聖女教教皇の独り言 昔振ってくれた女に仕返しすることにしました
「なんじゃと、ギンガルメの王国が竜娘に滅ぼされたと申すのか!」
私はその報に驚いた。
「はっ、今、報告が上がって参りました。竜娘が飛竜の集団を率いて、ギンガルメの王宮を制圧したそうです」
「おのれ、爬虫類の分際で身の程知らずも甚だしいわ!」
私は怒りのあまり、手に持っていたグラスを地面に叩きつけていた。
バリン!
ガラス片が周りに散らばる。
「そもそも、爬虫類の親玉は暗部がインスブルクで始末するはずだったのではないのか、ジョスリン!」
私はその報にぶちきれていた。
「申し訳ありません、猊下! 竜娘は王太子妃様にお渡しした竜殺しの宝剣が全く通用せず失敗に帰し、ギンガルメから送り込んだ王太子妃様は拘束され、竜娘の側近の騎士達によって、暗部は殲滅されました」
「なんと、暗部が殲滅されたのか」
「二流の人間を使っていたとはいえ、申し訳ありません」
「元々ギンガルメに渡していた竜石はどうしたのだ。古代竜を魅了すると言っておったでは無いか」
「確かに古代竜は興味を抱いたそうですが、竜娘が一喝するとあっさり竜姫に従ったそうです」
淡々とジョスリンは報告してくれた。
「うーむ、我が教会の至宝が二つも無駄になったというのか」
私はぎりりと歯を食いしばった。
「申し訳ありません。それだけ竜娘の力は強いみたいで、対策を抜本的に考えないといけないかと思われます」
「そうだな」
さらなる爬虫類対策がいるということか。私は頭を抱えたくなった。
「占拠後に竜娘らは我が教会を破壊したそうです」
「何だと、奴らは我が教会を破壊したというのか」
私は更に怒りに火がついた。
「今回のインスブルクの反逆は教会が絡んでいたということで破壊したと言い張っております」
「おのれ、我が教会を破壊するなど、必ずや天罰が落ちるであろう」
私は言い切った。
「直ちに竜娘並びにその縁者どもを破門せよ」
「はっ、直ちに」
私の傍に侍っていた司祭がそれを伝えるために外に出ていく。
私は少し心を落ち着かせた。
せっかく爬虫類の治める国を人間の治める国に世直しを行おうとしたのに、爬虫類たちに逆襲されて、一つの国を失ってしまった。これでは本末転倒では無いか。
「しかし、ギンガルメの王も期待してやったのに、大したことはなかったの」
「口だけは立派でしたが」
ジョスリンは私の言葉に頷いてくれた。
「無能な王に任せたのが間違いであった。もう少し教会が表に出るか?」
「さようにございますな。シュタイン王国も頼りなさげですからな。もう少し前に出られた方が宜しいかと」
「竜娘もおらんのに、シュタインの奴らは竜娘についた領地を奪回も出来ておらんのか?」
「はい。誠に頼りなく、どうしようもございませんな」
ジョスリンの言葉に私は決心した。
「では、少し奪還の手伝いをしてやるか。で、何からすれば良いと思う?」
私はジョスリンに聞いていた。
「竜娘達は現在、ギンガルメにかかりきりでございます。そこでシュタイン国内の古竜王地域の中央貴族どもに、竜娘に反旗を起こさせようと思います」
「そう簡単に行くのか? あの当たりは爬虫類に心酔しておる異教徒どもが多いとの事だが」
「それこそ、異端審査と魔女狩りを復活させれば、良いかと。中央貴族どもに異端審査と魔女狩りを盾に脅すのです。直ちに審査官を派遣して、異端審査をすると」
「そうよな。そういえば、古竜王地区の端にモスリム伯爵の娘がノール辺境伯に嫁いでおったな」
私は良いことを思い付いた。
「確かに、今、竜娘についておる従者の一人に辺境伯の息子がいたはずで、その母は伯爵の娘です。伯爵を異端審査にかけますか?」
「伯爵など異端審査にかけたところで何が嬉しいのだ?」
私は白い目で、ジョスリンを見た。
「ではその伯爵の婦人を魔女裁判で痛めつけるので?」
「お前は馬鹿か、そんな老女を魔女裁判などにかけてどうするのじゃ」
私は白い目でジョスリンを見た。老女を痛めつけたところで何の面白みもなかろう。
「では、その娘ですか。ははあ、猊下が、かつて思いを寄せられたエリーゼ様を魔女裁判にお掛けになると」
「ふん、本人か、まあ、本人にしても良いが、それよりももっと効果的な者がおるではないか」
「本人以外でございますか?」
ジョスリンは考えてくれた。
「考えるまでもなかろう」
「まさか、その娘で美貌の噂の高いエリザベス様でございますか」
「そうだ。何をしても構わん。徹底的に痛め付けてやれ。そうすればエリーゼが、泣いてすがってこよう。どのようにも料理が出きるわ」
私はとても楽しくなった。エリーゼには私が言いよった時に剣もホロロに振ってくれて、確か侯爵の次男を婿として迎え入れたのだ。私はその時の屈辱を未だに覚えていた。その仕返しをするときが来たのだ。
泣き叫ぼうがなにしようが、欲望の限りをぶつけて、弄んだ後に、魔女として、処刑してやるのだ。その前にまず、自らの娘が、ボロボロになるまで弄ばれるのを、横で泣いて見ているが良い。
私は竜退治をするついでの楽しみが出来て、とても嬉しくなったのだ
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中世教会の暗黒部分の魔女裁判。
狙われた娘はどうなる。
次回明朝更新予定です。








