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40. 第八死合!悪役令嬢vs道化の転生ヒロイン[ROUND3]【STAGE 学園】

 

 うーん……

『どうしたのですか?』


 お弁当忘れちゃったの。

『この学園には生徒専用食堂(カフェテリア)があるではないですか』


 でも私のは特製の筋肉増強!目指せムキムキ高タンパク質弁当だから。

『……貴女はまだ筋肉を諦めていなかったのですね』


 私ってボンッキュッボンッ体型でしょ?

 やっぱりこの体って格闘向きじゃないのよ。

『その身体は天才魔法師の悪役令嬢ですからねえ』


 リーチが長いのはいいんだけど、足も長すぎて胸が大きいから重心が高すぎて……

 ちっぱいで重心が低い寸胴体型が羨ましいわ。

『貴女は今の言葉で全世界の女性を敵に回していますよ』


 でもでも!格闘戦に体型は重要なのよ!

 確かに《令嬢流魔闘衣術》があるけど、やっぱベースが低いとねぇ。

『令嬢にしては十分筋肉質だとは思いますが』


 令嬢って箸より重い物持ったことないってやつでしょ?

『まあ、この世界ならカトラリーよりでしょうか?』


 そんな貧弱と比較してもねぇ。

 今は5、60kgを持ち上げるので精一杯。

『それでも通常の貴族令嬢の2〜30倍の性能でしょうに』


 でも、慰問先の肝っ玉シスターは孤児2人をヒョイって軽々担いでたわ。

『それって、比較対象が体重80kgオーバーの女性でしょう』


 私もせめて80kgは余裕で持ち上げたいわ。

『貴女の体重は50kg未満でしょ!重量挙げ世界記録でも100kg前後なんですよ。魔闘衣術使えば余裕で4桁持ち上げるんですから、それで我慢なさい』


 まあ、《ドレス》を使えば今じゃ5桁も余裕なんだけどね。

『貴女いつの間に!また魔力が上がっているじゃないですか!?』


 筋トレと並行して魔トレもやってるから。この前6桁チャレンジも成功したし。

『6桁って!?シロナガスクジラでも持ち上げたんですか!?』


 まだまだ魔力が上がっているみたいだから、いつかは7桁にも挑戦ね。こっちの世界にも千トン岩ってあるかしら?

『魔力成長期も止まっているはずなのに!?第2次魔力成長期でもあるんですか?貴女の能力はおかしい!』


 いいじゃない減るより。

『それはそうですが……もう貴女は完全に人外ですね』


 だけど、いくら魔力が上がってもねぇ……

 やっぱり《令嬢流魔闘衣術》と言えどもベースの筋力は重要だから、筋肉増強は重要よね。

『いや、もう十分な力持っているじゃないですか』


 もうちょっと欲しいのよ。

 うーん……食堂のメニューに鶏むね肉ってあるかしら?

『貴族の食堂ですよ。肉ならローストビーフがせいぜいでは?』


 おっ!さすがオタク女神。詳しいわね。ローストビーフもまあまあの高タンパク質よね。

『誰がオタクですか!』


 他の高タンパク質食材だと大豆かしら?

 でもあれって畑のお肉って言われている割にタンパク質取れないわよねぇ。

『それは大豆食品を大量に食べる事がないからでしょう。グラムあたりのタンパク質量はお肉に劣りませんよ』


 やっぱりオタク女神じゃない。

 全知全能なんてホラ吹いてないで、これからはオタクを司りなさいよ。

『この娘は……』


 さーて、な~にか♪美味しいタンパクあっるかなぁ~♪

『あっ!(前から来るピンク頭はッ!)』


 どうかしたの?

『い、いえ…なんでも……(しまった!食堂ってカレリンとヒロインのイベントがありました)』


 今しまったって顔したわよ。

『き、気のせいですよ(確かここでヒロインがカレリンに足を掛けられて転倒するんでしたか?)』


 あんた何かやらかしたでしょう?

『べ、別にぃ〜(なんで私はカレリンを食堂に誘導してしまったのですか……世界の力が私にも影響を?小癪な!私が創造した世界の分際で!)』



「あッ!」



 私が駄女神を問い詰めようとしたら、近くで急に短い悲鳴が……だけど常在戦場の私はどんな場面でも即対応。


 転びそうになったピンク頭の令嬢をサッと掬い上げた。


 あら?この重さはちょうどいいダンベルね。40kg弱くらいかしら。これなら私の筋肉でもラクショーね。

『女の子をダンベル扱いしない!』


「大丈夫かしら?可愛いお嬢さん」


 何かしら?顔真っ赤にして口をパクパクさせているわ。

 大人しい子ね。

『(やはりヒロインのラファリィ・マット!)』


「どうかしたの?」


 この子ちっとも返事をしないけど……



 キャーーーーーーッ!!!



『な、な、なんですか!?急に周囲の令嬢達から黄色い悲鳴が?』


 んー?目を潤ませてうっとりしている令嬢が1、2、3……たくさんいるわね。

『随分と落ち着いていますね』


 まあ慣れてるから。


「あゝ!カレリン様……今日もなんて凛々しいのかしら!」

(つまず)いた女性を咄嗟に抱き上げるなんて……」

「あーもう!羨ましいですわ。私が代わりたい!」

「やっぱり頼りになる方って素敵ですわ」


『こ、これはッ!』

 私って前世から女の子にばかりモテるのよねぇ。


「時代は魔法より使える筋肉ですわ!」

「あら、でしたら騎士団長令息のマーリス様にアタックしてみては?」

「あれは使えない筋肉よ」

「その点カレリン様は最高よね」

「引き締まった体で逞しいのに女性らしくしなやかで……」

「もしかして貴女もファンクラブに?」

「当然よ!全校の令嬢の殆どが加入しているカレリン様ファンクラブに入らないわけないじゃない」


『ファンクラブまであるんかい!?』

 みたいねぇ。


「もういいかしら?」

「え?……あ、はい」


 騒ぎになる前に退散、退散っと。

『ちょっとカレリン!お昼はいいのですか?』


 考えてみたら私って秒で屋敷に帰れるから、今から帰宅してお弁当食べても余裕で学園に戻ってこられるわ。

『……そうでした』



 それからタンパク質は取るだけでは、ただのエネルギーにしかならないわ。ちゃんと運動もしないとね。

『学園と屋敷を全力疾走で往復するだけでも常人ならかなりの運動ですが……』


 そんなんじゃ全然足りないでしょ。


 さあて、今日の放課後も清掃隊員達率いて学園のクズ共を狩り尽くすわよ!

『モヒカン率いて人狩りって……ここは世紀末ですか』




 ――(1週間後)――



 うーん……

『どうしたんですか?』


 どうにも私のファンクラブと揉めている子がいるみたいなの。

『まさかピンク頭の……』


 よくわかったわね。

 あの子、あれから私の前で度々転倒するんで支えてあげてたらファンクラブの子達に睨まれたみたいなの。

『まあファンクラブの子達からすれば業腹の行為でしょう(カレリンの取り巻き令嬢がいない代わりですか……これも強制力でしょうか?)』


 この間なんて彼女の教科書がズタズタにされちゃって……

『それは酷いですね(完全にイベント通りですね)』


 その場は私の教科書を彼女にあげて事なきを得たけど。

『貴女は教科書なしで大丈夫なんですか?』


 もう全部覚えてるからね。

 これでも成績は学年トップよ。

『さすが最強の悪役令嬢スペックですね。貴女の非常識な集中力との合わせ技で学力も敵なしですか……でも、この魔法学園は魔法の成績のウェイトが高いはずですが、魔法の科目はどうしたのです?』


 理論系などの筆記は丸暗記ね。

 実技は《令嬢流魔闘衣術》でなんとかしたわ。

『え!?どうやって?』


 火を灯せと言われたら、指と指を高速で擦って摩擦熱で火を起こし……

『人間チャッカマンですか!』


 風を起こせと言われたら、高速で周回して竜巻を発生させ……

『なんかそんな技がありましたね……』


 地震を発生させろと言われたら、大地にワンパンで地を揺らし……

『それ逆地上最強の生物じゃないですかッ!?』


 瞬間移動(テレポート)物体牽曳(アポート)は高速移動でなんとかなったわ。望遠は前にタクマがやった目への魔力集中すると対応できたし、味覚、聴覚、嗅覚、触覚なんかも増強できたから大抵の事はできたわ。

『全部力技で対応ですか……』


 やっぱり物理は万能ねッ!

『本当に貴女はなんでもありですね』


 感心した?

『呆れているんです!』


 ん?

『どうしました?』


 今、絹を切り裂くような悲鳴がッ!

『え?どこ……って一瞬で消えた!?彼女の高速移動さらに速くなってません?

 まあ、私は全知全能の女神ですから、すぐに追いつけますが……』



「キャーーー!!!」


 私が現場に到着すると、ちょうどピンク頭が階段上方から落下しているところーーー間に合った。


 私は令嬢流魔闘衣術を発動し、とうッ!と跳躍すると彼女を空中で抱き止め、見事に着地!

『お〜(パチパチパチパチ)』


 あら?もう追いついたの。

『私は女神ですよ。物理力は無くとも神力があります』


 腐っても神ね。これからは腐女神(ふじょしん)と呼んであげましょう。

『私、BLは好みませんが……』


「またあなたなの?さすがに階段は気をつけなさい。下手したら死んじゃうわよ」


 この子が無事でよかったわ。

 だけど対応策を考えないと。

『また再犯がありそうですね』



 そこら辺は後日に考えるとして、いったん教室に戻りましょう――ッ!


 ぞくッ!ぞくぞくぞくッ!!


 ――なッ!これ程のプレッシャーを誰が?



 振り向けば黒髪黒目の綺麗で大人しそうな女の子から黒い殺気が!



 殺ッ!殺ッ!殺ッ!殺ッ!殺ッ!殺ッ!殺ッ!殺ッ!殺ッ!殺ッ!殺ッ!殺ッ!殺ッ!殺ッ!殺ッ!殺ッ!殺ッ!殺ッ!殺ッ!殺ッ!殺ッ!殺ッ!殺ッ!殺ッ!



 凄いッ!何と言う強大な威圧ッ(プレッシャー)

『威圧と言うより怨念では?』


 素晴らしいわ!あれは目で人を殺せる領域(レベル)ね。

『……あれは目で呪っているのでは?』


 だけど目なら私だって負けていないわ。


 悪役令嬢に転生して、いくら鍛えても筋肉がつかず二の腕は細いし、何もしてないのに巨大になっていく胸、いくら食べても食べても太れないし、お尻なんて未だに成長期、なんて残念な身体だって落胆してたけど……

『貴女ホントに全世界の女性を敵に回しますよ』


 だけどこの残念な悪役令嬢の身体でも誇れるところが一つだけあるの!

『女性的には誇るところだらけですが……』


 この鋭い眼光!

 この目力だけは気に入っている!

『普通は逆でしょう!』


 いつかきっと目力で人を殺せるようになるわ。

『貴女は本当に目から殺人ビームを出しそうです』


 目からビーム……なんか強そうね。

『……本当に出すのは止めてくださいよ』


 令嬢流魔闘衣術は魔力をコントロールしているから――

『……』


 ――目に魔力を集中させれば、ビームを出せそうな気がするわね。

『……本当に、お願いだから、絶対に止めてくださいね』


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