思わずレックスの胸で兄にしたように泣いてしまいました
敵のロリコン変態審査官を倒した後がちょっと大変だった。
「金髪の山姥!」
と言われて私は完全に頭に血が登ってしまったのだ。そう、少し、力を入れすぎた……
でも、ぶった斬った後はまだ良かった。
悪の司祭をぶった斬って、どや感満載で私は一人悦に浸っていたのだ。
でも、少ししてからだ。
ドドドドドド
大きな地鳴りとともに、教会が倒壊したのだった。
私達は地下室にいたからそんなに被害はなかったが……
落ちてきた瓦礫は私が剣で弾き飛ばしたし。でも一階とかは結構大変だったらしい。
「姫様。だからあれほど本気でやってはいけません、と日頃から注意をしているではありませんか」
後でレナードから注意されたんだけど……
私は本気を出していないし、変態司祭を斬ってから少し時間が経っていた。絶対にレナードの爆裂魔術かドラちゃんが尻尾か何かで建物に当てたのが原因に違いないのだ。
「ピー」
そう言ったら、ドラちゃんが怒ってへそを曲げてしまったんだけど。
うーん、おかしい。私じゃないはずだ。
レックスが教会内で生き残った聖騎士団を全員拘束してくれて、私は残っていた教会の癒やし系の魔術師を脅してハワードやその従妹のエリザベスの怪我を治させた。
ハワードがこんな小さい子だと言っていたエリザベスちゃんは、今年16歳で、全然小さな子供じゃなかった。何でも、ハワードは5年前の背の高さを言っていたみたいで、11と16じゃあ背の高さも違って当然だった。
「お兄様、助けに来てくれてありがとうございます」
美人になっていた従妹に手を握られてお礼を言われてハワードは照れていた。
でも、馬鹿正直にハワードは私が変態ロリコン司祭を斬り倒してくれたと手柄を私にゆずってくれた。
でも、あんな変態を斬り捨てたっていっても、そんなのは何の自慢にもならない。
ハワードが従妹の前で格好付けておけば良かったのに!
と私は思わないでもなかった。
「でも、ハワードが一人で飛び出したから、慌てて私も駆けつけたのよ。全ては飛び出したハワードのお手柄よ」
と私はハワードに花を持たせてやったのだ。
「ええええ! リディ、お前、ギンガルメでは、勝手に飛び出したハワードのことを見つけたらお仕置きしてやるとか怒りまくっていたじゃないか」
後から来たアーチが余計な事を言ってくれたけれど、せっかくハワードに花を持たせている時なんだから、今言う必要もないのに!
私は少しむっとしてアーチを睨み付けたのだ。
「それを言うならば、ここまで無理してハワードを乗せてやった俺様が一番のお手柄だよな」
横からチャーリーがしゃしゃり出てきた。
こいつもエリザベスちゃんが美人だからって出しゃばって来なくても良いのに!
「そうなのですか? お兄様を乗せてきて頂いてありがとうございます」
素直なエリザベスちゃんはお礼を言っていた。
「まあ、こいつは一階で騎士らが来るのを止めてくれていたからな」
「そうだ。俺は友達思いだからな。ハワード。お前の従妹ちゃんにちゃんと俺を紹介してくれよ」
「いや、エリザベス。お礼を言ったんだからもう良いだろう。こんな軟派な男には近づいてはいかん」
急に警戒心満載の過保護な兄になっていた。
「何だとハワード、貴様、俺が死にそうになって戦ってやったんだぞ」
「礼は後で飲み屋でも何でも連れて行ってやる。でも、軟派なお前に従妹の紹介は出来んな」
「お前、それは酷くないか。ねえ、姫様」
私はチャーリーにそう言われた時に、
「お兄様か……」
自分の兄のことを思い出していたのだ。
「えっ、何か言った?」
「いえ、ハワードが酷いんですって言っていたんです」
「まあ、良い兄じゃないか。我が家のお兄様も昔は良かったわ……」
私はそう言って少し固まってしまった。
「えっ、姫様何か言われました?」
「いや、ちょっとだけ外の空気を吸ってくる」
「えっ、姫様!」
チャーリーが何か言ったが、私はそのまま外に出たのだ。
私はお兄様と仲が良かった。
そう、年の離れた生意気な私だが、小さい頃は良くお兄様に本を読んでもらったりしていたのだ。お兄様は脳筋の私と違って博識で、いろんな事も知っていた。
私はそんなお兄様からいろんな事を教えてもらっていた。我が家の家庭教師は厳しくて、判らないことはお兄様に聞いたらいろいろ教えてくれた。だから、私はインスブルクにいる間は本当にお兄様に世話になっていた。インスブルクである程度の成績をとれたのは昔兄にちゃんと教えてもらっていたからだ。3年間の留学を経て帰ってきても、こんな風になるなんて、思ってもいなかったのだ。
私の目から知らずに涙が出ていた。
「えっ?」
私は顔から伝う涙に触れて初めて気づいた。
「リディ、大丈夫か?」
そこに後ろからレックスが声をかけてきた。
「何の話?」
私は誤魔化そうとした。
「ビリー様のことで泣いているんだろう」
「えっ、なんで判ったの?」
思わず、後ろを振り返った。
「それはリディの考えることなら判るさ。ずつとリディを見ているんだから」
レックスがそう言ってくれた。
「お兄様とはずっと仲が良かったのよ。私脳筋だから、勉強が苦手で……でも、お兄様は家庭教師がさじを投げ出しても、私を見捨てないでちゃんと教えてくれたのよ。本当に仲が良かったのに……なんであんなことになってしまったのかしら……」
私はそう言いながら涙が止まらなくなってきた。
「リディ」
そう言うとレックスは私の後ろから両肩に手を置いてくれた。
いつもレックスをドラちゃんの後ろに乗せていたからか、レックスに後ろから触られてもなんとも思わなかった。というか、レックスは私の背中に無くてはならないもので、ちょっと安心したのだ。
「私がお義姉様ともっと仲良くならないといけなかったのかな?」
「それは難しかったと思うぞ」
レックスが言ってくれた。
「コーデリア様は元々、ギンガルメから聖女教を広めるように言われていたからな。絶対に竜神様の化身のリディとわかり合えることは無かったはずだ。リディはできる限りの事はやったじゃ無いか」
レックスが認めてくれて後ろからぎゅっと抱きしめてくれた。
「でもでも、お兄様とあんなことになるなんて思ってもいなくて……」
私はそう言って、レックスを振り返った。
レックスも私より少し背が高かったので私の目の前に胸の位置が来たのだ。お兄様のように……
「どうしようもなかったさ、リディは本当に良くやったと思うよ」
「レックス!」
私はレックスの胸に抱きついて号泣してしまったのだ。子供の頃、お兄様にしたように。
レックスはそんな私をお兄様がしてくれたように優しく抱きしめてくれた。
「大丈夫だ。リディはちんとやっているから」
レックスはお兄様のように私が泣き止むまで腕の中で泣かせてくれたのだった。
ここまで読んで頂いてありがとうございました。
ここまで前しか見ずに突っ走ってきたリディも、思わずレックスの胸で号泣してしまいました。
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