兄嫁に刺されました
「ようこそ、お待ちしておりました。リディアーヌ様」
お父様のベッドの前に優雅にお茶を飲みながら待っている兄嫁、コーデリアがいたのだ。
「もっと早くお越しになると思っていたのですけど……」
「お義姉様のお国がいろいろ余計なことをして頂けたので、その対処をしていましたの」
私はむすっとして兄嫁に言った。
「そうですの? 余計なことでは無くて、この国に必要なことだと思ったんですけど」
「どこがよ。この国にギンガルメの大軍を入れるなんて許されないわ」
私がきっとして言うと、
「ビリー、お前そのような事を許したのか」
お父様がきっとしてビリーを見た。
「リディの横暴を止めるためには仕方がないと判断しました」
お兄様が平然と言ってくれた。
「私の横暴ですか?」
「そううよ。リデイアーヌ様。あなたの存在自体がこのインスブルク王国の未来に良くありませんわ」
「ふーん、義理の姉であり、他国のあなたにどうのこうのいわれる筋合いはないわ」
私は言い切った。
「小国が巨大な戦力を持ったところで、大国に取り込まれるか、邪魔者として処分されるかどちらかですのよ。あなたは既に大国から目をつけられております。そんな者がこの国にいるのは国にとって迷惑以外の何者も無いですわ」
なんか兄嫁がブツブツ言ってくれた。
「それがどうしたの?」
「だから、ここで、あなたには終わって頂くだけです」
「ふーん」
私は兄嫁が何を余裕ぶっているのか全然判らなかった。
「これが何かご存じ」
兄嫁は緑に輝く貴石を取り出した。
「その石ころが何なの?」
私には全く判らなかった。
「ほら、ドラちゃん、お食べなさい」
兄嫁はドラちゃんに手を出した。
その瞬間、ドラちゃんは目を輝かせたのだ。
そういえば私は忘れていたけれど、ドラちゃんはとても食い意地が張っていた。
「ピーーーーー」
と鳴くと一気に小さくなって、なんと恩知らずにも私の元から兄嫁の膝の上に飛び乗って兄嫁の手から貴石を受け取ると嬉々として舐めだしたのだ。
「これは竜石と言って、我がギンガルメ王国に伝わる竜を虜にする石ですの。古竜王国の竜も最後に、ギンガルメ王国の王女の手にあったこの石で王女のペットに成り果てて、古竜王国は滅んだそうですわ」
そう言うと兄嫁は笑ってくれたのだ。
妖艶に。
私は食い意地の張ったドラちゃんにつくづく愛想が尽きた。
「リディ、俺はお前にいつも勝てなかった」
「何言っているの? 文官の能力は私はお兄様に勝てないでしょ」
「そんなのは誰でも出来る。俺はまったく竜に相手にされなかったんだぞ」
お兄様が叫んでくれた。
「いや、国王は何も竜に愛されずとも」
「何を言っているんだ。竜王国の国王が竜に愛されなくてどうする。俺はお前と違って、竜に愛されていない。付き合う期間が短いからと思って、お前がいない時も必死に竜の世話をしたのに、竜は俺に対して見向きもしなかったんだぞ」
お兄様はきっとしてドラちゃんを見た。
「でも、これで竜はお前の物では無くて、コーデリアのものだ。もう、俺は竜に見向きもされない王太子だと陰口をきかれることも無いんだよ」
兄が必死に叫んでくれた。
「黄金竜を侍らせた女がインスブルク軍の全軍の指揮権を持つのでしたわよね。なら、今は私がインスブルク軍の全権を握っているということですわ。さあ、リディアーヌ様。私に降伏なさい」
「出来るわけ無いでしょう」
兄嫁が言ったが、私は首を振ったのだ。
「そうですの。なら仕方がありませんわ。リディアーヌを拘束しなさい」
兄嫁が一緒に来た騎士団長等に命令した。
でも兄嫁が命じても誰も動かなかった。
「何をしている。皆の者、コーデリアの言うとおりに動け」
兄が叫ぶが、誰も何も動かなかった。
代わりにゆっくと兄たちに近づいた。
「な、なんで誰も動かないのです」
兄嫁は少し焦りだした。
「コーデリア様。リディアーヌ様はあなた様のような偽りの竜姫では無くて、生まれながらの竜姫様なのです」
後ろから来た騎士団長が言ってくれた。
「何ですって! 私は今はこの黄金竜の主になったのですよ」
「そうだ。この竜の主はリディで無くてコーリアのはずだ」
「はああああ」
私は盛大なため息をついてあげた。
「食い物でつっているだけでしょ。ドラちゃんに何か命じてみなさいよ」
「ドラちゃん、この女をやっつけて」
兄嫁は叫んだが、ドラちゃんは大きくあくびしただけだった。
「そんな馬鹿な。ドラ、リディをやっつけろ」
お兄様が叫んで命じたけれどドラちゃんは無視した。
そうだ。ドラちゃんに命じられるのは私だけなのだ。
「いい、お兄様、お義姉様。今回の反逆の件。いろいろ思い悩むこともあったのでしょう」
私は言ってあげた。
「何を言っている。竜王で無い男は国王に相応しくないとずうっと言われた貴様に判るか! リディ様が王になられれば良いのに、何故ビリー様なのだと、重臣どもに言われ続けられる事がどういう事か貴様に判るか」
お兄様は叫んでいた。
「それがどうしたのよ。インスブルクなんて小国の王女なんて王太子の婚約者に相応しくないって散々言われた私と何が違うのよ」
私は叫んでいた。
「お兄様は少なくとも統治能力は私よりあったでしょう」
「竜姫である貴様に、そうでない俺の思いなんて判るか」
「ああ、そうね。判らないわよ。でも、それでお父様を刺すお兄様の心も判らないわ」
「父に裏切られた俺の思いが判るか」
「いや、違うぞ、ビリー、俺はこの国をお前に譲ろうとしてだな」
「嘘をつくなよ、親父。竜から愛されない俺を見限って竜姫のリディを呼び戻そうとしたんだろう。コーデリアがそうに違いないと言っていたぞ」
「いや、ビリー様、陛下はビリー様に継がそうとなされていたのですぞ」
宰相が言いだした。
「私が反対しましたが、陛下はそのためにあなたのを呼ばれたのです」
「そんな、ばかな事があるか」
宰相の言葉にお兄様は叫ぶが、
「事実だ。ビリー」
「そんな……」
お父様の言葉にお兄様は唖然としていた。
私達がお兄様に注意を向けていた時だ。
兄嫁が突然手元にナイフを出して、私に突き出したのだ。
ブス!
私はそれをスローモーションを見るように見ていた。
信じられないことにブスリと兄嫁の差し出したナイフが私に突き刺さっていたのだ。
いきなり刺されたリディの運命やいかに
続きは今夜です。
続きが気になる方はブックマーク、広告の下の評価☆☆☆☆☆を★★★★★して頂けたら嬉しいです(*ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾








