聖女の罠に填って銀の聖女の十字架を突き立てられました
私はシュタイン国王が一人なのと、その前の決戦で圧勝、王宮の近衛兵の逃亡が続出しているということで、完全に油断していた。シュタイン国王クラークがが腹黒い卑怯な手は使わないと勝手に思っていたのだ。でも、腐っても私をえん罪で断罪しようとした卑怯なエイベルの父だった。
私は宝剣を前にした国王が一瞬笑ったように見えた。
その瞬間、壁の周りに配置されていた置物だと思っていたゴーレムが動き出したのだ。そのゴーレムに気を取られた瞬間に、私の足下が何もなくなったのだ。
「えっ?」
私は次の瞬間、地面に吸い込まれるように真下に落ちたのだ。
「リディ!」
驚愕に歪む叫ぶレックスの顔を最後に見て……
私はその日は敵地にもかかわらず、女王らしい格好、すなわち、ドレスを着ていたのだ。当然聖剣を背負っていなかったし、ドラちゃんを連れていなかった。
完全に失敗だった。
下を見ると剣の針山になっていた。
バキン
次の瞬間には無意識に身体強化した靴で剣を踏み潰していた。
私でなかったら死んでいたかもしれない。
「ああら、死ななかったのね。さすが、エイベル様を張り倒したリディアーヌなだけはあるわ」
私は懐かしい声を聞いたのだ。
「アラベラ、あなたがなぜここにいるの?」
私は思わず聞いていた。
「あらご挨拶ね。私はエイベル様の婚約者ですもの。振られた腹いせに張り倒した暴力女のあなたと違ってシュタイン王国の王宮にいても問題はないはずよ」
アラベラは勝ち誇ったように言ってくれた。
「別に振られた腹いせで張り飛ばした訳では無いわよ」
私はむっとして反論した。
「ああら、、じゃあ、私に取られた腹いせ?」
「ふんっ、何を言っているのやら。エイベルなんて元々なんとも思っていないわよ。私は前国王に頼まれたから仕方なしに、婚約者になってあげただけなのよ」
私は正直に本心を言った。
「な、なんですって! じゃあ何故エイベル様を張り倒しのよ」
きっとしてアラベラが睨んできた。
「そんなの決まっているでしょ。やってもいないえん罪をなすりつけて断罪しようとしたから張り倒しただけよ」
私は言い切った。
「まあ、さすが脳筋。何でも力で解決すれば良いと思っているのね」
体制を立て直したアラベラが非難がましく叫んでくれた。
「ふんっ、最初にえん罪で断罪しようとしてくれた女に言われたくないわ」
私は反論した。
「何を言うんだか。何でも力ずくで解決してここまで来たくせに。今回も私を力ずくで何とかしようと思っているのでしょう」
非難がましくアラベラが言ってくれた。
「あなたが、素直に降伏してくれたら何もしないわよ」
「なんなの、その上から目線は? あなた何様のつもりなの?」
私の言葉にアラベラが言い返してきた。
「同じ言葉を返してあげるわ。あなたこそ何様のつもりなの?」
私達はお互いににらみ合ったのだ。
「ふん、そうだったわ。あなた爬虫類の王様になったんだって」
「は、爬虫類って何よ。竜は最上位の神聖な生き物よ。それを爬虫類呼びするなんて、不敬も良いところね」
私がむっとして言い返すと、
「何を言っているの? 生き物の中で一番偉いのは人間様なのよ。爬虫類なんて駆除されて終わりよ」
「なんていう、思い上がり、だからシュタインも教会も滅ぶのよ。人が世界で一番強いなんて事は無いわ」
私はアラベラを睨み付けてやった。
「ふん。どうやら私達の意見は合わないみたいね。爬虫類の王様は口だけ達者なようね」
アラベラが笑ってくれた。
「爬虫類爬虫類って煩いわね。いい加減にその口を閉じなさい」
「閉じなかったらどうするつもりなの? また、私をエイベル様のように張り倒すつもり。か弱い女の私を」
「時と場合によるわよ。でもこれ以上言うと張り倒すわ」
私はきっとしてアラベラを睨み付けたのだ。
「わっはっはっはっは」
いきなりアラベラが笑い出した。私は恐怖のあまり、アラベラが頭が狂ったのかと一瞬心配した。
でも、このアラベラはそんな殊勝な女では無かった。
「リディアーヌ、今回は私の勝ちよ」
なんか大上段にアラベラが言ってきた。
「そう、私は忠告したわよ」
私は体に強化魔術をかけた。
一気にアラベラを張り倒しに行くために。
しかし、その前にアラベラが言ってくれたのだ。
「それは私もね」
そう言ってアラベラが不敵な笑みを浮かべて銀色の十字架をアラベラが握った時だ。
ダンッ
凄まじい力が私に作用したのだ。
私は凄まじい力で地面に叩きつけられていた。
「ギャッ」
私は完全に肢体が地面に縫い付けられたように、押しつけられたのだ。
教会にあった竜殺しの秘宝は凄まじい頭痛がしたが、これはどんな仕組みかは判らないが私の体を地面に縫い付けたのだ。
完全に身動きが出来なくなったのだ。
「ふふふふ。聖女の十字架の力は凄まじいわね。こうなったら竜姫リディアーヌも形無しね」
笑ってアラベラが言ってくれた。
「良くも今までいろいろやってくれたわ。でも、ここであなたを殺してあげる。この教会に伝わるこの聖女の十字架でね」
そう言うと、私の視界の前でアラベラはその銀の聖女の十字架を振り上げてくれたのだ。
「死ね! リディアーヌ」
そう叫ぶと渾身の力を振り絞ってアラベラは私に銀の聖女の十字架を突き立ててくれた。
ズブッ
私はそれを避けることは全く出来なかった。
銀の聖女の十字架が私に突き立てられたのだった。
ここまで読んで頂いて有り難うございます
リデイの運命や如何に
続きは明朝です








