新生拡大竜王国初代国王に就任しました
その魔人を倒した時、私はほっとした。
でも、次の瞬間だ。
倒した魔人の真下に、レックスがいたことを思い出したのだ。
私は真っ青になった。
「レックス!」
私は慌てて、魔人の死骸をどけたのだ。
いや、蹴飛ばしていたと言って良い。
そうしたら、そこには、血の気の失せたレックスが倒れていた。
「レックス!」
私はレックスが死んだと思った。
思わず、レックスに抱きついていた。
「ごめん、レックス! 死なないで!」
私は大声で泣き叫んでいたのだ。
「リディ」
私の心が天に通じたのか、レックスが目を開けてくれた。
「良かった、レックス」
私はそのレックスに抱きついたのだった。
思いっきり。
「リディ、苦しい」
レックスの声に私は慌てて、力を緩めた。
良かった、本当に、レックスが無事で良かった。私がほっとして、周りを見た時だ。
私は多くの者達が天井の開いた穴から覗いているのに気づいた。
皆、温かい視線で私たちを見てくれているんだけど。
ええええ!
なにこれ?
私は驚いた。
「本当に姫様も慌てん坊ですな」
魔術で飛んで降りてきたレナードが呆れてくれた。
「この男が生きていることなんて、見た瞬間判りましたぞ。薄目を開けておりましたからな」
「レナード様。薄目は開けていないでしょう」
「いやいや、儂の目は節穴ではありませんぞ。レックスは確かに周りを探っておりました。姫様が泣いて近づいて来た時は歓喜しておりましたぞ」
「えっ、そうなの?」
「姫様に抱きつかれたときは歓喜の涙を流しておりましたからな」
「いや、あれは本当に痛くて」
「嘘はいけませんな。姫様に抱きつかれて感激して涙を流していたのですな」
レナードがそう主張してくれるんだけど……本当なんだろうか?
「り、リディアーヌ様! レックスの事なんてどうでも良いので、私の心配をしてほしいんですけど!」
私に向かってハワードが駆けて来て文句を言い出してくれたんだけど……
「いや、ハワード、あなた、今、普通に動いていられるじゃない」
私がそう指摘したら、
「レックスも普通に動けますよ。こいつは演技しているだけです」
ハワードがそう言ってくれるけれど、
「えっ、でもレックスは顔色も悪いし血だらけよ」
私が指摘すると
「こいつがそんな柔な訳ないでしょう」
「いや、これは仮病なんかじゃ無い」
ハワードの言葉にレックスがむきになって反論していた。
「姫様、元気な二人はどうでも宜しいですが、あちらの倒れているアーチは大丈夫ですかな?」
レナードの指摘で私は地下室の壁際でびくとも動いていないアーチを見つけたのだ。
「あっ、本当だ」
私はアーチの事なんてすっかり頭から抜けていたのだ。
「リディは酷い!」
後で散々アーチから文句を言われた。
アーチはすぐに癒やし魔導師に治してもらったけれど、3人の中では一番の重傷だったのだ……
シュタイン王国は完全に滅亡した。
というか、口の悪い人には私が下剋上して乗っ取ったと言うんだけど……
斎藤道三みたいにいろんな汚い手口を使って乗っ取ったんじゃないのに……
正々堂々正面から叩き潰したのよ!
外部から侵略したのだ。これからこの国を治めていくのは大変だろう。
まあ、でも、私は一応シュタイン王国の王立学園の卒業生だし、シュタイン王国の騎士団の幹部連中は大半が、王立学園の剣術部のOBで私はその後輩だ。特に上二学年は私の実力はよく知っているし、私には逆らえない。その父や祖父が騎士団の幹部なので、あっさり軍部の掌握は終わった。
軍のトップには辺境伯がついてくれたけれど、実力は元々折り紙付きなので、騎士団内部では文句は出なかった。
文官の方が大変かなとも思ったんだけど、元々私は未来の王妃候補ということでお妃教育でインターンシップみたいな感じで、いろんな部署で雑用仕事をさせられていたのだ。
今思えば絶対に王妃らの虐めだったと思うんだけど。当時は前世の記憶を取り戻していなかったが、文章仕事はある程度出来た。だから、少なくとも新入社員くらいの仕事は出来ていたと思う。
まあ、ここはマトライがいるから問題はないと思うんだけど、私を上に戴くのに大きな反発は無かったみたいだ。
表面上は。
これから国を治めていく上では次々にいろんな問題が出てくるとは思うけれど、それはおいおい片付けていけば良いだろう。
「姫様は本当にのんきですな」
レナードに言われてしまったけれど、脳天気の代表のレナードには言われたくなかった。
そして、今日は私の戴冠式だ。
一度やったから、なんでまたやらないといけないんだとマトライに文句を言ったら、シュタイン王国の面々に見せつけないといけないから是非ともやる必要がある、とまた延々2時間説教されてしまったのだ……
一応この国の王は私なのに、宰相の方が偉いんじゃ無いだろうか? と思わず思ってしまったくらいに……
私はドラちゃんに乗って、飛竜騎士団を従えて王都の大通りの上をゆっくりと飛んだ。
「リディ様!」
「陛下!」
「リディアーヌ様!」
皆が私に手を振ってくれた。
何故か国民は皆、私にとても親しみを持ってくれていた。
マトライ等が流布させた、前国王が王太子が無能だったら私に譲ろうと遺言したというあれが効いているのかもしれない。あの話では国王も王妃も王太子も、私を虐めて虐めて虐め尽くした鬼舅鬼姑鬼婿になっていた。うーん、あそこまで酷くは私はされていないんだけど……
「まあ、近いことはされていたよな」
とかレックスは言ってくれたけど、少し良心が痛んだ。
まあ、元々、私は王妃教育で市民ともふれあっていたし、孤児院の慰問とかもよく行かされていたというのもあるんだけど。
そして、今、私は仮王宮の正面に降り立ったのだ。
そこにはシュタイン王国の貴族が中心に、新生拡大竜王国の多くの貴族が一同整然と揃っていたのだ。
次々と私の後ろに飛竜達が降りる。
私は小さくなったドラちゃんを抱えて、レックスとハワードとアーチ等を従えてゆっくりと赤い絨毯の上を玉座に向かって歩いた。
私が玉座の前に立つとマトライが金色に輝く王冠を私の頭の上に置いてくれた。
「竜王国国王リディアーヌ様万歳」
ハワードが大声で叫んでくれた。
「「リディアーヌ様万歳!」」
「リディアーヌ様万歳!」
「「「リディアーヌ様万歳!」」」
「リディアーヌ様万歳!」
「「「「リディアーヌ様万歳!」」」」
最初は王宮内だけだった万歳の声も、いつの間にか、王都中で皆が万歳三唱してくれたのだ。
私はその声を聞きながら皆に手を振ったのだ。
レナードが私達の頭上に魔術の花火を次々に打ち上げてくれて、色とりどりの花火が大きく開いた。
その中を飛竜が編隊を組んで飛行してくれた。
ここに私の下剋上は達成されてシュタイン王国は滅び、新生拡大竜王国が誕生したのだった。
おしまい
ここまで読んで頂いて有り難うございました。
ここまでいろいろ悩むこともありましたが、なんとか書き切りました。
誤字脱字報告、感想、いいね等本当に有り難うございました。
ブックマーク、評価等して頂けた方には感謝の言葉もございません。
まだの方は是非ともブックマーク、広告の下の評価☆☆☆☆☆を★★★★★して頂けたら嬉しいです(*ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾
続き、閑話等はちょくちょくあげていこうとは思います。
今後ともよろしくお願いします。
この後は『皇太子に婚約破棄されましたーでもただでは済ませません!』
https://book1.adouzi.eu.org/n8911gf/
の最終章、頑張って書いていくのでそちらもよろしくお願いします。








