山賊を子分にしました
「で、姫様。どこに向かうんですか」
チャーリーが聞いてきた。
「うーん、インスブルクは脱獄してきたから帰れないし……取りあえず、どこか人のあまりいないところで今晩一晩寝られるところを考えないといけないわね」
「どうする、リディ?」
「チェリー山の山麓はどう」
「チェリー山って活火山だろう」
レックスが驚いた。
「まあそうだけど、何も火口で寝ようなんて思わないんだから、麓だったら大丈夫よ」
私が言い切った。
「なら良いけれど、本当に大丈夫なのか?」
「まあ大丈夫よ。いざとなったらドラちゃんがいるし、なんとでもなるわよ。それに食料とか仕入れないといけないしね」
取りあえず、私達は火山の麓の洞窟を見つけ出してそこで休むことにしたのだ。
「あれ、何か食料がありますよ」
ハワードが言ってくれた。
見るといろんな所に食料が置かれている。
それに中はとても整備させられていたのだ。
「おい、これは山賊か何かのアジトなんじゃないのか」
レックスが言い出した。
「へええええ、山賊なんているんだ。珍しいわね」
私は驚いた。
「いや、リディ、普通は山賊はどの国にもいるぞ。どの国も皆討伐に苦心しているんだ」
「えっ、そうなの」
私は驚いてレックスを見た。
「特に最近シュタインは最近税の取り立てが厳しいって話だから、税を払えないから逃走して山賊や盗賊になる奴らが増えているんだ」
「そうなの? 我が国は税も取れ高の30%だから、逃げる必要はないから山賊がいなかったのね」
私が感心して言うと
「姫様。我が国に山賊がいないのは姫様がレナードと一緒に全部退治してしまったからでしょう」
チャーリーが言い出してくれたけれど、
「ええええ! 私達が潰したのはたった3っつだけよ」
私は言い訳した。
「その三つとも山賊を殲滅したでしょう」
「だって、その頃はまだ聖剣使っていたから、制御が難しくて。使っちゃうと大体洞窟が崩壊しちゃったのよね」
「ああ、あの王宮を崩壊させたあれか」
遠くを見るようにレックスが言ってくれたんだけど。
あれはまだ十分に制御できた方だ。
「あの時はたしか、世界的に有名だったモンブラン山を崩壊させたんですよね」
ザカリーが思い出したくないことを言い出してくれた。
モンブラン山は我が国では結構有名な山で、風光明媚な山でもあったのだ。
それを山賊退治の時にちょっと失敗して山ごと崩壊させてしまった。
あのときは私も本当に死にそうになった。
でも、その後お父様とお母様から延々怒られたのだ。本当に最悪だった。
それからだ。山賊共がいなくなったのは。
そういえばこの頃からかもしれない。私が金髪の山姥って呼ばれる鵜になったのは。
10歳の子供を捕まえて山姥はないんじゃないかと思ったけれど……
私はそれまで、レナードと一緒に山で訓練していた。最初はダンジョン攻略していたんだけど、全てのダンジョンを攻略尽くしたので、今度は山賊退治に変えたのだ。それまで山賊見つけたら攻撃の練習で攻撃してたんだけど、モンブラン山を崩壊させてからは、山という山から山賊がいなくなったのだ。ダンジョンも制圧し尽くしたし、これからダンジョンの代わりに山賊退治たと意気込んだしりからそれで、私はがっかりした。
相手がいなくなったらレナードが急に不機嫌になって、私を火口に突き落としたり、滝壺に落としたり、過激になり出したのだ。
本当に最悪だった。あんなんだったらダンジョンも手加減して残しておけば良かったと思ったのは後の祭りだった。
「まあ、良いわ。取りあえず、食料を頂きましょうよ」
私が言うと、
「リディ、良いのか? 山賊のものを盗んで」
レックスが言ってくれたけれど、
「どのみち麓から盗んできたものなんでしょ。後で麓の町には私が魔石をお礼に渡すわよ」
私はそう言ったのだが、
「というか、山賊から食料を盗むというのが問題だと思うぞ」
レックスが更に言い募ってくれた。
「そこは気にしなくて良いわよ。どうしてもというのならば山賊に魔石置いていけば良いでしょ」
私はふところから魔石を出した。
「いや、それはでかすぎるだろう」
レックスが私の魔石を見て言ってくれたが、
「うーん、これが一番小さいのよね。小さいのは全部マトライに渡したし」
私が困って言うと、
「まあ、どこか町で魔石を金に換えるしかないか」
レックスも諦めてくれた。
「まあ、皆、今日は頑張ってくれてありがとう。お陰で作戦はうまくいったわ。今日は好きなだけ食べて、飲んでも良いわよ」
私は皆に言ってあげた。
「やった。姫様頂きます」
「頂きます」
山賊の食料を私達は盛大に食べ出したのだ。
「おいおい、良いのかよ」
レックスは呆れていたが、諦めて食べ出した。
取りあえず、ベティとアーチの傷にはレナード特製の塗り薬を塗って治療しておいた。まあ副作用で熱が出るかもしれないが、この薬は効きは良いのだ。翌朝には治っているだろう。
私は楽観していた。
私も戦うとおなかが減るのだ。そして、目の前に食料を山積みして盛大に食べ出したのだ。
皆でむしゃむしゃ食べている時だ。
いきなり扉が開いて山賊共が帰ってきた。
「貴様ら。貴様らが食べているのはこの泣く子も黙るチェリー山賊団の食料だと判っているのか」
親玉らしい太った男が叫んでくれた。
でも、私は食べている途中だったので、全く無視して食べていた。
代わりにハワードが立上がってくれた。
「ハワード、殺しちゃだめよ」
私は一応注意をしてあげた。
「何だと貴様ら。このお方は泣く子も黙るチェリー山賊団の太ったジム様だぞ」
子分とおぼしき男が叫んでくれた。
「ふんっ、それがどうした?」
ハワードがにやりと笑ってくれた。
「何だと、貴様、体がでかいからって強いとはかぎら……」
子分が大刀を出して斬りつけようとした瞬間だ。
ハワードが居合いで斬りつけたのだ。
一瞬だった。
男の剣が真っ二つに割れて、髪の毛がざっとくりと斬り取られたのだ。
そこには半分髪の無くなった子分がいた。
「生きていたかったら黙っていろ」
ハワードは子分に命じていたのだ。
「ヒィィィィィ」
子分は腰を抜かしていた。
「な、何をしている。貴様らやってしまえ」
親分は言ったが、子分達は完全に腰砕けだった。
「お、親分、あの食べている女。全国指名手配になっている金髪の山姥ですよ」
子分の一人が余計な事を言うのが聞こえた。
「な、何だと」
親分は目を見張って驚いて私を見た。
「貴方たち、今、私のことをなんて呼んだの」
私がゆっくりと立上がったのだ。
「ひ、ヒェェェェェェ、お許しください。金髪の山姥様」
親分は私の前に土下座してくれたが、
「誰が山姥よ」
「ギャー」
私はその瞬間湯沸かし器みたいになって太ったジムを叩いていたのだ。
「ひぇぇぇぇぇ」
「お助けください
「頼みますから命だけは」
頭を抑えたジムもろとも100人くらいの手下が私に土下座してきたのだ。
私が新たな100人の手下を手にした瞬間だった。
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
領地を追い出されたリディですが、いきなり子分の数が5倍に増えました。
次はベティの両親を助けに行こうとします
明朝更新予定です。








