敵が先制攻撃をかけてきました
「まだ、本隊は来ないの?」
私は相も変わらずイライラしていた。
先鋒の5万が国境に進出してから既に1週間が経っていた。
でも、本隊が来なかった。
右翼と左翼の五万人はすぐに来たのだ。でも、待っているエイベルの本隊五万人がなかなか来なかった。
先鋒5万を叩き潰しても良かったけれど、そうすると本隊がここに来ないで逃げる可能性があった。それでは本末転倒だ。
私はイライラしながら本隊のくるのを待ち構えていたのだ。
まさか私が張り倒したドラクエ男爵をエイベルの頭の上に転移させた結果、エイベルが気絶して1週間も寝込むなんて思ってもいなかった。
「やっぱり全然来ないじゃない」
私が前線に来てから既に7日になる。
先鋒が来てから配置についたのに!
敵の進軍の遅さは相も変わらずだった。
小競り合いは所々であったが、戦闘はまだ始まっていなかった。
今回は前の砦の攻防戦みたいに、防戦はほとんどしない方針だ。
私を牽制する両親も兄嫁も兄もいない。私を不必要に止める者など何もいないのだ。
そうなれば当然一撃必殺、敵の心臓部を打ち抜くハート作戦で一気に方をつける。
敵が二十万いようが、本隊を一気に襲撃して壊滅して、終わりだ。敵は大将をなくして、後は潰走するしかない。それを追撃して、一気に王都を落とす作戦だった。大将のエイベルさえ倒せば、降伏してくる者も出てくるだろう。
いかに、本隊までの距離を縮めて、一気に攻撃するかが今作戦の肝だった。
信長で言うところの桶狭間の合戦だった。
信長の歴史へのデビュー戦で、大国今川家の3万の大軍がいるのに、大将義元の本隊5千に2千の兵で急襲して大将の首を取り信長が勝った戦いだ。私はそれを狙っていた。
こちらにはドラちゃんを始め、航空部隊の飛竜が百騎いるのだ。一気に攻め込めば出来るはずだった。
「でも、リディ、敵は防衛のために魔術師を配置しているんじゃないか」
「こっちもレナードがいるから問題はないわ」
私は心配するレックスの言葉にあっさりと反論した。
「姫様、私は一人ですぞ」
レナードは文句を言うが、レナードは世界最強魔術師だ。おそらく……
「一人でシュタインの全魔術師にも勝てるでしょ」
「ほんに、人使いの荒い姫様じゃ」
私の言葉をレナードは否定しなかった。
「私も一緒に突入するんだから良いじゃない。それよりも我が方の魔術部隊の育成はどうなの?」
今は主に索敵任務に任じてくれているけれど、レナードの下には十数人いるはずだ。彼らが成長すればこちらの戦力になる。
「そんなに一朝一夕には出来はしません。まあ、徐々にですな」
「じゃあ、出来るまで頑張ってもらわないと」
私はレナードに笑って言った。
「姫様。敵先鋒に動きあります。前進するみたいです」
伝令を聞いたハワードが教えてくれた。
「本隊は後十キロの所まできた模様ですぞ」
魔導師からの報告でレナードが報告してきた。
「どうします。姫様、仕掛けますか?」
レナードが聞いてきた。
「うーん、もう少し近づけた方が良いんじゃないの?」
「しかし、姫様が我慢できますかな?」
レナードはいたいところをついてきた。私はすぐにでも飛び出したい方だ。待つのは苦手だった。
「まあ、なんとか我慢するわよ」
私が我慢さえすれば良いのだ。
しかし、敵は我慢させてくれなかった。
「右翼、辺境伯の所に敵右翼が接近しつつあります。その数5万」
「敵は右翼を攻撃するつもりなの? 我が軍の最強の辺境伯の所に?」
私は何か信じられなかった。右翼にはノール辺境伯軍を中心に一万の軍を展開していた。辺境伯の軍はいつも魔物討伐しているのでシュタイン王国最強を任じていたし、事実そうだった。
「辺境伯から、攻撃の許可を取ってきましたが、どうしますか?」
「もう少し待ってもらって」
私は伝令に伝えた。でも、時間の問題だろう。まあ、辺境伯がそう簡単に負けるとは思えないが、戦闘が始まれば左翼の二万にも攻撃があるだろう。私は左翼の二万の方が心配だった。
「姫様、どうやら限界ではありませんか?」
「そうね」
レナードの言葉に私は考えた。
「ハワード」
ハワードを見ると頷いてくれた。
「エイブ」
「こちらはいつでも大丈夫です。むしろ抑えるのが大変です」
エイブが堪えてくれた。
まあ、飛竜騎士団は基本は私と同じだ。
「レックス」
「もう少し待った方が良いとは思うけれど、リディに任す」
レックスの言葉を聞いて私は頷いた。
「判ったわ。全軍攻撃準備」
私の声とともに全員動き出した。
「全飛竜隊騎乗」
「全飛竜隊騎乗」
私の声に師団長が復唱してくれた。
飛竜騎士団が全員騎乗する。
「ハワード、突撃部隊騎乗」
「お任せ下さい。全員騎乗!」
今回特別に編成した騎士だけの主力だ。この2週間徹底的に鍛え上げたのだ。
まあ、10キロの道くらいなら、すぐに来てくれるだろう。
ハワードら騎士部隊が騎乗した。
飛竜百騎、騎士1000、これが主力の攻撃部隊だ。
私達が攻撃に転じようとした時だ。
その時を待っていたように敵に動きがあった。
「姫様、遠距離攻撃です」
「えっ」
私がレナードの言葉に驚いて空を見ると、こちらに向けてたくさんの飛来物が確認できた。
「火炎魔術と魔道具の塊ですな。魔道具は魔導爆弾ですな」
平然とレナードが言ってくれたんだけど……
ええええ!
どうすれば良いのよ?
私は一瞬、突撃するのか、遠距離攻撃を防いだら良いのか判らなくなっていた。
ここまで読んでいただいてありがとうございます。
判断を迫られるリディ。
決戦の行方は……
続きは今夜です。
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