3年ぶりに故国に帰ってこれて皆に出迎えられて思わず泣いてしまいました
巨大竜のドラちゃんは風を切って飛んでくれた。
風がビュービュー当たって気持ちよかった。
町並みや街道が小さい模型のように見える。
高度は千メートルくらい。昔一万メートルの高度まで上がった時は死にかけたけれど、この高度なら余裕だ。
久しぶりの空の旅を私は満喫したのだ。
「姫様、一度、休憩した方が良いんじゃないですか?」
チャーリーが飛竜を寄せて来て心配して聞いてきた。
「えっ、私はまだまだ大丈夫よ」
私はまだ飛び出して間もなしで全然疲れていない。
「姫様じゃないですよ。下の者達、このままじゃ山越えの時に落ちるんじゃないですか」
「ああそうだ。彼らを連れていたんだわ」
首を伸ばして下を見ると必死に足にしがみついているレックス等が見えた。さすがに剣術部の三剣士でまだ捕まっていたが、なんか今にも落ちそうだ。高度は五千メートルは超えるし、これでは山越えは無理だ。
私達は国境の手前の林の中に舞い降りた。
「リディ、俺達を忘れるなんて酷いぞ」
「本当だよな」
アーチとレックスがヒイヒイ言いながら文句を言ってくれた。
彼らは竜に乗って空を飛ぶ体験が初めてで、結構堪えたらしい。まあ彼らだから耐えられたというのもある。
「ごめんごめん」
私は一応彼らに謝った。
「お前ら、姫様の友人か何かは知らんが、このインスブルクの竜姫様に言い方は気を付けろ」
チャーリーが注意していたが、
「そうだ。貴様らはリディアーヌ様に対していつも不敬だぞ。俺みたいに敬語で接するべきだ」
いつも敬語のハワードは平然と言い切るが、
「チャーリー。良いわよ。彼らは私の友人なんだから」
私が言うと、
「友人としてインスブルク王国に迎えるんですか? 姫様の配下としてではなくて」
「当たり前でしょ」
チャーリーの言葉に私が頷くが、
「いや、チャーリー殿、我々が考えなしだった」
「そうだ。王女殿下の配下として扱ってくれ」
二人は否定したのだ。
「えっ、貴方たち本当に国を捨てるの?」
私は驚いた。
「出来たら捨てたい」
「俺は元々そのつもりだ」
「私は、リディアーヌ様に剣術で負けた時からリディアーヌ様の僕です」
三人は答えてくれた。レックス以外は本当に捨てるみたいだ。
「姫様、また変なの捕まえてきたんですね」
ハワードの言葉にチャーリーが笑ったが、
「変とはまた言ってくれるな。俺は剣では誰にも負けないぞ」
むっとしてハワードが睨み付けた。
「うーん、インスブルク軍の主力は飛竜騎士団だ。竜に乗れないとどうしようもないぞ」
チャーリーが指摘してくれた。
「何、竜に乗れないと難しいのか?」
途端にハワードの顔が白くなる。
「まあ、貴方たちは剣術が凄いから使い道はあるわよ。別に無理して竜に乗れなくても良いわよ」
私が否定するが、
「いや、私も是非とも乗れるように頑張ります」
ハワードは言い切ったんだけど、本当に大丈夫なんだろうか?
ほかの二人の顔も白い。
少し休憩した後、私たちは今度こそ飛び立った。
ドラちゃんはぐんぐん高度を上げていく。このシュタイン王国と我がインスブルク王国を隔てる高い山脈を越えるのだ。前世の日本なら三千メートル級の山々になるのだが、こちらではおそらく五千メートル級の山々になるだろう。
峠の標高でも三千メートルを越えるのだ。
国境にもシュタインの兵達がいたら面倒なので、ここは一気に山脈を越えることにした。
ドラちゃんはぐんぐん標高を上げていく。
山々はまだたくさんの雪で覆われていた。
「きれいよね」
私が後ろを見ずにいうが、返事が聞こえない。
「大丈夫?」
慌てて振り返ると
「よく景色を見る余裕があるな」
目を瞑って必死に耐えている息絶え絶えのレックスがいた。
アーチとハワードはなんと捕まりながら気絶していた。
「大丈夫かな」
私が心配して言うと
後ろを飛んでいる飛竜騎士団の面々が手を上げてくれた。
落ちたら拾ってくれるらしい。
私は彼らに任せる事にした。
山々を越えると急に景色が変わった。緑の草原になる。
そして、森林地帯になった。
高度を下げる。
「姫様だ。姫様が帰られたぞ」
見張り台の中から兵士達が飛び出してきた。
私が手を振ると、全員敬礼してくれた。
そして、何故かのろし台から金色ののろしが上がったんだけど、なんで?
「姫様、ご帰還の合図です。姫様、私についてきて下さい」
つか寄ってきたチャーリーが言うと、飛竜は翼を振って、高度を下げた。
ドラちゃんが続く、その後ろを飛竜隊が続く。
家々が多くなって王都が近づいてきた。
「巨大竜だ」
「おい、人が乗っているぞ」
「あれは姫様じゃないか」
「姫様だ」
「姫様が帰られたぞ」
家々の窓が開いて皆顔を出してくれた。
皆が外に出てきた。
何故か教会の鐘が鳴って、更に多くの人々が顔をだす。
私は彼らに手を振る。
「姫様」
「竜姫様だ!」
皆私に手を振ってくれた。
帰ってきた。故国インスブルクに。
この三年間は全く帰れなかった。私は帰りたかったのだが、一年目は前国王の容態が悪いので私はシュタイン王国からは出れず、次の年は喪中、最終年度は訳のわからない王太子妃教育で帰ってこれなかった。
久々の故郷だ。
でも、国民の皆は私を、やんちゃ姫を忘れないでいてくれた。
何故か私の瞳には涙が光っていた。
私は泣いていたのだ。
やっぱり故郷は良いものだ。
私は必死に手を振りながら涙していた。
ここまで読んでいただいてありがとうございます。
故郷に涙したリディでした。
ブックマーク、広告の下の評価☆☆☆☆☆を★★★★★して頂けたら嬉しいです(*ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾
さて、この後シュタイン王国は黙ってみているのか?
続きは今夜です。








