竜王国初代国王になることが私の意思と関係無く決定してしまいました
私はレックスの胸で泣いて本当にすかっと吹っ切れたんだと思う……まだお兄様の事を思うと後悔と言うか、何か他の手段があったのではないかと思うけれど……少なくとも、皆の前で見苦しい姿をさらさないまでには回復した。
泣き終わってほっとして、皆のところに戻ると、皆の目が何故か生暖かかった……
「リディアーヌ様、この度は孫娘を救って頂き誠に有り難うございました」
そして、飛竜騎士団によって解放されたモスリム伯爵達が私の前に跪いてくれたんだけど……
「モスリム伯爵、私は当然の事をしたまでです。さあ、跪いていないで、立たれよ」
「いえ、これより、モスリム伯爵家は何の役にも立たぬ、いや、我ら領主にとって害悪にしかならないシュタイン王国国王を見限り、新生竜王国国王リディアーヌ様に、忠誠を誓わせて頂きます」
伯爵の一族郎党全て全員が跪いてくれたんだけど……
「えっ?」
竜王国ってレナードとかが勝手に言っているだけではないの?
そもそも、私は国王になるって一言も了承していないんだけど……
「左様か、モスリム伯爵の忠義、確かに竜王リディアーヌ様は受け入れられよう」
ちょっと、レナード! 何を勝手に受けているのよ!
私が文句を言おうとしたら、
「ははあ、有り難き幸せにございます」
モスリム伯爵が受けてしまったんだけど、
「えっ、あの」
こいつらなんで日本の時代劇みたいな言葉を話しているのよ! まあ、日本の乙女ゲームだったから仕方がないかもしれないけれど……こんな展開がゲームにあったか?
そもそもゲームにこんな下克上の展開があるわけないんだけど……と言うか、私は国王になるなんて一言も言っていないわよ!
なのに、
「ちょっとあなたたち」
私が文句を言おうとしたときだ。
「新生竜王国国王、リディアーヌ様万歳!」
「えっ?」
いきなり、ハワードの馬鹿が、万歳始めたんだけど……
「リディアーヌ様万歳!」
「「リディアーヌ様万歳!」」
「「「リディアーヌ様万歳!」」」
いつの間にか街中の人々が万歳を叫んでくれているんだけど……
そんな!
私は唖然として見ているしかできなかった。
「まあ、諦めるのね」
後からやってきて、私つきの侍女兼補佐官になった、ベティに言われてしまったんだけど……
「でも、ベティ、私は国王って器じゃないのよ。国王って文官達が持ち寄ってきた起こった難しい問題を解決するためにいろいろ考える人じゃない。私はそんなの考えられないわよ」
そう、脳筋の私にはそんな難しいことは無理なのだ。
「それはリディには無理よ」
「でしょう」
ベティは判ってくれていると思ったのはここまでだった。
「そもそもあなたは宰相のマトライ卿やレックス達が出してきた案をただひたすら盲判を押せば良いのよ」
「何よそれは?」
私がむっとして言うと、
「あなたが出来ないことはできる人に任せれば良いじゃない。あなたは戦闘だけしていたら良いのよ。それでこの世は全て丸く収まるわ」
ベティが言ってくれたんだけど……
それは確かに前世の歴史の中で、ヤクザの親分だった劉邦は、謀は全て知謀は神のごとしと言われた参謀の張良に任せ、内政は統治の神様と言われた文官の蕭何に、戦争は戦いの天才の韓信に任せて、天下を取り大漢帝国を作り上げたのだ。劉邦は能は無くただの飲んべえだったみたいだが、人の才能を見抜く能力だけはあったらしい。そして、任せたらその者を完全に信頼して任せきったのだ。
皆はその劉邦の期待にものの見事に答えてくれたのだ。
でないと神童と言われ見た目も龍神様のように凜々しく強そうに見えて、一時期天下の大半を治めた項羽が劉邦に負ける訳は無かった。項羽は劉邦と違って何でも自分でやってみないといけない性分で、他人を信頼して任せられなかった性格が災いしたという。
「でも、私は人を見分ける才能は無いんだけど」
私が言うと、
「国を治める仕事は宰相のマトライ卿とレックスに任せれば良いんじゃ無い。戦闘は最強戦力のあなたが中心でやれば、勝てるんだし」
「そんな訳無いわよ。私は脳筋なんだから、罠を仕掛けられたらどうなるか判らないわよ」
「あなたとドラちゃんが揃っていて、破れない罠なんてあるの?」
「うーん、それは想像は出来ないけれど、絶対にあるわよ」
私がそう主張したが、
「リディは心配しなくてもリディのフォローは俺達でやるから大丈夫だ。少なくても、リディはシュタインの前国王に将来のシュタイン王国の王妃をやることを期待されていたんだから、問題はないって」
レックスが言ってくれたけれど……
「王妃と国王は違うわよ!」
私がなおも反論しようとした時だ。
「まあ、姫様。既にマトライが竜王就任式典の準備を始めていますからな。もう諦められるしか無いのでは」
「えっ、そんなの聞いていないんだけど」
レナードの言葉に驚いた私が言うと、
「ギンガルメを飛び出される時にマトライが『では後はこちらで進めておきますから』と申しておりましたからな。勝手に準備を推し進めておるようで」
「そんな勝手な事、私は知らないからね」
私はそう反論したけれど、理論整然としたマトライに私が口で勝てる訳は無かったのだ。
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
ついに竜王国国王にリディが就任か?
続きは明朝です。








