王都までの領主に降伏すると大半の領主が応じてきました
決戦は結局、圧勝だった。
本隊の5万の大半が王子を人質に取られて降伏したのだ。
その前にいた前衛は私達に中央突破された挙げ句に本隊の突撃で壊乱、崩壊していた。
生き残った軍も逃げるのを断念して降伏してきた。
右翼は私の聖剣での攻撃の後、辺境伯軍が突撃して壊乱、這々の体で生き残った軍は逃走した。
左翼は最初はシュタイン軍が当初は優勢だったが、私達が中央突破して、本隊を降伏させたと知って、シュタイン軍の左翼は取り残されるのを恐れて降伏してきた。
一部逃走した部隊もあるが、シュタイン軍は10万人以上の捕虜が出て大敗したのだった。
私としてはもっと暴れたかった。
いつもは使用を制限されている聖剣を好きに使えるチャンスだったのに、2振りしか出来なかった。
本来はもっとシュタイン軍が抵抗してくれて、竜王軍が苦戦。仕方なしに聖剣を使うと予想していたのに! シュタイン軍はあまりにももろすぎた。
「何よ。シュタイン軍って本当に弱かったわね」
私はご機嫌斜めだった。
「でも、シュタインの王太子も良い面の皮だったよな」
「ドラちゃんに上半身咥えられて振り回されて、唾液まみれになって死にそうになっていたのに、姫様ったら『ドラちゃん、そのキタナイ物をすぐにベッしなさい!』って怒られて、ベって吐き捨てられていたし」
「もう少し、労ってやっても良かったのに、『こんなキタナイ物口に入れるように教育したつもりは無いわ』って姫様に言われて、泣きそうになっていなかったか?」
「レナード様に檻に入れられて、目が死んでいたぞ」
ザカリーとトーマスが何か言っていた。
「そこ、煩い!」
私が指さしたら
「ヒィィィィ」
二人は叫んで飛び上がっていたが、絶対に悪いと思っていない。
「姫様、いくら処刑するとはいえ、姫様は竜王国の国王陛下なのです。もう少し、捕虜には博愛の精神を持って接していただきたいですな」
小さい檻に『くず』と書いた表札を貼りつけたレナードに言われたくないんだけど……
「レナード、私はエイベルを処刑するつもりは無いわよ」
「ええええ! 違うんですか。姫様」
ザカリーなんて大げさに飛び上って驚いてくれたんだけど……
「なんで私が処刑しないといけないのよ」
「ええええ! 良くも私を振ってくれたわね、って100叩きの刑にしないんですか?」
「する訳ないでしょ」
むっとして私が否定すると、
「そうですよね。そらあ姫様が直に手を下さることは無いでしょう。じゃあ、皆でのこぎり引きの刑ですか?」
ザカリーが更に言うんだけど、
「なんで殺す必要があるのよ。裏山にでも追放したら良いんじゃ無い」
「さすが姫様。残忍なことを考えられますね」
「どこが残忍なのよ」
私がむっとして聞くと、
「姫様。魔物の多い裏山なんかに捨てたら、慣れない王子様なら1日ももたずに魔物に寄ってたかって食われてしまいますよ」
「えっ、そうなの。私なんて5歳の時から普通に通っているのに」
「さすが金髪の……」
「ザカリー」
「ヒィィィィすみません。口が滑りました」
「あなた後ろには注意した方が良いわよ」
「ヒェェェェ、何卒お許しを」
ザカリーが大げさに謝ってくるけれど、絶対に悪いと思っていない。
「姫様と一般人を比べてはいけませんぞ」
レナードまでに注意されてしまった。
「まあ、エイベルのことなど後で良いでしょう。それよりも姫様。シュタイン王国への王都までの進軍は計画通りで宜しいですか?」
臨時に作られた捕虜の収容施設に捕虜を収容し終えたと報告に来ていたマトライ宰相が聞いてきた。
ここから王都まで百五十キロ。メイン街道は辺境伯の軍1万
右の古街道はモスリム伯爵の1万。左の新街道はバスター伯爵の1万が行軍するのだ。
私は抵抗する領地があればそこを攻撃するために待機していた。
いくつ抵抗してくれるかな?
暴れたり無い私は期待していたのだ。
もっともその行軍の前に、レックスとマトライで降伏勧告の書類が各街道沿いの領主に出されていた。
内容は今すぐ降伏したら特別に本領安堵。刃向かった場合は取り潰すと脅しておいた。書面には『王太子が無能の場合は国をリディアーヌ王妃に譲る』との前国王陛下からの偽の遺言書まで付ける念の入れようだ。
絶対に詐欺罪に当たると私は思ったのだが、
「そんなのあり得ないことくらい貴族共も判っております。ただ、貴族達にも降伏する大義名分がいるのです。嘘でも信じるでしょう。それともなんですか? 姫様は全ての領主の首をはねられるおつもりか」
とマトライに言われると、私はそれに賛成するしか出来なかった。
その書状の効果は凄かった。
次から次にと降伏する旨の返信が来たのだ。
「あんな詐欺の書面を皆信じることにしたんだ」
私がレックスに呆れて言うと
「嫌、違うよ。レリディ達の攻撃力が凄いのが改めて判ったから慌てて降伏してきたのさ。自分たちに向けられたらひとたまりも無いのが骨身にしみて判ったんだろう」
レックスが教えてくれたけれど、まあ、五万で二十万破れば普通は驚くかもしれない。
私のもう一暴れするという当ては脆くも崩れ去ってしまったのだった。
ここまで読んで頂いて有り難うございます。
次はシュタイン側の視点です。
完結の下剋上達成までまであと少しです。
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