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59. エンドロールのその後に……なべて世は事もなし、されど闘いは続くのだ


『カレリンとラファリィの激闘からもう1ヶ月以上経ちましたか……カレリンは元気にしているでしょうか?』

 お陰様でね。



『おや?あれだけ手傷を負っていたのにもう完治したのですか。相変わらず常識外れですね』

 久しぶりに顔を出して言う事はそれ?

 ラファリィとの戦いで吹っ飛ばされた時にはあんなに涙を流して心配してくれたくせに。



『そのような記憶はございません』

 あんなにハラハラと泣いてたじゃん!


『記憶にございません』

 なによその日本の政治家みたいな答えは!

 すっごい可愛い顔してたのに!

 さてはあんたツンデレ?


『そのような事実はございません』

 顔を真っ赤にして澄ましても説得力ないわよ。


『ちッ!』

 なによその舌打ちは!

 いいじゃん可愛かったんだから。


『貴女それよりそれ(・・)は宜しいので?』

 ん?



「カレリ〜〜〜ン!私を見捨てないでくれぇぇぇえ!!」

「ガルム様!」


 なに人聞きの悪い事を言っちゃってるんですかこの旦那様は!

『おやもう離婚ですか?』


 しないわよッ!

『ですが泣きながら貴女の足に縋りついて懇願していますよ』



「お願いだから行かないでくれェェェえ!!!」

「学園へ行くだけです。ちゃんと夕方には帰りますから」



『何で登校するだけで修羅場みたいになっているんです?』

 あれからガルム様は退学して私のところに転がり込んできたのよ。


『あら!それでは名実ともに夫婦になったのですね』

 まあ、ね……ガルム様は今じゃ完全な専業主夫よ。


『それはそれは……おめでとうございます?』

 なんで疑問系!?


『いや、この状況を見るに祝ってよいものか判断に迷いまして』

 素直に祝いなさいよ。これでも幸せにやってるんだから。




『それで、2人は結婚したのにどうして貴女はまだ学園へ通っているのですか?』

 今回の騒動の全ての責任をガルム様が負って退学したのよ。私まで学園からいなくなってガルム様と新婚生活を謳歌したら周囲に示しがつかないでしょ――まっ、形の上だけど。


『つまり、形式上ガルムは社会的に抹殺されているわけですか』

 そう言うことよ。だから私とガルム様は籍は入れているけど、対外的には結婚はしてないと周知されているから、私はまだアレクサンドール侯爵令嬢として学園に通う必要があるのよ。


『なるほど理解できました。ほとぼりが冷めるまでガルムはお預けを食らったわけですね』

 私が学園を卒業したら正式にガルム様とは名実ともに夫婦になるわ。


『ふふふ……だからガルムは貴女が少しでも離れるのが心配なのですね。いつ捨てられるか不安で堪らないと……』

 まあ、それでもガルム様は私と一緒にいられて嬉しいみたいだけど。


『はいはいご馳走様です』

 その言い方ムカつくわね。


『それで、このままエントランスホールで愛憎劇を繰り広げていていいのですか?』

 はッ!みんな集まってる!?


『侍女やメイド達が微笑ましいものを見る表情しながら口元はニタニタ、ニヤニヤしてますよ。この様子だと、この光景はいつもの一幕って感じですね』



「カレリンに見捨てられたら私はもう生きていけない!」

「ただ学園に行くだけで毎朝毎朝騒がないでください!」

『ガルムも貴女に捨てられまいと必死なのですね』


「後生だから私を置いて1人にしないでくれ〜」

「泣きながら腰に抱き付かないでください!!」

「一時でもカレリンの傍から離れたくない!!」

「仕方ないでしょ私には学園があるんですから」

「それならせめて行ってきますのキスをして!」


『朝っぱらから熱々ですねぇ』

 もう!毎朝毎朝せがんできてぇ!!

『毎朝ですか!?それは煮えたぎってますねぇ』



「昨晩もあんなに激しかったじゃないですか!」

『カレリン!人前ではしたない!』


 どうせ貴族は最初に見届け人がいるんだから今さらよ。

『そう言う問題ではありません!』


 どうせあんたも覗いてたんでしょ。出歯神(でばがみ)のくせにうるさいわよ。

『誰がデバガメです!だいたい何が悲しくて貴女とガルムの絡みなんて覗かないといけないんですか!』


 あらあら、なぁに?

 ヤキモチですかぁ?

『ふんっ!』


 にっひっひっひっ女神様がガルム様に嫉妬ぉ?

『……それよりガルム(そいつ)はいいんですか』



「昨晩は昨晩!いつでもどこでもカレリンの愛が欲しい!」

「なに言ってんですかぁ!?」


 まだ駄々捏ねてた!?

『ほら、皆さんお待ちかねですよ』



「「「『キース!キース!キース!』」」」


 キスコール!?

 侍女やメイドどころか家令の爺さんまで――ッて、あんたも何しれっと混じってんの!

 くッ!意趣返しのつもり?

『ほらほらガルムも期待の熱い眼差しを送ってますよ』



 えぇーいッ!

『おお!ガルムの腰を支えながら後方へ倒して覆い被さるなんてッ!』


 ブチュッとな!

「「「キャーーーーッ!!!」」」


「今日もカレリン様が格好いいわ!」

「唇を奪われて乙女な表情のガルム様が尊い……」

「やっぱりガルム様が右側よねッ!」

「でもでも夜はガルム様の方が主導なのよね」

「意外とカレリン様は打たれ弱いとか?」

「それじゃカレ×ガルじゃなくてガル×カレ?」

「待って待ってカレリン様は女よ!前提がおかしいわ!!」

「「「いいのよ!カレリン様は男よりカッコいいんだから!」」」


 こいつらぁぁぁあ!

『これを毎朝ですか……マグマよりも沸き立っていますね』


 とにかくガルム様が乙女の花畑から(しょうきに)戻る前に出立よ!


「じゃあ行ってくるわ!みんなガルム様をよろしくねッ!」

「「「はーーーーい」」」



『ここの使用人達は随分とユル軽いのですね』

 我が家の家風よ。


『このゆるゆる環境でゲームのカレリンがどうして悪役令嬢に堕ちたのか分かりません』

 永遠の謎よね。



『なんてだべっている間にもう学園ですか……相変わらず人外の速度』

 まだ生徒達もまばらね。


『何でこんな早朝に登校を?』

 3バカとラファリィの様子を見ようと思って。


『あの者達がこんな早朝の学園に来ているのですか?』

 清掃隊員に放り込んだの。

 ガルム様がバチ被ったと言っても全くのお咎め無しってわけにもいかなかったから。ラファリィなんて講堂を全壊させちゃったし。


『改めて聞くと、よくその程度の罰で済みましたね』

 邪神のおかげよ。


『邪神の?』

 アイツが姿を見せて裏で操っているのを暴露したでしょ。それがあって多少の温情をもらったのよ。


『なるほど、奴なりにフォローはしていたんですか』

 もっともアイツが何もしなければよかった話だから完全ギルティだけどね。



「お嬢様!」

「メイヤー先生!」


『朝っぱらから感涙して抱き合わないでください』

 敬愛するメイヤー先生との美しき師弟愛の確認をと思って。


「お嬢様の考案した清掃隊員の活躍で大変に助かっております」

「先生のお役にたったのなら私も嬉しいです」


『清掃隊員がメイヤーの助けに?』

 今年の1年生のヤンチャどもを加入したらしいわ。


『そう言えばメイヤーは生活指導も担当していましたね』

 さて、清掃隊員やラファリィ達は真面目に訓練してるかしら?

 ついでに新入生にも挨拶しておきましょうかね。




 俺たち無敵の清掃隊♪

  (俺たち無敵の清掃隊)

 筋肉溢れるナイスガイッ♩

  (筋肉溢れるナイスガイッ)

 磨け!筋肉!(磨け!筋肉!)

 輝け!筋肉!(輝け!筋肉!)



『これも懐かしいですね』

 内容は調子に乗ってるけど。


男おんな(ブリヂット)!楽しい楽しい筋トレの時間だ!」

「逃げちゃダメだ!逃げちゃダメだ!」


「コラァ微笑みマッチョ!貴様のモヒカンは飾りかッ!切り落とすぞ!」

「俺とモヒカンの絆は誰にも引き裂けない!」



『アイツらは相変わらずですね』

 大抵の奴は矯正できるのに……おかしいなぁ。



「うおぅい!?ジョークのヤツがまた変なことを口走り始めたぞッ!」

「お前たち!おれは天才か?

 そう……おれはこの世で誰よりも賢く……そして天才だ!!」


『……寧ろ悪化してますね』

 なんか変なのに取り憑かれたかしら?


「いい加減にしやがれイカれポンチ!」

(ポカッ!)

「お…おれの頭にコブがぁ〜〜〜!

 こっ…この賢い頭にコブがぁ〜〜〜!」


『どうやら世紀末一のナルシスト自称裏切りストが乗り移ったようです』

 ああ、あのUDマークの宇田くんね。

『本当のスペルはJudahですから……』

 それは言っちゃいけない約束よ。



「こ、これは軍曹!大変お見苦しいところをお見せして申し訳ありません」

「マリク一等兵!全く進展がないようね」


『あら?マリクは卒業したはずでは?』

 留年したの。2年間も不良やってたから……ホントなら退学だけど清掃隊員で拾っちゃったし。


「あの3バカはもうどうにも矯正不能で……」

「あの3バカは……諦めましょう。それでラファリィは……」

『あっ!こちらに来ましたよ』


「どうして私がこんな訓練しなきゃいけないんですか!」

「どうしてって……あなたの膨大な魔力をまた暴走させないためよ」

「魔力制御に筋トレって意味あるんですか!?」

「…………さあ?」


 魔力のコントロールに筋トレって効果あるかしら?

『……全く無いと思いますよ』

「ほら!女神様も仰っているじゃないですか!」

「つべこべ言うな!あんたは講堂を破壊した咎を私が引き受ける事でチャラにしたのよ。あんたのお父様のマット男爵から高額の修繕費の代わりにあんたを好きにしていいと言質も取っているわ!」

「私を身売りしたの!?あぁンのオヤジぃぃぃい!!!」

『完全に見捨てられましたね』


「あんたは諦めて私の下で《令嬢流》を極めて一緒に霊長類最強を目指すのよッ!」

「私はただ平凡な幸せを目指していたのにぃ!霊長類最強なんて知らないわよぉ!」

「しょうがないでしょ。あんたがバカみたいに魔力上げたせいで今や世界一の危険人物なんだから」

『まあ、貴女を止められるのはカレリンだけですから』


「だからって筋トレはないわッ!私はねものすごく運痴なのよ舐めないでよね」

「大丈夫!私が自らバッチリ鍛えてあげる……死ぬかもしれんけど」

「イィヤァアアーーッ!!いやぁあああ助けてェーーッ!!」



 なによ!まるで人攫いに出会ったみたく叫んで!!

『いえ、ある意味それよりもタチが悪いですよね』


「なんだなんだ?」

「ラファリィちゃんがいじめられてる?」

「俺たちのアイドルラファリィちゃんを泣かせたのはお前かッ!」


 ドヤドヤと現れたのは見たことのない顔ね。

 新顔かしら?

『見事に全員モヒカン肩パッドですか』


 それにしてもラファリィは人気者なのね。

『まあ乙女ゲームのヒロインですから』



「おお!こいつはスゲェ美人じゃねえか!」

「ゾクゾクするぜぇ〜〜〜!」

「ヒャッホ〜〜〜!」

「女だ〜〜!」

「きれいなお姉さんは好きです遊んでください」


 なんか懐かしいやり取りね。

『若干1名変なのがいますが』


「なぁに?あんた達この私に遊んで欲しいの?」

「ヒャハーッ!だぜ」

「くッくッくッいい事しようぜぇ」

「へっへっへっ見ろよあのデカい乳」

「くゥう〜たまんねぇ〜」

「きれいなお姉さんは大好きです遊んでください」


 そーか、そーか、そんなに私に可愛がって欲しいのか♪

『ぎ、犠牲者がこんなに……』


「ふふふ……マリク一等兵!貴様の教育もなかなかのようだ。今年の新兵(ニュービー)は頼もしいじゃないか」

「サーノーサーッ!」


 なぁに?褒めてあげているのに

『虐めの間違いでしょう。マリクの顔が真っ青ですよ』


「そうかそうか、貴様もそう思うか」

「サーノーサーッ!」


『千切れるんじゃないかと思うくらい泣きながら首を横に振っていますよ』

 感涙するほど嬉しいのね!


「それでは私自ら新兵どもを鍛えてやろうマリク一等兵……貴様らも一緒になッ!!」

「――――ッ!!!」


『声にならない悲鳴を上げて気絶しちゃいましたか』

 さぁて、楽しい楽しいキャンプの時間よ。


「喜べ新兵(ニュービー)ども!これから私が貴様らの教官となる!」


 見渡せば太々しい顔の新兵と真っ青になった古参ども……どっちもキャンプが必要なようね♪


「最初は地獄だが安心しろ……なぁに私が貴様らをす〜ぐ天国へ連れていってやるぞッ!」


 新兵どもは天国というワードにのみ反応したわね。どんな天国を想像したのかしら?

『貴女が思い描いている天国(それ)とは180度違うのは保証しますよ』



私の特訓カレリンズブートキャンプは厳しい!その過程には激しい痛みと地獄の苦しみと絶望の悲しみが待っている」



 おぅおぅ!期待に満ちた目をした新兵(ニュービー)どもが!この私が自ら貴様らに本物の地獄へ叩き落し、その目を一片の希望も見ることの叶わぬ死んだ魚の目に変えてやるッ!

『あなたは真正の(サド)ですか!?』



「だが安心しろ!希望を棄てて私に従えば、全ての痛みが気持ち良く、苦しみが嘘のように楽しく、そしてサイコーにハッピーになれるぞ!」

『とんでもないマゾ集団ができそうです』



 くくくッ!楽しみね!!

 新兵も清掃隊員も3バカも全員まとめて私が鍛え直して、ラファリィには特別メニューで《令嬢流》を習得させて……

『この連中が憐れになってきました』


 勇者や魔王なんて存在もいるみたいだし、まだまだ楽しい事がいっぱいありそうよねッ!

『お願いだから程々にしてください!』




 さあ、悪役令嬢(わたし)より強いやつに会いに行くわよ!

 私の闘いはこれからよ!!!


『カレリンの強敵(とも)との闘いまだまだ続く!

 令嬢類最強ロードの果てにたどり着くまで!!』



 ご愛読ありがとうございました。

 古芭白先生の次回作にご期待下さい!


最後までお読みいただきありがとございました(∩´∀`)∩


感想、レビュー、誤字報告など様々な形で本作を支えてくださった読者様方には感謝の念に堪えません(●´ω`●)


今年もよろしくお願いいたします<m(_ _)m>

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― 新着の感想 ―
[良い点] 勢いとネタ満載の物語。 完結お疲れさまでした。 カレリンサオリの脳筋ぶりが 最高でした。
2023/05/05 19:48 退会済み
管理
[良い点] 猫らてみるく様の割烹より参りました。 もう散りばめられたネタに笑いっぱなしでした(。・艸・) (。-艸-)) (( 。>艸<)-3鬼滅のセリフとモヒカンは混ぜるな危険ですね!あ~、お腹痛い…
[良い点] 完結おめでとうございます!! あかん、ラファリィまでモヒカンひゃっはーになってしまう!思うたら、染まってるわけではなくてよかったよかったでした。 さすがのヒロイン力… ガルムは…そうか…
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