見舞いしている所だった。
まあ、チャーリーの方が申し込みの言葉としてはハワードに比べたらましだったけれど、そもそもあんたらはエリザベスちゃんを巡って取り合いをしていたんじゃないのか?
私には不信感しか残らなかったんだけど。
「ちょっとチャーリー、何故お前が出てくる」
「いや、お前こそ、エリザベスちゃんで良いだろ」
「あいつは俺の妹分で……」
この二人は絶対に遊んでいる。
それよりも黙りこくったレックスの方が私は気になったんだけど。
故国に残してきた婚約者でも思い出したんだろうか?
「部屋に帰ります」
何かむしゃくしゃしたので、私は言い合いをする二人をほったらかしにして自分の部屋に帰ろうとしたのだ。
「えっ、ちょっと、リディアーヌ様」
ハワードが慌てて追いかけてきたんだけど、
「別に良いわよ。あそこでチャーリーと喧嘩していたら」
そう言い放って外に出た途端だ。
今度はバラの花を持った男が私の前に跪いていたんだけど。
「お初にお目にかかります。私、モスリム伯爵が孫、バージルと申します。リディアーヌ様には妹を助けていただき大変ありがとうございました。これはお近づきの花束でございます」
そう言って男は花束を差し出してくれたのだ。
「バージル、貴様、何をふざけているんだ」
そう言うと私よりも先にハワードがその花束をひっつかんでくれたんだけど……
「これはハワード久しぶりだな。その方には妹の件で大変世話になった」
「なら、引っ込んでくれ」
「何を言う、それとこれとは別だ。俺はリディアーヌ様の凜々しいお姿に惚れてしまったのだ」
何か背中がむずむずする言葉をバージルが言ってくれるんだけど……
「いや、ここにいらっしゃいましたか、私バスター伯爵の嫡男で」
「いや、待て、私、この領地の隣におります子爵家の……」
私はあっという間に5人くらいの男達に囲まれようとして、ハワードが庇おうとしてくれた。
「ちょっと待て、今はリディアーヌ様は移動中だ」
「良いではないか。部屋に申し込んでも貴様が取り次いでくれないんだろうが」
「そうだそうだ」
「当たり前だ。そういう話はリディアーヌ様の一の騎士の俺に剣で勝ってからにしてもらおうか」
胸を張ってハワードが言い出した。
「な、何を」
「貴様に剣で勝てるわけは無かろう」
「勝負なら知識で」
「いや、剣だ」
男達とハワードがにらみ合った時だ。
唖然と見ていた私の手をさっとレックスが掴んでくれたのだ。
「リディ、こっちだ」
私はレックスに連れられて男達のいない方に駆けだした。
「あっちょっと」
「レックス、卑怯だぞ」
「俺はお前に勝ったよな」
「なっ……」
追いかけようとしたハワードが途中で男達に蹴躓いて男達を巻き込んで盛大に転けてしまった。
私はそのままレックスに連れられて屋上まで駆け通したのだ。
「「はあ、はあ、はあ、はあ」」
私達はしばらくドキドキ鳴っている心臓と呼吸を整えようとした。
「なんとか逃げ切れたな」
「本当に!」
私達は顔を見合わせて微笑み合った。
「本当に婚約者なんてそう簡単に決められないから」
私は愚痴を言った。
「まあ、リディは婚約破棄されてまだ数ヶ月しか経っていないからな」
「まあ、あいつともとっくに終わっていたけれどね。あいつが好きだなんて思ったこともないし」
私が笑うと
「そうだよな」
レックスも笑ってくれた。
「レックスは故郷に婚約者を残してきたんじゃないの」
私は思いきって聞いてみた。
「婚約者はいない。言い寄られた奴はいるけれど」
「ふーん、今の私みたいに」
「それよりも強烈にかな。リデイの場合は立場は上だから良いけれど俺の場合は下だからな」
「そうなんだ」
伯爵家のレックスに言い寄るって侯爵家か公爵家の令嬢なんだろうか?
でも、それならば勝てるのかもしれない。今の私はボルツアーノ王国と広さでは同じくらいの新生竜王国の女王なのだから。
脈絡もなく、私はそう思った。
「リディ、俺はそのしがらみをなんとかするから……」
えっ、今、私、レックスから婚約の申し込みを受けている?
一瞬期待した時だ。
いきなり私達の前に紙が現れたのだ。
それにはでかでかと
『クラスメートが次々に教会に逮捕されている』
と書かれていた。
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
私の本格的に初めて書き出した
『皇太子に婚約破棄されましたーでもただでは済ませません!』
https://book1.adouzi.eu.org/n8911gf/
がついに最終章に入りました。
ゼウスがついに魔神になって地獄まで支配します。
傍若無人の戦神シャラザールとクリスはどうする?
史上最大の戦いが今始まります
この物語と同じくらい面白いので是非ともお読みください








