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誤解は解きません。悪女で結構です。  作者: 砂礫レキ@死に戻り皇帝(旧白豚皇帝)発売中
第一部

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64/118

64.

 使用人用救護室に大急ぎで駆けつける。

 扉を開けるとベッドに横たわっているカーヴェルが見えた。


 その傍らにはレオと何故かマレーナも居た。

 レオの両肩に手を添えて立っていたマレーナは私に視線を移す。


「貴方たち以外はいないの?」

「ええ、騒がしいとカーヴェル様が起きてしまいますから」

「……カーヴェルは玄関ホールから自力でここまで来たの?」

「いいえ、聡明なレオ坊ちゃまが使用人を使ってカーヴェル様をここに運ばせたのですわ」

「貴方を呼んだのもレオ君?」

「ええ、レオ坊ちゃまは何か困りごとがあれば真っ先に私を呼びますので」


 そう告げるマレーナはうっすらと微笑んでいるように見えた。

 彼女の白い手に肩を掴まれたレオは何も言わない。


 不安げに視線をさまよわせる彼の心を落ち着かせなければいけない。

 その場にいた彼にカーヴェルが頭を打っていないかだけでも教えて貰いたい。

 私はレオに視線を合わせ口を開いた。


「レオ君」

「お、俺は、悪くないっ!」


 彼の名を呼んだ瞬間そう叫ばれる。

 全く想像してなかった台詞に思考が停止する。その隙を突くようにレオは部屋から駆け出して行った。


「あらあら……」


 マレーナが暢気に呟く。私はつい苛立った声を上げた。


「追いなさいよ、又この前のようになってもいいの?!」

「それが奥様の御命令なら」

「命令よ、今すぐレオ君を捜してここに連れ戻しなさい」


 私が扉を指差して告げると、マレーナは優雅に一礼して出て行った。駆け足で行けと叫びたくなる。

 マレーナが居なくなると救護室が途端沈黙に包まれる。


 私と気を失っているカーヴェルしかいないのだから当たり前だ。

 ただ眠っているだけなら良いが、もし頭を打っていたらどうしよう。不安に膝から崩れ落ちそうになった。


 私にカーヴェルが倒れたと報告に来たブライアンにレインを至急呼ぶように命じてある。

 医師である彼女が一刻も早く来てくれるのを心から望んだ。

 ブライアンはレインを呼ぶことに否定的な態度だった。


「使用人の一人でしかないのですよ!」


 そう語気強く言われた途端、怒りを通り越して体が冷え切ったのを覚えている。

 ブライアンはもう不要だ。彼は明らかに増長している。

 人手不足を逆手に取り、決して自分が解雇されないと思っているのだろう。


「もう良いわ」


 私はそう言い捨てた後にアイリを連れてホルガーの部屋を訪れた。

 そしてホルガーにカーヴェルが倒れたことを伝えレインの診療を手配するよう依頼した。

 ホルガーの足代わりになるようにとアイリに頼んで。


(あそこまで嫉妬を拗らせているのなら、ブライアンは解雇するしかない) 


 確かに人手不足だが、補充するのは家令補佐で無くて良い。

 寧ろ家令のカーヴェルに家令以外の仕事をさせてしまったのが今回の原因だ。


 家庭教師はまだ見つかっていない。

 原作でマーベラ夫人の後に雇われる家庭教師は、今は別の貴族令息を担当しているという話だった。

 マーベラ夫人の解雇が早まった結果時期が合わなくなったのだ。


 他の家庭教師を捜させているがまだ適任が居ない。

 けれどそんなことを言っていられない。手段を選ばず見つける。

 

 同時にレオの遊び相手になる存在も必要だ。これには心当たりがない。

 本や玩具、屈強な男性使用人を宛てがうことを考えているがレオがそれで納得する気がしないのだ。


 今回カーヴェルが倒れたのを目の当たりにして、彼はどんな気持ちなのだろう。

 私は正直、レオの口から真っ先に出た言葉が自分は悪くないと言う内容だったことに失望している。

 

 でもどこか怯えた表情をしていた。

 きっとレオは怒られ責められることに恐怖を感じているのだろう。ケビンに圧をかけられていた時の表情を思い出す。

 そして逆にあんな自己保身の台詞が出たということはレオはカーヴェルが倒れたことに恐らく罪悪感を抱いているのだ。 

 

 じゃなければ私が名前を呼んだだけで、自分は悪くないなどと叫んで逃げたりしないだろう。

 だからこそ前回の様になる前に連れ戻す必要があった。

 

「……私が行った方が良かったかしら」


 マレーナはレオの態度に対し良く言えば冷静、悪く言えば無関心だった。

 今頃彼女はろくに捜しもせず散歩でもしているかもしれない。


 マレーナに対し偏見が過ぎると己を戒めても、疑いは晴れなかった。

 けれど私やレオが居なくなったこの救護室で眠るカーヴェルとマレーナを二人きりにするのは躊躇われた。


 それにレオは私が捜しに行ったら益々逃げるかもしれない。


(こんな時に、カーヴェルがいてくれたら……)


 無意識に浮かんだ考えに青褪める。こうやって頼ってしまうから駄目なのだ。

 私は目を閉じているカーヴェルの額に触れる。平熱だ。

 苦しそうな様子も無い。それだけが現状唯一の救いだった。


 でも再び目を開いてくれるかわからない。もし頭を打っていたとしたら。

 私は医師の到着を焦がれる思いで待った。


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― 新着の感想 ―
異性と二人きりになってはいけない ここの貴族は疑われない行為?
だいぶ前から主人公も「そんなとこまでケチつける…!?」みたいなところが散見されてたのでここにきてその問題が噴出してきた感じですね 果たしてこの後どうなるか…
結局のところ、主人公も周囲の人間たちと同類の可能性。
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