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55. 最終死合!悪役令嬢vs集結ガルム連合!!!【不戦勝】

いつも誤字報告ありがとうございます(∩´∀`)∩

とっても助かっております(*´ω`*)

 

 私の挑発にガルム様とマーリスが前衛、セルゲイが中衛、ヴォルフとラファリィが後衛の2-1ー2の戦闘陣形(フォーメーション)を咄嗟に組むあたり、少しは練習してきたのね。

『殺しちゃダメですよ?』


 殺さないわよッ!

『まあ、5対1でも戦力差は圧倒的ですからね』


 ラファリィは私よりも魔力が高いって言ってなかった?

『彼女は回復と補助しかできませんから』


 ラファリィが魔力を攻撃に使えない以上は勝負にもならないか。

『変なフラグを立てないでください!』


「……扶助の風よ()く走れ《加護の追い風》!……築けよ不落の天塁(てんるい)《女神の守護》!……愛もて授けよ生命(いのち)の糧《慈愛の恵》!」

「……害意を(くだ)け《剛力幇助》」


『ラファリィが使用したのは敏捷性上昇、防御力上昇、経時回復力上昇ですね。ヴォルフは攻撃力上昇です』

 ラファリィとヴォルフが補助魔法(バフ)でガルム様とマーリスの能力(ちから)を底上げしてきたか。


「行くぞカレリン!」

「たりゃぁぁぁあ!」


 ガルム様が正面から上段斬りで、マーリスは横から刺突……まあまあかな?

『セルゲイは能力低下(デバフ)を試みているようですが……』


「……かの者に戒めの鎖を《堅牢なる枷鎖(かさ)》!」


 敏捷低下?とっくに《令嬢流魔闘衣術・ドレス》を使用しているからセルゲイのデバフは無効ね。

『貴女のそれは本当に反則ですね』


 ラファリィは能力上昇(バフ)の重ね掛けを試みているのかな?

『ヴォルフは攻撃魔法の詠唱に入っていますね』


「せいッ!!」

「突きぃぃぃい!」


 う〜ん瞬殺してもいいんだけど……

『戦闘中にさすがの余裕ですね……右足を引いて左半身でガルムの上段斬りを躱し、その剣の腹を叩いて右からのマーリスの刺突にぶつけましたか。貴女のスピードならどちらも余裕で躱せたでしょうに……花を持たせているのですね』


 少しは生徒達にガルム様のカッコいいところを見せてあげないとね。

『貴女なりにガルムを気づかっていたのですか――方向はおかしいですが……ヴォルフの攻撃魔法がきますよ』


「……《氷刃連撃》!」


 ヴォルフの魔法はドレスで耐魔(レジスト)可能よ……私ってそんなに変だった?

『氷が触れる前に霧散しましたか……はっきり言って頭おかしいまであります』


 ヒドいッ!

『ガルムは未だに未練たらたらですよ……剣撃がまた来ますよ』


「はあっ!」

「払いぃぃぃい!」


 今度は挟み撃ちね。ガルム様は袈裟斬りで、マーリスは左からの薙ぎ払いね……ガルム様が私に未練?まさか……

『身を沈めてマーリスの剣を下から手背で打ち上げ、ガルムの剣にぶつけて弾きましたか……ガルムは貴女に惚れています。自分でも言っていたではないですか』


 それは……そうだけど……でも、最近はあんまり関わってこなかったし……マーリスは図体(ガタイ)の大きさを利用して体当たりしてきたか――いい判断ね。

『通常なら申し分ないのでしょうが、貴女相手では……インパクトの瞬間に右足を引きながらマーリスの腕をとって左足を引っ掛けて引き倒しましたか――本当に踊りを舞っているようです。綺麗です……見なさいガルムを』


 ガルム様……

『貴女なら分かるでしょう。攻撃しながらも貴女を見る目に殺気はありません……後は貴女の気持ち次第だと思いますよ』


 私は……



「そこまでだ!」



 剣を振り下ろそうとしたガルム様の動きを止めた……この声って!?


 私達全員が講堂の出入り口へ視線を向ければ、そこにいたのは護衛の騎士に守られてた……

『国王と王妃ですね』


「「「国王陛下!!!」」」


 何でここに!?

『さあ?』



「父上!何故この場に……」

「何故?それは私の台詞だ」

「ガルムちゃん……どうしてこのような真似を?」


『どうやらガルムの婚約破棄を聞きつけて、取る物も取り敢えずすっ飛んで来たようですね』

 どうして?


『貴女の価値を考えれば当然でしょう』

 私の価値?


『自覚がないのですね。貴女は1人でハーンメリ賢帝国を黙らせる武力を持っているのですから、国王としては手放せないでしょう』



「どうしてですって?」


 あ、ガルム様がワナワナと震えているわ。

 さすがに国王夫妻の前では緊張しちゃってるのかしら?

『いや、あれは怒りで震えているんだと思いますよ?』



「ならば教えて差し上げましょう。カレリンは妃教育を放棄し、必要な教養を学ばず、貴族としての良識に欠け……」

『反論できません』

 そんなはずないわ!

 私はちゃんとできてる……わよね?


「何かあればすぐ暴力に訴え、傍若無人で、身勝手で、我が儘で……」

『思い当たる事しかありません』

 私そんなにヒドい!?


「そして……いつも勝手し放題で私を振り回す!」

『憐れです……心が痛みます』

 私が悪いの!?


「カレリンは我が妻として……王子妃として相応しくありません……だから私はカレリンとの婚約を破棄します!」

『一部の隙もない至極真っ当な意見です』

 あんたどっちの味方なの!


『ガルムが完璧な理論武装をしてきました!て、手強い……論破できません!』

 そんなはずないわ!

 国王様は何で黙って聞いているの?

 少しはガルム様を諌めて!



「ガルム……お前の考えはよく分かった……」



 おお!黙って聞いていた国王様が厳しい顔になったわ。

 これはガルム様の誤った考えを正してくださるに違いないわ!



「お前の意見は尤も至極!」

「そうねぇ……私も正論すぎて何も言えませんわ」


『うんうん、国王も王妃も納得の理由ですものね』

 何でよ!



「では私とカレリンの婚約は……」

「だがこの婚約破棄は無効だ……」


 ほらほらぁ!

 国王様も今回の件はガルム様の暴挙だって思ってんのよ。

『貴女はガルムと婚約破棄してもよかったのではなかったのですか?』


 うっ……それはそれよ!

 こんな不名誉な言いがかりは断固抗議よ!



「何故ですか!?」

「それは王妃(マリア)がな……」


 国王様がチラッと王妃様を見たけど……ん?

『王妃が顔を赤らめてますが……』


「は、母上?」

「ガルムちゃん……ごめんなさい。私はカレリンちゃんのファンなの!」


 なんですとッ!?

『貴女のファンクラブは学園の外にもあったのですね』


「ファン?」

「そうなの!私は冒険者ギルド公認のカレリンちゃんファンクラブの会員なのよ!」


『冒険者ギルドが黒幕でしたか』

 そんなの聞いてないわよ!


『本人が知らないところで暗躍していたんですか』

 きっと受付のセレーナさんね!


「可愛く、凛々しく、格好良く、強くて美しい最強の美少女冒険者として国中で大人気なの。あ、これカレリンちゃんの肖像画(ブロマイド)よ」

「こ、こんな理由で……」


 プロマイド販売までやってんの!?

『ギルドの収入源になっているのでしょうね……ガルムがワナワナ震えていますよ』


「怒らないで……この秘蔵のプロマイドあげるから」

「これは!?」


 なにあれー!?

『綺麗な上段回し蹴りですね……とても凛々しいのにドレス姿だから凄く煽情的です』


「この躍動感溢れる蹴り姿のパワフルさとスカートの裾から覗く白い足のエロスの融合!大人気の1枚よ。私がファンクラブ名誉会長だから手に入れられたんだから」


『ファンクラブは王妃公認になっているのですね』

 うそぉぉぉお!


「な、なんて破廉恥な……こんな絵……こんな絵……」


『あ、ガルムが貴女のプロマイド握りしめて震えていますよ』

 そりゃあ却下の理由がこれじゃあね……


「こんな絵!……は一応頂いておきましょう」

「ガルムちゃんも好きねぇ」


『あ、懐にしまった』

 何やってんですか!?


「ですがッ!これと婚約破棄は別問題です!!」

「えぇ〜じゃあプロマイドを返して」

「こ、これは私が没収します!」

「やっぱりガルムちゃんはカレリンちゃんが好きなのねぇ」

「なッ!ち、違います!」

『大事に肖像画(ワイロ)をしまっていては説得力に欠けますね』


 まあ、でもガルム様の言い分も尤もよね?

『この衆目で宣言した婚約破棄を撤回はできませんからねぇ』


「だがなぁガルムよ。そもそもの話し、お前とカレリン嬢の婚約破棄はできんのだ」

「馬鹿な!これだけ大勢の前で宣言したのですよ。こんな下らない理由で宣言を撤回などできようはずが……」

「いや、撤回ではなくてな、現在お前とカレリン嬢は婚約状態にないのだ」

「は?」

 は?

『は?』


「「「はあぁぁぁあ!?」」」

 え?私とガルム様は婚約したはずよね?

『私も知りませんよ』


「私とカレリンは確かに婚約を結んだはずです。仰っている意味が分からないのですが……」

「お前の言う通り婚約は成立していたのだが……」


『あ、また王妃をチラッと見ましたね』

 なんだか嫌な予感が……


「は、母上……いったい何をされたのです!?」

「あのね…あのね……」


 王妃様が頬を染めてモジモジしてらっしゃるんですけど!

『歳の割に随分と可愛らしい王妃ですね』


王家(うち)は男所帯だから私どうしても娘が欲しくって……どうせガルムちゃんはカレリンちゃん大好きでしょ?」

「カレリン嬢も満更でもないとアレクサンドール夫人も言っておったのでな……」


 ま、まさか……

『これは……』


「学園入学時に2人の籍を入れちゃったの……テヘ♡」

「「あんたら無断で何してくれてんですか!!!」」


 テヘペロじゃないでしょ王妃様ぁぁぁ!!!

『さすがの私もびっくりです』


「もう婚約者じゃなくて既婚者だから婚約破棄はできんのよ」

「そ、そんな……それでは私がやってきた事は……」


『完全な道化ですね。草が生えます』

 あんた言い方ってものがあるでしょ!


「ガルムちゃん……貴方あんなにカレリンちゃん好きだったのに、どうしてこんな真似をしたの?」

「そ、それは……」


 ガルム様……あんなに口唇(くちびる)を噛み締めて……

『手を強く握り過ぎて血が滲んでます。よっぽど口惜しいのですね(笑)』


 あんたねッ!あれは思い詰めている顔でしょ!

『何です?元は貴女が原因でしょうに』


 ――ッそれは!

 それは……そうだけど……あんた私を焚きつけたいの?

『さあ?私はただ貴女が幸せになってくれるのでしたら何でもいいのです』


 うぅぅぅ〜……

『犬みたいに唸ってないで……下手な考え休むに似たりですよ』

 分かったわよッ!



「ガルム様……」

「カレリン?」


 強く握られたガルム様の拳に私がそっと手を重ねると、ガルム様は泣きそうな顔を私に向けてきた。


「ガルム様が私との結婚をどうしても(いと)うのであれば離縁されてもよろしいのですよ」

「離縁!?それではカレリンが……」


 そんなこの世の終わりみたいな顔しなくても。

『王家からの離縁では貴族としての再起は困難になりますからね……普通なら』

 悪かったわね普通じゃなくて!

『ほらほら続き続き……ガルムが不審がっていますよ』

 くッ!覚えてなさいよ。


「私はどうとでもなります……だからガルム様が私をお嫌いでしたら……」

「違うッ!」


 ガルム様が重ねていた私の手を取ってぎゅっと握ってきた……


「違う……違うんだ……ただ……」

「ただ?」

「私はカレリンを縛りたくなかったんだ!」

「何を仰っているのです?」


 私を縛る?

『うーん……お互いの見解に齟齬がありそうです』


「私はカレリンに自分の勝手な虚像を見ていた。美しく優秀で優しい理想の令嬢だと……だけど本当の君は自由奔放で、行動力があって、逞しくて……」

「それで幻滅されたと?」


 ガルム様が首を横に振る。


「そうじゃない……私はそんな君を見て寧ろどんどん惹かれた。好きになった。でもそれは君にとっては足枷でしかないって気がついた」


『つまりガルムは貴女の為に今回の婚約破棄(ちゃばん)を敢行したのですね』

 ガルム様が……私の為に?


「こんな事になるなんて……済まない……済まない……」

「ふぅ〜なぁんだ……そんな事でうじうじ悩んでおられたのですか」


 もう……しょうがないなぁ。

『くすくす……貴女もガルムも素直じゃないですね』


「そ、そんな事って……だけど……結婚は……」


 ガルム様……まだうじうじ言って!


「ガルム様!」


 私がガルム様の顔を両手で挟んで見つめると、ガルム様は驚いた表情で目を瞬かせた。


「ガルム様は私がお嫌いで?」

「……き、嫌いじゃない」

「私との結婚はお嫌ですか?」

「……い、嫌なわけない」


 この場の皆が固唾を呑んで見守る中、私の質問とそれに対するガルム様の応答だけが講堂を支配する。

『2人だけの世界ですねぇ』

 茶化さないで!


「私と結婚しても良いのですよね?」

「あ、う、それは……その……」

「ガルム様は私を好きなのですか?」

「いや……あの……それは……」


 ああもう!はっきりしないんだから!!

『大衆の面前で……これは公開処刑ですか?』

 何言ってんよ!そんな事しないわよ!!

『でも貧弱な肉体に興味はないのでしょう?』

 あんたはそこで黙って見てなさい!!



「ガルム様!」

「は、はい!!」

「はっきりしてください!」

「そ、それは……だから……」

「私を好きなんですか嫌いなんですか?2択で答えろッ!!!」


 盛大に泳いでいたガルム様の目がやっと私の目を見た。私はその黄金の瞳を覗き込む。相変わらず綺麗な目……


 だけど、その目には緊張、怯え、不安……そんな負の感情ばかりが内在していたけれど、私と視線を合わせていたガルム様は何かに耐えるようにぐっと下唇を噛むと、その目に少しだけ意地の炎が灯ったように見えた。



「私は君との婚約前に隠れて君を視察したことがある」

「うん……」

「その時に見た君はとても美しく、優しく、気高く……理想の令嬢だった」

「うん……」

「私はそんな君に一目惚れした」

「うん……」

「だけど婚約した後に知った君は理想の令嬢なんかじゃなかった」

「うん……」

「自由奔放で、はちゃめちゃで、傍若無人で……」

「うん……」

「だけど明るくて、楽しそうで、私にはとても眩しかった……」

「うん……」

「私はそんな君にどんどん魅かれてしまった」

「うん……」



「カレリン……ずっと好きでした!」

「ならばよし!」



 私は両手で挟んだガルム様の顔に自分の顔を近づけた。



「え!?――――んッ!!!」


 そのままブチュッと!

『カレリ―――ン!!!』


「ん――――ッ!」

「「「おおぉぉぉお!!!」」」


 私とガルム様の熱烈ベーゼに固唾を呑んで見守っていた国王以下周囲の観衆(オーディエンス)がどよめいてるわ。

『当たり前です!人前で何してくれてんですかッ!』


 こういうのは勢いよ!

『貴女は野獣ですか!』


 美男と野獣?

『立場が逆でしょ!こういうのは王子様から…こう、ロマンチックにですねぇ』


 あんたって見た目に反して乙女チックなのね。

 今はジェンダーレスの時代よ!

『ここは乙女ゲームの世界です!』




「ぷはぁぁ~」

『貴女もうちょっと女の子らしくできないんですか!』


 解放してあげたらガルム様顔真っ赤(笑)


「な、な、な……キ、キャリェリュン!?」

 キャリェリュン?誰?もう浮気?

『もう虐めるのは止めてあげてください』



 パチパチ……


 あれ?

『王妃が涙を流して拍手してますね……』



 パチパチパチ……

  パチパチパチ……

   パチパチパチ……



 なんか知らんけど感心されて拍手が巻き起こったわ。

『なんだかなぁとは思いますが……まぁ、みなに祝福されての大団円です……かね?』




「何よそれ……」

 ん?

『はい?』



みなさん、いよいよお別れです!

ヒロインを守るガルム連合は解散!しかし!邪神への怒りに殺意の波動モードへ姿を変えたラファリィが、カレリンに襲いかかるではありませんか!

果たしてカレリンの運命やいかに!

令嬢類最強!?ー悪役令嬢(わたし)より強い奴に会いに行くー最終章『延長戦!悪役令嬢vs覚醒の転生ヒロイン』へレディ、ゴーッ!!

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